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(どういうことだ美凪?)

(そういうことです、小坂さん)

水菜を後ろに置いた渚とのアイコンタクトだ
小坂が一度息を吐くと、水菜は渚より前に出てきて懇願するように喋り始めた

「あのっ、ご迷惑だったらいいんです!」

目を潤ませながらの言葉は彼女を余計に小動物らしく見せる

「……十分待ってろ、こっちは寝起きなんだ」

「えっ?あの…」

水菜が何も言う前に小坂は扉を閉めてしまった
渚はふふんと鼻を鳴らして水菜の肩を叩いた

「んじゃ、私はもう行くよっ、頑張ってね♪」

得意げに鼻歌を流しながら渚はスキップで消えた
あとに残された水菜は胸の前で両手の指を落ち着きなく組み合わせたりしている

十分…たったの六百秒だが、今の水菜には十時間にも感じられるだろう

「だ、大丈夫かな…変なところとか…」

顔を撫でながらボソボソと呟く水菜

一人でいることさえめったにないのに、今から男の人と…しかもデートなんて…
(やはり渚には言わない方が良かったのかな…)

霧瀬水菜は見てわかるように、小坂に恋わずらい真っ最中だ

最初は…たまに見かける人だってだけだった
それが何度か見かけるうちに脳裏に焼き付いて…気づいたらその人のことばかり考えるようになって…それが好きだということだとわかったのは本当に最近だった

わかった時に側にいた渚に言ってしまった

言った途端、渚はすごい笑顔になって背中を叩いてきた
そして、学祭を利用してデートしちゃえと言い、無理やりここまで運び込んだ

「そりゃここまでしてくれたことは嬉しいけど…何か間違ってるよぅ…」

「何が間違ってるんだ?」

背中を向けていた扉からの声に水菜は嬌声を上げた、振り向いた先の相手を見て頬が真っ赤になった

「あっ!あのっ!別に何もっ!何もありませんっ」

「そうか、ならいいけど」

独り言の恥ずかしさで下を向いた水菜はそれを利用して深呼吸をする、心臓が張り裂けそうだ

「大丈夫か?」

ーーあぁ…小坂さんが心配してくれてる…

などと幸せを感じてる暇はない、慌てて頭を上げた水菜は少し頭を傾げてしまった

小坂の格好だ
なぜか学校の夏服の上に黒のスーツを着て、同じく黒のネクタイを付けている…恐ろしく紳士っぽい

「この格好か?
まあ、色々とあるんだよ」

水菜の考えていることを見抜いたように小坂は喋った
水菜の頭に手を乗せて

「じゃ、行きますか」

と、笑った

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