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幻想
鈍痛を抱く手、甘い麻痺。後篇(スーダン・田中眼蛇夢)
※お相手は田中くんです。リクエスト夢でございます。(青葵様よりキリ番リクエストで頂きました、重ねてお礼申し上げます。)

※同タイトル前編に引き続き、舞台背景は第4章、こちらは学級裁判からのお話がメインとなります。
学級裁判故、誰かが必ず亡くなりますのでご注意くださいませ。

※主人公ちゃんは“超高校級の絵本作家”です。容姿設定等はございませんが能力設定有ですので、ご了承くださいませ。

※第4章ネタバレが多少ございますので、未クリアの方はご注意くださいませ。

※原作寄り故、過去作品中最暗&悲恋です(前編より暗くございます)




*****



―――




「…それじゃあ、まず…凶器の話から、行くか?」


…いつしか慣らされてしまった、その事実自体への違和感。
それを受け入れる事に疑念を持たぬ、至極平常な、学級裁判という、

処刑場。


このような忌むべき場所へ、
従い、集い、揃う、人間共の…なんと愚かしい事か。



改めて俯瞰すれば、嘲笑が漏れていくばかり。


こんな異常な空間も、異常な刻も、異常な正常も、

異常な俺様も。



全て…

そう何もかも全てを、俺様が、壊してくれよう。


「…フン、実に下らん茶番だな。今回は、俺様が瞬時に終わらせてやろう。



…隠し立てするつもりはない、犯人は、俺様なのだからな。」

恨むならば、全て、ただ俺様を。
憎むべきも、全て、俺様が地獄で背負ってやろう。


「なっ…た、田中!?それ…マジ、なのかよ…?」

「フン、こんなところで虚言を吐いてどうなるというのだ?俺様が弐大を殺した…それだけが事実だ。
生きながらにして死を携える、その姿が不憫だったのでな…俺様の手で…その歪まされた運命を、壊してやったまでだ。」

