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企画部屋
豪と降った雨の後に。(スーダン・田中眼蛇夢/茶紅覇様)
※お相手は田中くんです、企画夢「ご」の頭文字にてご指定頂いております一万打感謝作品でございます!(相互リンクでも常日頃から大変お世話になっております、茶紅覇様よりリクエスト頂きました!いつも有難うございます!!)

※場所は学校という事でご指定頂いておりますが、主人公ちゃんご指定&こちらでの設定共に皆無ですので、是非とも皆々様のお力にて素敵な子にして頂ければと存じます。

※内容は…そこまで重くはない…と思いますが、もしかしたら重め…かもしれないです、申し訳ございません…。
悲哀系ではございませんので、そちらだけは先に明言させて頂ければと存じます。
このような感じで大変申し訳ございませんが…もし宜しければ本作もお付き合い頂けましたら嬉しい限りです。
どうかよろしくお願い致します(深謝)


*****



(……大分、刻を要してしまったな。)



永き安息日を迎える為、此の地を城と定める魔獣達の世話を入念に施して遣っていた訳だが…
俺様が思うより、刻は早くと駆け去っていたらしい。


……全ての魔獣を連れ立てれば、とも思うが…そうもいかんからな。


斜光は学舎を紅赤と染め、既に人間共の気配は無い。
数刻前の蝉噪すら空音であったかのように、心地良い静黙に包まれた廻廊を、只一人と歩む。







……が、これも俺様の運命られたるところ、か。
このような安寧等、ほんの僅かと保たんのだ。


『…ふぇ、…ひ……うぅ…。』


教場に面する廻廊に、微弱に谺するは……声、だ。


(これは……何者かの慟哭、か…?)


先までの静黙は破られ、この一筋の廻廊までもが様相を変えては、漂気が張り詰め、濾されていく。



程無く教場が前へ帰着すれば、浪と声が増す。

どうやら…生ずる元は此処のようだ。


(……何奴…?)


幾ら学舎とはいえ…俺様が魔力を狙う彼奴等か、はたまた異界が異形であろうとも可笑しくは無い…。

気は一寸の隙も無く構え、静やかに指掛けた開戸を、一気に開け放つ。



ガラッ!!



『…ぅ、う"っ…ふぇぇ…ぐずっ…ふっ…う。』


明る視界に、その声が主を、一瞥する、が……


「…なッ、みょうじ!?
ど、如何したというのだ…何があった!?」


……瞳へ飛入るは、しとどに両眼を濡らす彼女、その姿のみ。


『…う"、ぅ…たっ…な、か…く…ひ、ぐっ…。』

クッ!!
何故メス猫の涙というものは、こうも俺様のマインドを揺さぶるのだッ!?

しかも…拠りによってみょうじとはな…ッ!!



奴は……メス猫唯一の、特異点と成り得る者なのだ。

どこぞの闖入者か知らんが……泣かす相手が悪かったようだな?
…俺様が、貴様の生涯が幕引きを務め上げて遣ろうッッ!!



「……誰だ?何をされた?」

瞳が融け落ちるのではないかと案じられる程、絶えず涙を生む彼女に、手巾を差し出しながら尋ね探れば、

『う、ぐす、…っ、ち、ちが、うの…。』

柔らと受取りながらに、ふるふると頭を振り…彼女が嗚咽の狭間から否定の言葉を漏らす。


…む、もしや…その闖入者を庇護しているのか…?


ぼろぼろと痛ましく流続するみょうじの涙に、そのような深思が生まれるが、

彼女が紡いだ先は、実に意想外なものだった。




『…あの、ね……ひ、ぅ…この、小説、の…ぐすっヒロインが、…うぅ、ふっ…』

か…かわいそう、でっ…!


通解するや否や、再度それを想ってか、声を上げ感泣するみょうじ。




………空想劇が相手ならば…そういう事も、有る…だろう、な。


フッ、紛らわしいにも程があるが…
彼女ならば、それすらも微笑ましく想えてしまうところが我ながら不思議なものだ。


……そういった原由での泣顔ならば…

観れたが事も…心嬉しい気さえしてしまう―。






…一先ず彼女が落ち着きを取戻すを待てば、

『…ぐす、…ごめんね、びっくりしたよね。
もう誰も居ないみたいだったから…泣いちゃっても平気かな、って思ってね?』

…そうしたら、止まんなくなっちゃって。

いつの間にか豪雨になっちゃいました、と少し笑顔を観せる。

「…フン、何事も無かったのならば良い。」

だが……あまり心配を掛けるな。

と、みょうじの瞳は観ず、窮めて小さく落とせば、

『…うん、ごめんなさい。ありがとう。』

彼女が笑みをやや深めるを知り…俺様も秘かに笑む。



そして未だ手にしている書史を一度見詰め、俺様へと向き直っては、

『…でもね、私どーしても納得いかないんだ。
ハッピーエンドなんだけど…やっぱり、ヒロインにはそうじゃないような気がしちゃって。

私が変なのかもしれないけど……田中くん、もし良かったら…慰めついでで、聞いてくれる?』

そう願い出るみょうじ。

あ、時間ないとか、嫌だったら、全然大丈夫だから!

と一層に絡められる視線に……どうにも、弱るばかり、だ。

「……い、いや…構わん…。」

『…ほんと?付き合わせちゃってごめんね…でも、嬉しいな。』

じゃあ、簡単にこの小説の内容から話すね?と微笑まれれば…
またとこの笑顔を曇らせるが、惜しくなる。


…ならば俺様が、貴様を涙に沈めたがその元凶そのものを制禦し、慰藉と為って遣ろう。

そう強く思索が及ぶのだ。



――


みょうじが物語るには…


どうやら、その空想劇中ではこの俗世は滅亡の危局に直面しているらしい。
まぁ惑星が跡形も無く消え去るというのだ、宇宙規模での天災の類だろう。
…当然の如く、人間共に残存の余地は無い。

だが、誰かが命を賭してある任務…至上命題、と言えるか。
それを優と果たせば、惑星は救われ、人間共の存亡の危機も潰える。

そこで英雄たる男がその任を受け、この俗世を救うが為と犠牲となり……
無事に惑星は危難を免れ、目出度く終幕を迎えた…と。


まぁ…未来科学的空想劇(SF)に於いては、よく有り得る話だな。



物語が要略を語り、しばし躊躇うみょうじに、

「……なるほどな。

愛する者を護りたいと想うは…男の性だからな。
己と引換えてでも、というのも……解らん話では無い…。
…それ程に、大切だったという事だろう。」


それで…貴様は、何に心痛しているのだ?
…話してみろ。

と努めてたわやかに声を掛ければ、
うん、そうだったんだよね、と僅かに微笑み返し、
その胸中を零していく…。


『…ヒーローがね、死んじゃうってこと自体も悲しくて、辛いけど……。』

…その後にね、世界が救われた後の…ヒロインの描写が、少しもなかったから…。
それって…描写できなかった、ってことだと思うんだ。

ハッピーエンドに…相応しくない、っていうか…
助かっても……ヒロインが、辛くて、悲しくて、どうしようもないからだと…思ったの。

だって……世界は救われたのに、愛してる人はもう居ないんだよ?
救われたからこそ……居ないんだよ。

その平和を…素直に、喜ぶのは……難しいと思う。
…きっと、平和なら平和な程……彼のこと、思い出しちゃうよね…。

だから、彼女だけ一人ぼっちになっちゃったみたいで…
でも、周りの人達は…きっと、笑顔で、幸せいっぱいで…
彼女は涙も見せられないんだ、って思ったら……なんだか、泣けてきちゃ、って…。


そこで一度、言葉を切り呑む彼女。
…涙を堪えているのだろう、と解りながらも、唯、待って遣る。



『…っ私はやっぱり、最後までヒロインに笑っててほしかったな…。
……もちろん、ヒーローと一緒に。』

もし、もし私だったら……最期かもしれない、って時だからこそ、側に居てほしい。
足手まといだって解ってるけど…一緒に、連れてってほしい。

あ…でもこういうのって、大体1人乗りが定番だね、このお話でもそうだったや。


…地球の危機だもんね、そんなにうまく…いかないよね。

と、寂しそうに笑う。





……やはり痛ましい、な。


この彼女を、置いてまで征く、という事は。




「……そうだな。

…だが…俺様なら、共に連れ立てんというならば…その任は降りる。」

敢然と言えば、

『…行かないんだ……。』

少し瞳を張り、譫言のように漏らして驚嘆する彼女。


…それはそうだろう。
みょうじが語った思惟に、男が向かわんという選択肢は無かったからな。

「…ああ、まさか候補が俺様のみ、という事は無いだろうしな。

…情愛を交わし合っているならば、己が訃報に彼女が涙に暮れる事等、容易に想像が及ぶ。
己が所為で彼女が涙に濡れると知りながら、それを黙認するというのは……彼女を護る、という事に反するのではないか?」

