: そんな渉が、春の高校バレーでとんでもない大活躍を見せてから、校内は一段と騒がしくなった。 マスコミや新聞記者、それにここでは珍しい他校の女子生徒達が、わんさか群れを成して押し寄せるようになった。 そんな有名人の渉は、あろうことか、高寛を『好きだ』と屈託なく笑う。 底抜けに明るい関西弁で、真面目に『愛してる』と口にする。 高寛自身、最近やっとそれに心を開きかけた矢先。 「――でも、夏休みだもんね…やっぱり、忙しいかな?」 望がしょんぼりとした哀しげな瞳で、高寛の目を覗き込む。 怒られたワンコのように、耳が垂れ下がるのが見える。 「別に、そんなことはっ…あ、大丈夫!暇ですからっ!いいですよ」 その不安そうな望の目を見た途端、高寛はつい慌ててそう口走ってしまった。 「ホントにっ!?」 望の顔がパアッと明るく輝く。 それはもう嬉しそうに。 『あ…』と思っても、 「あ、はい」 もうその笑顔には、何も言えない高寛だった。 「ありがと〜!高寛」 望は嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、高寛をギュッと抱き締めた。 ――この人は…。 カワイイなぁ、ホント。 そんなことを心の中で呟きながら、高寛はにっこりと微笑み返した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |