: 心臓がまだ、ドクンッ、ドクンッと激しく波打っている。 耳まで熱い。 目を閉じると、古賀の体温と鼓動が身体に伝わってくる。 鼻孔をくすぐるいつもの香水と煙草の香り。 大好きな古賀の匂い。 「……やべぇな」 望の小さい肩を抱き締めながら、古賀が笑い混じりに溜め息をついた。 「…先生?」 夢現つの望が、蒸気した頬のまま見上げる。 古賀目線から見れば、その潤んだ瞳と濡れた唇が何とも言えずいやらしい。 『蕩けそう』と言う表現がピッタリとハマるような。 そんな目をされたら、男は誰だってその気になる。 古賀はふわりと笑ってみせると、望の潤んだ瞳に唇を落とした。 そして、無防備な望の首筋に小さな跡を一つ残した。 「んっ…!」 首筋を強く吸われた痛みに、望は一瞬肩を竦めて細い息を洩らした。 「エロい声」 「え……?」 「何でもね…見回りしてくる」 古賀は小さく吐き捨てると、ガバッと望の身体を離した。 「……はい」 望は真っ赤な顔のまま、目を伏せて頷いた。 「眠かったら寝てろ」 優しく笑いかけて頷いた望の頭を撫でると、古賀は宿直室を出て行った。 ガラッ…パタンッ! 「――あ…ぶねぇ…」 閉ざした扉に凭れたまま、古賀は右手で口許を覆った。 ――滅茶苦茶にしそう…。 古賀は苦笑しながら、一人小さく溜め息をついた。 * * * * * * 「…何……今の…?」 残された望は、放心状態のままその場に崩れるように座り込んだ。 「…………」 初めてあんなキスをされて、少しだけ身体が震えていた。 まだ胸のドキドキが治まらない。 顔が熱い。 「……先生…」 望は茫然としたまま、熱い首筋をそっと押さえた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |