: そんな小学生みたいなやり取りをしながら学生の溜り場、ロビーへと直行。 「オッス、高野、大輔!」 「あ、おはよ!」 真咲と中澤の姿を見つけた五十嵐慶太(イガラシケイタ)のデカい声に、その隣にいた安西清孝(アンザイキヨタカ)が顔を上げて爽やかに手を振る。 チャラ男で粗雑な印象の五十嵐と、誠実で育ちの良い空気の安西は、一緒にいるとどうにも違和感がある。 何か共通の話題あんの?的な絵面だ。 「なぁなぁ、見ろよ!じゃあぁぁ〜〜ん!久世大紀っ!!」 早速、嬉しそうに二人に駆け寄る中澤。 「え、何、どうしたの?それ廃盤のヤツじゃん!」 「そっ、高野が貸してくれたんだ」 「へぇ〜、凄いじゃん!俺も読みたいな。高野、いい?」 「え、ああ、うん。別に、いいけど…」 安西に笑いかけながら、今更ながらに父親の姿を思い出す。 勿論、〆切前後の、目の当てようのない父の姿だ。 ――あのオヤジ、そんなすげぇのか…? わっかんねぇの〜。 真咲は苦笑いを浮かべた。 の、目の前で、 「久世さんって表現がいいよね」 「だよなっ!」 安西と中澤が、二人で勝手に盛り上がり始める。 「俺、ミステリーとか興味ねぇんだよなぁ。カタいっつ〜かさ…」 五十嵐が言葉の通り、興味なさそうな表情で鼻の頭を中指でカリカリと掻いた。 真咲的には、そっちの意見の方が正直頷ける。 [*前へ][次へ#] [戻る] |