[携帯モード] [URL送信]

攘夷ばっかり
白夜叉捕われました後編


※流血グロいの苦手な方ご注意下さい!




------------------








「……は…っ…」





体を拘束していた枝がするすると離れていく。急激に酸素を取り込む肺に他の器官がついていけず目眩がする。


絡みつかれていた部分に火傷のような痛みを感じつつ、支えを失った体はそのまま地に倒れた。名残惜しそうに蠢いた枝が頬に触れる。









「……っ、いいのかよ…解い…ちまって」



自分の声さえ靄がかかったように聞こえる。必死に保っている意識の中に、ねちっこい女の声が響いた。






「…その体では指一本動かすことも敵わんだろうよ」




悪どい笑みを向けてくる女を思いっきり睨んだが、確かに女の言う通りだ。これでもかというほど注ぎ込まれた毒は、着実に銀時を蝕んでいる。まだ意識を保てているのは並外れた身体能力のおかげだろう。



漸く解放されたというのに、肝心の体は動かせる気配が全くない。噛みつかれた右肩からは毒の影響もあるのか、血が止めどなく流れている。このままではまずい。だが、体が動かない。







すると、女は銀時に背を向け洞窟の入り口へと足を進めていく。







「……どこ…行きやがる…」



小さく掠れた声だったが、女は聞かれるのを待っていたかのように凶悪な表情で振り向いた。















「貴様がどうしても拠点を吐かないからな……この辺り手当たり次第私らの種族が根絶やしにしてやるわ」


「………!!」
























何が起きたのか自分でもわからない。

相も変わらず体は熱く重い。鉛のようだ。傷の痛みに思わず咆哮しそうになるのを何とか抑えている。

だが霞んだ視界に映るのは刃を喉元に当てられた女。どうやらこの刀は、自分が向けているらしい。
いつの間にか体が動いていた。




優位に立ち冷笑していた女は、さらに笑みを深める。


「……大したものだ…」
「……っ…」





まだそのような余力があろうとは、と呟く女を力の限り睨む。

だが実際立っているだけで精一杯だ。言葉を発する余裕もない。体勢を少しでも崩せばすぐ昏倒するだろう。


女はそんな銀時の状態を見透かしているようだ。喉元に感じる冷たい金属の感触にも臆することなく鋭い視線で銀時を射抜く。






「……安心しろ…一人残らず冥土に送ってやるわ!!」


叫んだ瞬間女は一歩身を引き、銀時の右手を捻る。刀が手から落ちる。手負いの状態で女の瞬発力に敵うはずもない。腹を力強く蹴られ壁に叩きつけられた。






「………っぐ……待て…っ!!」




今度こそ意識を手放しかけた。だが必死に繋ぎ止める。女を洞窟から出してはいけないという一心で。

激痛も血も止まない。目眩も収まらない。だがどうしたことだろう。朦朧とした意識を無視して動く体の原動力は、仲間を失うかもしれない恐怖感か。



一度落とした刀を乱暴に掴むと、女にそのまま振り下ろす。だが女はもう視界にはいない。背後から殺気を感じた。防戦する隙もない。足を払われ宙に浮く。瞬間、肩の傷を掴まれ仰向けに倒され、もう片方の手で首を絞められた。身を切り裂くような痛みが再び蘇る。






「…っがはっ…!!」
「フン……何を躍起になっている」



銀時が必死に向かってくる理由を知っていながらも女は嘲笑を浮かべ、もう遅いと冷たく言い放つ。

首を絞めている女の手を取り払おうとするが、手にさえ力が入らない。







「……そうか、よ……」




何とか絞り出した声は自分でも可笑しくなるほど弱々しくて。体力の限界なのか、銀時はもはや身動ぎ一つしようとしない。



圧迫された喉のせいで浅く速い呼吸を繰り返しながら、虚ろな目で洞窟の入り口を見ている。





「……………」

















そして不意に、笑った。








「……もう…おせーのは…テメーだ、バカヤロー…」


「……な、」







しゃがれた銀時の声と刃が振り下ろされる音が同時に聞こえた。





















「…………何やってんだ銀時ィ」


「…………げ……」




振り下ろされた刃の持ち主が、倒れ行く女の後ろから姿を現した。


一番借りを作りたくなかった奴に助けられてしまった。今日は色々とついてない、とぼんやりした思考で悪態をつく。







「さすがヅラじゃ、よくここに銀時がおるとわかったのう!!安心せい銀時、この辺にいた天人もわしらがみんなやっつけたぜよ!!のうヅラ!!」
「ヅラじゃない桂だ。この出血量はまずいな…しかもお前熱いぞ!?どうしたんだ!?」




次々と煩い奴等が洞窟に入ってきた。殆んど失いかけている意識の片隅で声を聞く。



ああ煩ェと思いつつも、こいつらの声がするだけで安堵したなんて死んでも言ってやるものか。




心身共に一気に脱力した銀時は、へらりと笑い文句を吐き捨て意識を手離した。







「……おせーんだよ…、コノヤロー…」












--------------

ほんとにギリギリのピンチでも折れない坂田を書くのがひっじょおおおおおに楽しかった^^^^^^^
所詮変態ですすみません^^^^

2009.5.31



[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!