: が、 「さっきはすんませんでしたっ!!」 意外なことに、隼人はそのデカい身体を90度にパキッと折って、最敬礼で高寛に謝罪をした。 「……え…?」 高寛は目を点にして固まった。 予想外、なんてもんじゃない。 「や、ホンマに!さっきは失礼なこと言いました。すんません!」 驚いて固まっている高寛に向かって、その大男はまた深々と頭を下げる。 そして、ずっと頭を上げる気配がない。 「……」 「……」 体育館にいた部員達が、何事かと動きを止めて怪訝に二人を伺っている。 それでも、隼人は頭を上げようとはしない。 「え…あのっ」 高寛は逆に焦ってしまった。 このまま何も言わなければ、おそらくずっとこうしているだろう隼人に、 「や…こちらこそ、あんなっ…失礼しました!」 高寛も慌てて90度に腰を折った。 「いやいや、何を言うてんすか!?」 「や、こちらこそ」 「いやいやいやいや」 「でも、もう少しで貴方を叩いているところでした。すいません」 「ぅわっ!やめてや!そんなんされたら、俺立つ瀬ないやんかっ!」 今度は隼人の方が驚いて、頭を下げる高寛の肩をグイッと引き起こした。 「いや、でもっ」 「や、せやから…!」 顔を上げた高寛の困惑した瞳を見て、隼人は一瞬でピタリと動きを止めた。 「…?」 「…せやから」 間近で見た高寛は、澄んだ茶色い瞳で、透けるような白い肌をしていた。 「…あの?」 その瞳に映された自分は、なんと間の抜けた顔をしていたことか――隼人は一瞬、高寛の澄んだ瞳に時を奪われていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |