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真咲はあの日のことを思い出して、心なしか勝手に赤くなった。


あれから、もう何度も悠に抱かれてきた。

それでも、未だに慣れない胸の音。

『好きだ』と実感させられる甘い時間。

そんなものを、瞬時に思い出した。


「冷やしてろよ。オレ、制服持ってくるから」

「そんな大した事じゃない…」

「ダメだ!これで悠の顔変わったら、オレ責任感じるし!」


真咲はそう言うと悠の部屋のドアを開けた。


「…何の責任だよ?」


真咲の一生懸命な迫力に負けて、悠は笑いながらソファの背に身体を預けた。








「――えー、と…シャツ、ブレザーだろ?と…あれ?ネクタイ……あった!…――ん?」


真咲が悠の制服を左手で抱えてネクタイを取ろうと右手を伸ばした時、抱えたブレザーから何かがヒラリと舞い落ちた。


「…?」


真咲が拾いあげたのは航空チケットと、一通のエアメール。


「これ…」


成田発、ロンドン行きの往復チケット。


「12月22日っつーと…冬休みか…?」


形を変えずにここにあるということは、行かなかったんだろう。

エアメールの差出人は『Yusuke Mashiba』。



――ユウスケ…マ、シバ?

悠の…オヤジさん、か?



真咲は首を傾げたまま、二つをブレザーの内ポケットに入れ直すと、何でもない顔でリビングへと戻っていった。




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