攘夷ばっかり 攘夷ズ風邪リレー2(ヅラ) この前の戦が案外大きな戦だったらしく、最近この辺りはそこそこ平穏な日々に囲まれている。 ……ただ、ある民宿の一室を除いては。 「……きっ…貴様ァァゲホゴホ」 銀時の風邪が治るのとほぼ同時に今度は桂が風邪菌にやられたらしい。面倒臭いといった表情を浮かべる高杉と、何が面白いのか笑い続ける坂本と、すっかり回復して清々しいオーラを発している銀時。 「いやーヅラマジでサンキューな!お前にうつして俺はスッキリだよホント」 「何がサンキューだ!貴様のせいで俺まで菌に侵食されっゴホゴホ」 「ヅラもウイルス効くんだなァ」 「アッハッハッハヅラが一番菌時の世話しとったからのー」 「菌時ってふざけんなぶっ飛ばすぞ」 「俺をこんなぐうたらと一緒にするな…!人一倍ヘルスに気を使っているというのに貴様のせいで…!」 最近戦がないからいいものの、もし戦が起きた場合戦略を練るのは桂だ。いくら4人が強いと言えども、それは桂の綿密な作戦のおかげでもある。 「仲良く風邪ひくのは面白いがの、実際早く治してもらわんと色々困るちや」 「オイ銀時お前が事の発端なんだから何とかしてやれ」 「何とかしろっつったってなー…俺ヅラに嫌がらせしかされてねーし」 」 「何だと貴様…恩を仇で返すとはっ……!?」 急に桂が虚空を見つめて動かなくなる。瞬き一つしない桂の様子がさすがにおかしいことに気づき、辰馬が桂の眼前で手を振ってみる。 「……ヅラ?おんし大丈夫か?」 「松子…」 「………あ?」 「やっと…お父さんと仲直りできたか…」 「……やべーよあれどーすんだ!あいつ何やってんだ!?!?」 「元はといえばテメーの責任だろうが!!俺は知らねーぞ!」 「責任転嫁してる場合じゃないぜよ!!見てみい、蒲団から抜け出しちょる!!」 桂は高熱に浮かされて幻覚が見えてきているらしい。先程までふざけていた3人だが、さすがにここまでくるとびびりはじめている。 蒲団に入って大人しくしなければならないのに何が見えたのか立ち上がり、両手の人差し指でE.Tをしている。 「チッ…バカが」 すかさず高杉が何とか説得し、蒲団に戻した。その様子を見ているとどうやら普通に会話も出来るらしい。 「オイ高杉!おめーどうやってヅラ説得したんだ!?」 「…T…」 「よく聞こえんぜよ!はっきり」 「E.Tしてきたっつってんだろ何度も言わすな斬るぞ」 「「ごめんなさい」」 今にも眼から光線が出そうな高杉に怯む。 だが事は一刻を争う。銀時と同じ風邪なら銀時が飲んだ薬で治るはずだ、と辰馬が説明する。 だがそこで何気なく銀時が言った一言に場が凍りつく。 「で、薬はどーやって作んの?」 常時笑顔の辰馬の顔が見事にひきつっている。高杉も俯いて言葉を詰まらせる。 「…そういえば手当ての薬やら何やらもヅラに作ってもらってたのぉ…!」 「ちょっと待ってろ…とりあえずこの前採ってきた薬草並べんぞ」 「でもそっからどーすんだ!?てかオメー俺に薬作ってたんじゃねーのかよ!?」 「火加減見てただけでわかるわけねェだろバカかてめェ」 「バカはオメーだろ」 「あやふやな記憶じゃが…風邪には確か葛根湯じゃなかったかのう」 「…そうだな…コンコン湯とかいうやつだな」 「コンコン湯じゃ永遠に咳止まんねーだろ!!カッコン湯だバーカ」 予想以上の緊急事態に完全に狼狽える3人。しかし何とかして薬を作らなければ桂の風邪を治すことは出来ない。そこで3人は大分不安が伴うが、桂に説明を聞きながら作ることにした。 「…ヅラくーんヅラくーんおくすりの作り方教えてくれるかな」 「…おくすり…良かろう…」 目を虚ろにしながら口を開く桂は軽くホラーだ。何とか会話が成り立つことに少し安心した3人は、腕を捲り気合い十分だ。 「どれを混ぜたら薬になるんだヅラァ」 「まず卵3個と砂糖小さじ1杯を混ぜます」 「それ卵焼きィィィ!!」 「気を取り直していくぜよ!葛根湯というくらいじゃから葛根を入れるんじゃろ!?」 「…ああそうだ…カッコウを入れるホーホケキョ」 「鳥じゃねェよ!!しかもホーホケキョはウグイスだ」 「それで!?葛根の他には何がいるんじゃ!?」 「あそこにいる松浦亜弥を混ぜる」 「何でだァァァ!!オメーにしか見えてねーんだよ!!あやや混ぜたらありゃりゃなことになるだろ!!」 こうなるとは予想していたもののあまりの苦戦っぷりにため息が出る。 このまま桂に頼っていては桂も休めず薬もできず無駄足だ。 そこで銀時が両手をパンと叩き、適当に薬草を混ぜ始める。 「薬なんて料理と一緒だろ…俺に任せろ!!適当に混ぜりゃ何とかなる!!」 「ホントじゃろうな銀時!!ヅラの生死が関わっちょるんじゃぞ!!」 「アイツはこんなんで死なねェだろ…これも混ぜてみろ銀時」 「うわ臭ッッ!!バカ杉てめ何入れてんだァァ……」 「…絶対何かの劇物だろ…」 適当に調合した薬は見るも無惨なグロテスクな液体になった。放つ異臭はアンモニア以上である。 「絶対死ぬぞコレ!!どーすんだ!!」 「銀時まずてめェが最初に入れたあの薬草が…」 「んだとォ!?てめーが加えたやつのが明らかにダメだったろ!!」 「………あ……」 「…どうした坂本?」 「…そういえば銀時が飲んだ薬…まだ残っとるんじゃないかの…」 「「あ」」 間抜けな声が綺麗なハーモニーを奏でた。 「………ったくよー何だよクソッ」 桂が前に作った薬をかまどから見つけて飲まし、やっと一段落して脱力する。 桂は先程までタップダンスをしていたが、今は落ち着いた寝息をたてている。 「全く一騒動だったのう」 片眉を下げてようやく笑った辰馬に同意するように2人の表情も緩む。 「考えてみりゃ、ヅラいなきゃ何もわかんねーな」 「時々うぜェけどな」 「とにかく何とかなって本当に良かったぜよー…」 高杉がため息混じりに寝ている桂を横目で見た。 「…テメーの几帳面、ちっとは見直したぜ」 --------------------- ギャグってマジで難しいって実感した話w 空知さん崇拝の域\(^O^)/ そしてヅラがとても扱いやすいのを実感した話でもある\(^O^)/ 何しても許されるよね!この人! 2009.4.25 [*前へ][次へ#] |