: 「なぁ、悠」 「ん?」 「…今から、シューズ変えたら…やっぱ、キツいか?」 「え?」 突然、真咲が覗き込むように悠を見上げてきた。 「高校総体…」 「…どうした?」 「や……うん」 見下ろすと、真咲は言葉を選ぶように視線を反らして赤くなった。 「や、今年最後だもんな!何でもね」 「何だよ?」 話をはぐらかそうとする真咲の肩に、悠は手を回して顔を覗き込んだ。 「…っ」 無言でバツ悪そうに、ただ真っ赤になっている真咲。 「真咲?」 悠は子供にするように屈んで視線をあわせた。 「…だからっ……シューズ」 「シューズが、何?」 「…うん」 「ん?」 「……悠と同じのが、欲しいな…とか」 「……」 真咲は真っ赤になって早口でそう吐き捨てた。 その照れたような、怒ったような表情に、悠はついクスリと笑ってしまった。 「わ、笑うなっ!!や、やっぱ、もういいっっ!!」 「あはは、ごめんっ!悪かった、怒るな」 立ち去ろうとする真咲の腕を、悠が優しく引き止めて抱き締める。 「悠!?バカ、やめっ…!」 人の多い店内で抱き寄せられて、真咲がじたばたと暴れる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |