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攘夷ばっかり
辰馬美化計画



悪天候でぬかるむ地面に次々と刻まれる足跡。
跳ねた水溜まりの泥は戦装束を染めていく。


絶えず聞こえる刀の音。猛る咆哮がそれに混ざる。雨足は強くなる一方で、侍の足を滑らせた。









「急げ!!誰かこちらに援助を……っ!?」



「ヅラ!!!!」



目の前にいたはずの桂が一瞬にして消える。どうやら崖があるらしい。急いで後を追う高杉だが、また彼も地面に足をとられ。





「バカかてめェ…!!…っ!?」


「バカはてめーだァァァァ!!!!」




次々と視界から消えていく同胞に呆れつつも全速力で駆け寄る銀時、だが。






「オメー助けにいったんじゃねーのか…うおっ!?!?」




また、彼も然り。



















「ぐおっ!!」
「あ、悪りーね高杉君クッション役任せちゃって」
「て…てめェ!!殺す気か!!」
「オメーがチンタラしてっからだろ!!」
「避けりゃいいだろうが!!圧死する」
「大体ヅラァァてめーが落ちるからだろ!!!!」
「てへっ」
「てへっじゃねーよ!!見ろホラ高杉つぶれてんじゃねーか!!」
「…それはてめェがどきゃいい話だろ…!!」
「大体何で最初に落ちたヤツが我先に逃げてんだ!!オメーを助けに来たんだよ!!」
「やはり高杉が鈍すぎるのだろう」
「…黙って言わせておけば…!!」



哀れ銀時の下でつぶれている高杉から殺気が出始める。泥だらけの顔でいまいち迫力が感じられない。

そろそろどいてやるかと銀時が腰を上げようとした時、空中にありえないものを見た。



目を丸くする3人の視線の先には、両手を広げ笑いながら落下してくる毛玉。


彼が地面に近づくほど笑い声も近づいてくる。ホラーである。





「アッ」
「坂本!!」
「ハッ」
「来るなァァァ!!!!」
「ハッ」
「銀時どけ!!!!死ぬ!!!!」
「ハ〜〜!!!!」
「「ギャアァァァァァァァ」」





















「ずるいぜよ〜わしだけハブなんて!」
「なんっで意図的に落ちてきてんだてめーは!!!!重いんだよ降りろ!!バカだろ!!」
「…大体…何だ…あのジャンプ力は…」
「確かに本来の地面より高い所から落下してきたな」
「わしのジャンプ力は曇天OPで証明済みぜよ」
「お前マリオだったのか」
「マリオは俺だ!!!!」
「オメーは黙ってろよもォォォ!!!!元凶はヅラだろうが!!」
「……………」
「た、高杉が虫の息じゃ!!やりすぎたかの!!」
「こいつがここまでやられるとは…どこの天人の仕業だ!!叩き斬ってくれるわ!!」
「オメー何見てたんだァァァ!!!!」








予想外の辰馬の介入に高杉は命の危険にさらされたが、何とか一命をとりとめた。



「………てめェら………ブッた斬ってやる……今生に別れを告げろ」
「落ち着け高杉!!仲間割れしてる場合じゃねぇ!!」
「何故そんなにぷりぷりしておるのだ高杉は」
「…これがぷりぷりだと…!?」
「アッハッハッハ!!」
「ブッた斬る」
「待て待て待て待て!!今度牛乳やるから」
「仕方ねェ今回は許してやる」





高杉の怒りはあっさりと鎮まったが、問題は以前として残っている。



今は戦の最中である。



兵の筆頭に立っている4人が揃いも揃ってこのざまだ。早く戻らなければ軍は統率を失う。


暴風雨は未だ止む気配がしない。横なぐりの雨で視界も悪くなってきた。周辺を散策しているうちに時間だけが過ぎるだろう。


滑った崖を這い上がろうにも濡れていて、とてもじゃないが登れない。




「何かいい案はないものか…」
「…オイ、ヅラよォ」
「敵さんは待ってくれねェみてェだな」




小声で呟いた銀時と高杉が一瞥したのは、前方から近づいてくる天人の集団。
悪いことは連続して起こるようにできてるらしい。

こんな大人数相手にしていたらいつまで経っても上に戻れない。




「くそ……っ!?」




忌々しく銀時が舌打ちしたのと同時に、辰馬はいきなり3人を引き寄せ円陣を作った。




「おい坂本!こんな事をしている場合では…!」
「……こっから右に走るんじゃ。全速力で走れば3分ってとこかの」
「…何言ってやがる」
「木がたーくさん生えてたからの、枝をつたって上に上がれるぜよ」
「!」
「ここはわしが食い止めるきに、早く戻ってやるんじゃ」







低く呟き腕を離す。呆然とする3人。





「…てめェ…いつの間に」
「…まさか落ちてきた時……」











周辺を観察していたというのか。
陥るであろう状況を予測して。











一歩前に出た辰馬が振り返る。相変わらず笑みを浮かべている。

だが兜から滴る雨の隙間から見える眼は、鋭く3人を見据えた。












「……わしの目は望遠鏡並みじゃき」









さすが毎晩夜空を見ているだけある。星を見ると視力が上がるとは本当だったか。










やられた、と言わんばかりに苦笑いをして口々に溢す3人。




「……ったく…だからオメーは嫌なんだよ」
「だが俺の上に落ちる必要はなかったな」
「武運を祈るぞ、坂本!!」





桂の声を皮切りに、坂本に言われた方へ走り出す。

躊躇せず走り出せるのもまた、表しがたい信頼の証。









坂本はというと、目の前に迫ってきた天人を見渡し、刀を抜いて空を見上げる。

どんよりした雲が雨を降らせている今日は、満天の夜空は見えないだろう。だが、またいつか晴れたら。









「…あいつらの視力も鍛えちゃるぜよ」









夜空観察に3人を誘う口実ができた、と一人笑った。













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やりすぎた感も否めない\(^O^)/w
早く本誌に出るんだ!もっさん!

2009.6.14











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