: 「貴治!助けろ!!」 和也が竜樹の打撃をかわしながら、声の主――風紀委員長、仲村貴治にSOSを出した。 「やだね!俺、無条件で竜樹の見方」 「裏切り者!!…あっぶねっ!!」 和也が左からの蹴りを寸前でかわす。 「余裕だなぁ?和也」 竜樹の目が据わっている。 「だから〜、マジになるなよ!」 「問答無用!!」 段々、ただの喧嘩になってきている。 「竜樹先輩…」 「衣装以外で怒ってるよね?」 高寛と望は顔を見合わせて溜め息をついた。 何だか馬鹿らしくなってきた。 ――もう何でもいいよ…。 竜樹のキレっぷりに、自分の女装への嫌悪感なんて一瞬にして吹っ飛んだ。 「和兄も、やりかえせばいいのに」 うんざりした顔で、1年生補佐の浅岡綾一がボヤく。 「無理だ、綾。和は絶対に竜樹には危害を加えない」 と、綾一の肩を叩いて、貴治が笑った。 「っ…わかってるよっ!」 綾一は激しく顔を赤くして貴治の手を弾くと、ブスッとむくれて貴治を睨んだ。 「兄弟だな?お前ら」 貴治は呆れたように笑った。 その時―― 「チェックメイト」 「っ…」 いつの間にか、和也が竜樹の背後を取っていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |