: 不思議な気分だ。 誰かにメイクをされるなんて――否、メイクすること自体がありえない。 貴治の真剣な目がすぐ近くにあって、距離感が妙に落ち着かない。 「あんまりくどくないほうがいいよな?セーラー服だもんなぁ」 笑い声さえ近くて、目のやり場に困る。 よく見れば、貴治の指は長く伸びてとても綺麗だった。 いつも柔らかく笑っているその目が、真剣に何かを見据えると、こうも強い色になるものなのか――高寛は不思議な気分でそれを見つめていた。 と、 「赤くなるなよな?俺が、荒井に殺される」 「すみません」 視線に気づいた貴治がふわりと綺麗に微笑んだ。 相変わらず爽やかな笑顔だ。 とてもサーキットを走るレーサーっぽくはない。 「どこ触ってんだ、馬鹿!!」 その時、竜樹が突然喚いて、バシンッと和也を殴った。 「馬鹿はお前だ!過剰なんだよ、いちいちっ!!」 和也が殴られた頭を撫でながら溜め息をつく。 「和、ヤルなら見えないところでヤッてくれ?TPO考えろって散々言っただろ?」 と、貴治が涼しい顔で笑う。 「あ、やっぱりなぁ」 高寛はそれを聞いてクスリと笑った。 「捺木!やっぱりって何だよっ!?」 それに反応した竜樹が高寛を睨む。 [*前へ][次へ#] [戻る] |