……ましてや愛する者を置き残す、等……喩え躯が朽ち滅ぼうとて、死に切れんというものだ。
彼女を只一人と俗世に残し、それこそ他が誰かに奪われようものなら……仮想するも悍ましい。

隣に立ち並ばれるが事を想うだけでも、筆舌し難い程に憎らしいのだからな。
触れられでもしようものなら………直ちに黄泉より帰界してしまいそうだ。


ならば最期が刻まで、彼女を護り…共に散るを取るまでだ。


…俺様とて……それが、惑星が、俗世が、人間共が為の芝居だとしても…

愛する者に、離れるを良しとされるは…辛いしな。




そう一息に紡ぐを、懸命と聴いている彼女。


「まぁこれも…俺様が見解に過ぎんが…
……どうだ?」


改めて彼女が瞳を真直と捉え、彼女が為の物語の感想を問えば、

俄かに顔を綻ばせていき、

『…世界より、愛する人を優先するのは…正義のヒーロー、としては間違ってるのかもしれないけど……。

…ヒロインとしては、というか……私だったら、そう言ってもらえる方が、ずっと嬉しいと思う。』

でもこれじゃ…もう主人公じゃなくなっちゃうね?
と笑み満ちるみょうじに、釣られ笑んでいく。

「…フッ、貴様は可笑しな事を言うな?
元より覇王である俺様が…たかが俗世が為に憂苦する英雄となる事等、有るはずも無いのだ。」

俺様は、俺様が心に大切だと想うものが為にしか動ずる事は無い。
…そこを違えてくれるなよ?

敢えて高々と、彼女が無知へと告げれば、

『…ふふ、そうだね、覇王様は世界を壊す側だもんね。


だけど…田中くんに愛される子は、幸せものだね!』


また一段と、笑顔を向けてくる有様だ。



…まぁ、無知を深めるも良い、が…

それでは……物語が幕開は遠退くばかりだからな?


「…そうか?


ならば……みょうじ、貴様は幸せ者、だな。」


『……へ?』

私が…幸せ、もの………?


…っ!
え!?えぇ!?た、なか、く…なに、言って……



先刻とは異なる驚嘆に暮れるみょうじには故意に答えず、外界の様相を探るフリを通す。


「…大分宵が帳も下りてしまったな…。
…みょうじ、還るぞ。」

送って遣ろう、と軽く視線を流せば、

『えっ、あ、、う、……ま、待って……。』

ぎくしゃくと、仕度を整え始めるみょうじの様が何とも言えん。




―なかなかに捗らんらしい彼女へ向け、

「…まだか?早くしろ、おなまえ。」

『っっ!!?』

名を呼んで遣れば、手にした教程を見事に落下させ狼狽る。




……可愛らしいものだ。

早く、等…微塵も想ってはおらんが、物語には事変が付物だ。



だが展開を迎えるというのならば……早いに越した事は無い。

…永くと頁を割くのは、貴様が俺様に堕ちてからなのだからな?



「…それで、貴様は良いのか?



………俺様に愛される、幸せ者で。」

取得して遣った教程を渡すと共に、彼女にそれと声を贈れば、

『〜〜〜〜っっっ!!??』

鞄を盛大に引倒し、またも教程を散落させるおなまえ。


層一層に慌てふためく彼女を眺め、未だ刻が掛かるを知るが、


…それも愛らしいが、残された頁は少ないぞ?


と。
次なる展開を迎えるが為、更なる事変を構想するに至るのだ。







*****

こちらも感謝企画リクエスト作、という事で…書かせて頂きました、恐縮です。
頂きましたお題は、「田中くん」に「学校」で「号泣しているところを見られる」でございました!
茶紅覇様、素敵お題本当に有難うございます!!

ですが展開諸々、井澤任せとの事でしたので…あんまり号泣って感じじゃない上に…こんなんになってしまいました…凹。

というか・…田中くん視点で申し訳ございませんっっ!!涙(土下座に次ぐ土下座)
そのままブスリとお願いします!!!願!(刃物要求すんな)

何でしょうかね…井澤の女子力が低過ぎて、男子目線の方が思い付く事が多かったりでして…滝汗。
…ちょっと性転換した方が良いですかね?(真顔)

あと内容的に…超絶フィクションとはいえ、命に関わるお話でしたので、苦手な方々がいらっしゃいましたら誠に申し訳ございません。
こちらに尽きましても、後程俺様考察と共に落とさせて頂ければと思っておりますので…どうかご容赦頂けますと幸いです。

最後までお読みくださいました皆々様、本当に本当に有難うございました!!!(深々謝)

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