>> 最高に居心地が悪くて、竜樹は睨み見た瞳を再び遠い山間の景色へと戻した。 「……」 「……」 二人きりでいれば、互いに口数が多い訳じゃない。 ましてや、甘い『愛の告白』なんて――出会った頃からずっと、暗黙の了解の如く、身体で語り合ってきた。 「くそっ……何で今更…」 竜樹はフェンスを悔しげに握り締めると、小さく舌打ちを洩らした。 「あ?」 「…何でもない」 「だから、何をそう気に入らねぇんだよ?」 「……」 「お前、今、すっげぇ不細工なツラしてんぞ?」 「悪かったな!不細工で」 「だから何だよ?わざわざ喧嘩売りにきたのか?」 ガシャンッ… 「!?」 と、和也の手の平が、フェンスを握り締める竜樹の手を絡めるように覆った。 「っ………違う…そうじゃ、ない」 竜樹は頑なに振り向かないようにして、それでも和也を振り払わずに小さく呟きを洩らした。 慣れた触り方に、慣れない心拍数が跳ね上がる。 「あら、そうでちゅか〜?」 心の内を読みにくい、いつもふざけた和也の声色。 それでも、触れ合うとわかる。 和也の指先は、誰よりも優しく、温かい温度で竜樹を包み込む。 竜樹がそれと気づく、ずっと前から。 [*前へ][次へ#] [戻る] |