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攘夷ばっかり
杉と辰馬とモグラ


毎日のように戦の中で生活している4人。今日は珍しく個別の寝室がある宿に泊まることができた。

春とはいえ夜になればそこそこ風は冷たい。決して綺麗とは言えないが、いつも寝ている場所に比べれば格段に良い環境だ。





















「……んぁ?…何じゃ…?」


子の刻を過ぎた頃だろうか。
熟睡していた辰馬だが、カリカリという不可解な音と背中に違和感を覚え目を覚ます。


暗闇の中で蠢く茶色い物体に目を丸くした。
そして何かを思いついたようにニヤリと笑みを浮かべる。


























ギシ、ギシと床が軋む音がする。
どんなに静かに歩こうとも宿が古い。況してこの真夜中だ。耳鳴りがするほどの静寂の中こんな音が聞こえたら、寝ていろと言う方が無理な話だ。


辰馬の隣の部屋に寝ているのは高杉。多分坂本だろうと当たりはつけているが万が一に備え刀を握りしめる。




(…何でこんな夜中に起こされなきゃなんねェんだ)

昨日の戦で退路の確保を担って大分疲れているからか、既に不機嫌である。
坂本であってもブッた斬ると言わんばかりの殺気だ。



足音が徐々に近づいてくる。バレないようにひっそりと歩いている感がものすごくするが、この深閑とした雰囲気の中では無意味に等しい。

その主が襖に手をかけ開ける―――――









その瞬間何かが風を切ったのは気のせいか。





















「おーおーおっかないのー」
「今何時だか知ってるかてめェ」


襖を開けた辰馬の眼前には鋭く光る刀。
しかしそれを辿っていくと刀より鋭い高杉の眼光が見えた。心なしかいつもより眠そうである。

しかし辰馬はいつもの調子で笑いながら話しかける。



「いや〜わしも起きるつもりなんてこれっぽっちもなかったきに」
「用がないなら帰りやがれ斬るぞ」
「そいつに起こされたんじゃよ」


言いながら辰馬は高杉の頭上を指す。
するとそこには茶色い――――――






















「…………〜〜!?」
「アッハッハッハッハッ!!」
「んだこりゃァ!!」
「モグラじゃモグラ!ウンコかと思ったヤツ手あげるろ〜」
「ウンコ人の頭に乗せるとは本気で斬られてェみたいだな」
「アッハッハおんしわしの話聞いちょった?」



いつもふざけているように見えても辰馬も戦場で生きている。襖を開けた瞬間高杉の頭上目掛けてモグラを飛ばしていたらしい。驚くべき素早さである。
高杉が気づかなかったのは眠気のせいだろうか。




「んなバカなとこでスキル発動すんじゃねェ」


頭上に居座るモグラを高杉は乱暴に引っ剥がすと床に叩きつけた。



「あああモグちゃんに何するんじゃ!」
「モグラ叩きしただけだ」
「遊び方違うろー」
「俺は眠ィんださっさと帰りやがれ」
「きっとモグちゃんは寂しかったんじゃ…床に穴を開けてまでわしに会いたかったんじゃろう」
「相変わらずおめでてェ思考回路だな」
「アッハッハッハおんしもな!モグちゃんをウン」
「黙れてめェ斬るぞ」




例えば銀時だったらここで食ってかかってくるからやりやすいのだ。どうも辰馬相手だと調子が狂う。
何の悪意もない笑みを向けられるとたじろいでしまう。




辰馬は叩きつけられたモグラをつまみ、モグラの両手を掴みながら横に揺れながら歌い出した。


「モーグモーグモグモグラの子〜」
「センスねェな」
「アッハッハッハ生意気な事言いよる!じゃあおんしが作詞してみるろー」
「…モージャモージャモジャ毛玉の子〜」
「アッハッハッハ意外とおんし音」
「うるせェ黙れ斬るぞ」




再び刀を辰馬に向ける高杉。
だがさらに笑い声を発する辰馬に怒りを通り越して呆れてきた。
どういうわけで夜中にこのテンションを維持できているのか甚だ疑問である。



「遊んでる暇なんてねェんだよとっとと帰れ」
「わしは遊ぶのが好きなんじゃー」
「結局てめェの勝手じゃねぇか」


精一杯の力を込めて辰馬を睨む。
辰馬に抱かれているモグラは恐怖で震えているが、当の本人は意に介さないようで穏やかな笑みを向けてきた。



「おんし昨日の戦で大分疲れちょるじゃろ」
「…………」
「たまには息抜きせんといかんぜよ」




にっこりと笑うのと同時にモグラを手渡された。
暗闇に紛れて姿ははっきり見えないが大分小柄のようだ。


「おい何しやがる責任持って連れて帰れ」
「作詞」
「…あ?」
「おんしのセンスのが一枚上手じゃったからプレゼントしちゃる」
「ウンコ貰ったって嬉しくねェんだよ」
「全国のモグラに謝るろー」



押し返そうとするが辰馬は足早に襖に向かっていた。仕方ないぶん投げるか、と腕を上げたが辰馬の一言に遮られる。















「モグちゃんと一緒にゆっくり休むんじゃぞー」





漆黒に包まれた中でまた辰馬が笑った。


























「…んなら起こしに来るんじゃねェよ」

ようやく静かになった部屋に疲れきった高杉の呟きが響く。
モグラはというと、高杉につままれたまま眠っている。



全く以て疲れた。

だが疲れているのを見抜かれたのには驚いた。ふざけているのか真面目なのかつくづくわからない奴だ、とこれまで何度も感じている。

だが、感情の表現は恐らく4人の中で一番素直で。







「………」


自分がひねくれてるのは重々理解している。


だがモグラの寝顔を見つめていたら、ひねくれている自分に少し罪悪感を覚えた。眠気で思考回路が上手く働かないだけかもしれないが。

そしてモグラをつまんだまま布団に突っ伏した。




















翌日、モグラと布団を共有している高杉を見つけ桂と銀時が爆笑したのは言うまでもない。














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なんだこれw
なんでモグラチョイスw
当時の私よ一体何に影響された\(^O^)/

2009.4.10


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あきゅろす。
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