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その苦虫を噛んだような悠の顔を見て、真咲は楽しそうにケタケタと笑った。
「はぁ!?」
「…ウソ」
不審に眉を寄せる悠を見て呟くと、真咲はまた悠の身体を引き寄せて肩口に顔を埋めた。
「好きだ…」
呟いた言葉が宙に消えていく。
「…………」
悠は驚いた顔で絶句して、しげしげと珍獣を見るように真咲を見つめた。
「…ンダヨ?」
「…や…」
この頃の真咲は、日を追う毎に色気というものを滲ませるようになっていた。
本人が意識してやっている訳ではなさそうだが、妙に艶っぽい瞳で悠を見つめる時がある。
まるで、誘うように…。
「…だから…何だよ?」
「……つか…」
本人は無意識なだけに、余計に妖艶に悠の目に映る。
「…ヤバい」
悠は小さく呟くと、突然ガバッと真咲の隣から身体を起こした。
「……悠?」
真咲は驚きに真ん丸く見開いた仔猫の瞳で、悠の顔を覗き込んだ。
「…お前なぁ」
きょとんと見上げてくる裸の真咲を、悠は溜め息混じりに目を眇めて見下ろした。
「え、何?オレ、何かした?」
真咲は急に不安そうに顔色を曇らせた。
まだまだ、自分の放つ色気には気づいていない様子。
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