: 「…意外ですね」 「?…何がですか?」 笑う古賀に玲司が首を傾げる。 「や、松田先生でもやっぱり気になさるんですか?教師と生徒って事」 「っ…そりゃ、しますよ!社会の良識じゃ、何だかんだ言って大人と子供ですからね」 「あはは、貴方の口から良識って言葉が聞けるとは」 「失礼な…」 玲司が思いっきり不機嫌そうに眉を寄せる。 「でも確かに…大人と子供に分類されますね」 古賀は急に真顔になり、細く煙草の煙を吐き出した。 「……何かあったんですか?」 玲司がそれを見て怪訝に息を潜める。 「いえ、別に何かあったという訳じゃ…」 古賀は灰皿に煙草の灰を落とすと、またいつものように涼しい笑みを浮かべて、再びファイルに視線を落とした。 秋口にいつも思い出す。 父の言い遺した言葉。 『自分にだけは嘘をつくな』 人生なんていつどこでどう変わるかわからない。 良くも悪くも己の選択次第。 総て、自分で選んで来た結果。 その結果に、父は何を思っていたのか…。 「秋晴れですね」 古賀は窓の外を眩しそうに見上げて、また煙草の煙をすっと細く吐き出した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |