「じゃ……また、明日」
いつもの場所――正門を通り過ぎた山の上の公園で、古賀はいつものように車を停めた。
日曜日の夕方。
日が暮れるのが早くなってきた。
山の裾野に、今にも沈みそうな太陽が見える。
望は助手席に座ったまま、その綺麗な夕焼けをぼんやりと見つめていた。
「……はい」
古賀は、律義なまでにきっちりと望を寮へと送り返す。
それがこの関係を続ける上で大切なケジメであることを、望はちゃんとわかっていた。
そうしてくれる古賀の大人な言動を、尊敬さえしていた。
ただ…。
また一週間、別々の夜を過ごさなければならない。
その別れの時間。
逢瀬が甘ければ甘いほど、離れる瞬間の苦しさは大きくなる。
寂しくて、切なくて、言葉を無くしてしまう。
だから望は、日曜日の夕方が嫌いだった。
「望、もう行け」
いつまでもそこを動かない望に、古賀はシートベルトを優しく外しながら囁きかけた。
「……」
望は俯いて顔を隠したきり、何も言わない。
別れ際はいつもこうだ。
泣きそうな顔で、必死に言葉を呑み込んでいる望。
言いたいことは山程ある筈なのに…。
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