: 高寛は怒り任せに和也に蹴りをいれた。 「竜樹の蹴りに比べたらまだまだだな。避ける気もしねぇ…あ、これまことのだろ!!」 が、しれっとしたまま箱の中身を物色し続ける和也に、高寛は戦う気を無くした。 「あれ?そういえば…」 そして、ふと気づいたように、 「和先輩。竜樹先輩は?」 和也を見上げた。 和也は一瞬考えるように頭を掻くと、 「あー…自宅療養中?」 そう曖昧に首を傾げて、再び箱の中を物色した。 ――自宅療養…? 高寛は意味不明に、同じく首を傾げた。 二学期が始まって一週間と少し。 だが、生徒会室に、会計の浅岡竜樹(アサオカタツキ)の姿が無い。 「療養って…竜樹先輩、どこか悪いんですか!?」 高寛は食い付くように和也の腕を掴んだ。 思えば、夏休み前から竜樹は休みがちだった。 いつもぼんやりと上の空――いつもの利発な印象を霞ませて、常に何か物思いに耽っているように見えた。 「別に、何もねぇよ。大丈夫だ」 和也が笑いながら高寛を見下ろす。 「でも……」 が、高寛は心配そうに眉を寄せたままだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |