: 「うぉ〜っ、冷てぇ〜っ!!」 そしてそのまま流しの冷たい水で顔を洗うと、歯ブラシを咥えてリビングの小さなテレビをつける。 『――次は、獅子座の貴方!』 朝のナントカ占いの音が部屋を賑やかにする。 「お、獅子座…」 『何か予期せぬ事が起きるかも!?でも一時的なものだから慌てないで対処してね〜!』 何とも気の抜けたアナウンサーの声。 「ほぇ〜、なんだそりゃ?……ぅお、沸いたっ!!」 その時、キッチンでお湯が沸いたグツグツという音が聞こえて、真咲はキッチンへとバタバタ走って行った。 * * * * * * 三能学園大学部―― 何をどうしてか、真咲は教育学部。 バッキバキの理数系頭のくせに、人間心理学に興味があった。 人の感情に敏感な辺りは、作家一家の血なのかもしれない。 「おっす、高野!」 駐車場に車を停めて校舎に向かう途中、同級生の中澤大輔(ナカザワダイスケ)が、いつもの如く元気に真咲の肩を叩いた。 「オス。あ、なぁ、中澤、お前がこの前言ってた本、持って来たぜ!」 「マジでっ!?久世大紀!?すっげぇっ!!今、廃盤なってんのに何でっ!?」 「ん〜、まぁ…色々?」 真咲は曖昧にボヤけた返事をすると、目を輝かせている中澤に本を手渡した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |