135号室――
「こんな時間に、どちらへお出かけ?」
背後から声をかけられて、望は玄関先でビクッと立ち止まった。
「……あ………え、と…」
口籠もって振り向くと、
「会長自ら門限突破とはね」
同室の浅岡竜樹(アサオカタツキ)が、壁に凭れ掛かったまま腕を組んで望を見据えていた。
時刻は21時を過ぎようとしている。
今から部屋を出ることなんて、普段ならそうそうない。
「確か今日は、古賀先生が宿直だったよな?」
「………はい」
何もかも見透かしたように、竜樹の眼鏡の奥の瞳が意地悪く笑う。
望は真っ赤になって素直に首を縦に振った。
「へぇ…」
竜樹の声が益々意地悪く、愉しそうに笑う。
「あ、でも別に、変な下心とかじゃないって、先生言ってたしっ」
「……」
「だから……そのっ…」
望は必死に訴えた後、益々顔を赤くして敗戦の相で俯いた。
「別に聞いてないし」
「…だよね」
望が真っ赤なまま、竜樹の顔を伺うようにチラッと上目遣いに見上げる。
まるで、保護者の同意を求めるように。
「……」
「……」
無言で見下ろす竜樹を、不安げに見上げる望。
その顔は「会いたくて仕方がない」と切実に語っていた。
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