: 人前に立つことが嫌いで、いつも刺々しい顔をしていた高寛に、 『大丈夫。議員会は、生徒会を助ける為にあるんだから』 優しい言葉をかけてくれた。 そして、いつも失敗を笑ってカバーしてくれた。 常に空気を尖らせて人前に出ていた高寛は、お世辞にも可愛いとは言えなかった筈なのに…。 「ありがとうございます」 その優しさが恋愛感情に裏打ちされたものだと高寛は知っていたが、それでも彼の優しさは信頼できた。 「ナッちゃんの為ならお安い御用だよ」 「またぁ…」 そうは言っても、何も要求してこない貴治。 その態度が高寛を安心させていた。 つまりは、いい先輩と後輩の関係が成立していた。 貴治の優しい告白に、高寛は笑みを浮かべられるほどだった。 「……いい人だよなぁ……ホント」 貴治の消えた一人の部屋の中で、高寛はポツリと小さく呟いた。 ふと、渉のキスが頭をかすめる。 「…………」 高寛は急いで頭を振った。 少しだけ、危険な匂いがする渉。 人の隙を巧みについてくる不敵な笑み。 見透かすような瞳。 それとは逆に、底抜けに明るい言葉。 驚くほど温かい表情を浮かべる。 再び、キスを思い出して顔が熱くなる。 「変だ……オレ…」 高寛は熱い額を押さえてポツリと呟いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |