[通常モード] [URL送信]
:


「だから、夏休み中、何があったんだよ〜?」


それでも比呂は、怯むどころか更に楽しそうに口許をニンマリと緩ませる。

『他人事です』とその顔にデカデカと書いてあるのが読み取れる。


「何もない!」

「ウソつき〜」

「ウソじゃねーもんっ!」

「ウソだね!絶対!な〜な〜、尚斗もそう思うだろ?」


比呂が目を爛々と輝かせて尚斗を見つめる。


「………俺は、どーでもいい」


尚斗は面倒臭そうにそう呟くと、何やら手にしていた資料に視線を集中させた。

尚斗の立場からは、二匹の子犬がギャンギャンと喚いているようにしか思えないし、聞こえない。

大体、コイツらは、振ったら振りっぱなしで返答に興味がある訳じゃない。

『ちゃんとした答えを返そう』とすることこそが無駄な努力なんだということを、もういい加減理解した。


「うわぁぁ〜っ!廣谷、それはそれで、なんかムカつく!!」


あり得ないことに、綾一は尚斗に八つ当たる。

子犬の甘噛み。


「あ〜、やっぱ何かあったんじゃ〜ん!」

「比呂はうるさい!廣谷は、なんかムカつく!」

「だって、アヤ、休み明けから何か違うじゃん!」

「違わない!!」

「違わないなら、何であんなに仲村先輩に絡むんだよ!?」

「べっ、別に絡んでないしっ!!」

「絡んでた!!ねぇ、尚斗!?」

「廣谷には関係ないだろ!?てか、絡んでねぇもんっ!!」


そして更に、子犬達は挙って吠えまくる。

既に尚斗の返答は関係ない。

尚斗が静かなのをいいことに、『オレの話を聞け』とばかりにギャンギャン喚く。

小型犬ほど、よく吠えるもの。

まぁ、主張しないと気づいてもらえないからねぇ。


「…………うるせぇ」


尚斗は小さく口の中で溜め息をついた。




[*前へ][次へ#]

16/469ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!