降る言葉を、無心で割いて。


『…そんな、田中さんに限って、まさか…!』

「信じられずとも…真実は揺るがんぞ?」

惑う言葉を、無碍に裂いて。


「フツーはいきなり、犯人です、なんて信じられねぇに決まってんだろーが!てめぇ、自分で何言ってるか…本当に解ってんのか…?」

「ハッ!九頭竜…貴様まで何を迷っておるのだ?貴様の感傷と、俺様が悪行は別の話だろう…?」

辿る言葉を、無残に捌いて。


『…オイ、その話…本当に、本当なんだろうな!?だったら、だったらオレは…おめーを許さねぇかんな…!!!』

「…ああ、忌々しい行為に身を堕としたのだ、それなりの罰は受けるつもりだ、許される気等…毛頭ない。」

憤る言葉を、無法に裁いて。


「…へぇ、田中くんが…。そっか、まぁ…そういうなら…、ボクは彼を信じる事にしようかな。」

「フン、貴様はなかなか聡いな、狛枝よ。」

倣う言葉を、無上に囀って。


「なぁ、田中…本当に、そうなのか?俺には…やっぱり、まだ納得できない。
お前が…弐大を殺すなんて…何か、もっと理由があったんじゃないのか?」

「…くどいな、貴様は。理由等述べたばかりだろう、それ以上も以下もない。ただ奴を摂理に還し、俺様もまた地獄に還るまで、だ…。」

量る言葉を、無情に遮って。


『んー、でも、まだ証言だけで、田中くんが犯人、って…証拠が見付かった訳でもないし…もう少し、詳しい話を聞かせて貰う必要がある…と、思うよ。』

「…フン、まぁ、道理ではあるか。ならば聞かせてやろう!俺様が企てた、身の毛もよだつ醜行の、その一部始終をッ!!!」


満ちたその言葉を待ち受けて、
無遠慮に捕らえれば、
利己の世界へと引き隠し、逃さない。



そして有象無象を巻き込むが為、思考に思索を重ねた、
偽りの犯行を轟かせる。



…全てはただ、おなまえの為に。

…真意はただ、俺様の、為に。




―先にエレベーターへと乗り込んだおなまえは言ったのだ。

『…田中くん、ありがとう。私…頑張るよ。』

「…ッ!…そうか、ならば、良い。」

何故俺様を置き駆けたのか、その疑問を喉元へと戻す。


……良い。


俺様が、護れば、良いのだ。

それだけの、事だ。


―――




仔細まで、理に適うようにと敷き詰めた、言葉の羅列。
披露し切った俺様に、怨敵達は言葉を忘れ、沈黙と共に在る。

…そうだ、それで…良い。







だが…俺様は、もう、語るに、墜ちてしまっていた。

この犯行が証言の為に全てを費やした。
だから気付けなかったのだ、おなまえが、ずっと、笑っている事に。



『…あのね、みんな…聞いて?』

細く、小さな…不釣合いな場だからこそ、拾われていく、おなまえの周波数。


『田中くんは…違うの、私、なの。』


そう呟けば、手に取られる、俺様を襲う凶事。


『…これが、本当の、凶器。…絵の具で、私の手形が…付いちゃってるでしょ?』

『現場に落ちてたのはダミーで…でも、私じゃないの。私は…柱に彩色して、それが倒れて凶器になったように見せ掛けたの…事故を装う、感じ…で。』


吐かれる息に、図られる、その一句、その一音。


『だって…田中くんが、あんな血も付いてない凶器、現場に残すなんて…可笑しいよね。なんだか細工がたくさんあって…証拠を、わざと残してるみたいで…。
私みたいに…女子みたいに、非力だと難しい犯行だって、より印象付ける為…だよね?』

俺様の瞳を、奥までしっかりと、見詰め笑う。
柔らか過ぎる笑顔が、現実に届かないと告げるようで。


……そうか、だから貴様は…、笑って、いたの、か。


『…でもね、逆なの。私だから、できたの。私だから…どれだけ頑張ってもダメな私だから、弐大くん、油断してくれた。』



全ての言葉を否定してやりたい。
叶うなら、またその唇を、塞いで、塞いで、共に息絶えるまで、声も、現実さえも、奪ってしまえたならば。


…真実味を帯びる、凍てついた、赤黒い鈍器。
…真実味を帯びる、静やかに、強かな、彼女の声色。

その全てを踏み越えて、おなまえの吐露を無闇に遮れば、彼女の立場を余計に危ぶめるばかりで。


『…ロボットの絵本を描く参考にしたいから、って…朝の6時にタワーで待ち合わせて…。』


『柱を倒すのも、弐大くんにやってもらったの。』

…天上の上に隠し空間があるかもしれないから、
キーホルダーをぶつけてみようと思って投げてたら…柱の上に、乗っかっちゃったんだ、って言って。


一つ一つ、思い辿るように語るその様が、悲壮なまでに、過去を明々と織り成していく。


『…届かないし、扉とかじゃないから、きっと怒られないよね?って言って…倒して貰ったの。』

…本当は、何回も何回も投げて、やっと乗せたんだ…。
ほら、このキーホルダー…傷だらけ、でしょ?


ね?、と困り、苦笑し、星型のキーホルダーを、手の平に乗せる。



…ああ、俺様は…

俺様は、貴様に…なんて酷い現実を返してしまったのか。



『…そのまま、倒れてくる柱に潰されて、私が死ねれば良いな、って思ってたんだけど…弐大くんは本当に、力持ちだよね。』

倒す方向なんて、寸分も狂わなくて。


そう…呟いて、悔やむような表情に、
俺様の顔も、苦く、歪み滲んでいく。


『…無理、させちゃったから…異常がないか、見てあげるねって、言ったら…簡単に…背後に立てちゃって。
…だから、おやすみスイッチを、押して……。』





ッガンッッ!




と。

頭上から、衝撃が落ていく。

その瞬間が、駆け巡るように。
目の前に、降り注がれる光景が、形をぼろぼろと崩していく。





ああ…俺様は、泣いている、のだな…。


おなまえ…、俺様は…まだ、貴様を救えるだろうか…?

鈍るように痛む脳髄で、筋を作る頬を拭いながら、
諦観を押し退ける想いで以て、彼女の為の言葉を、己の為の言葉を、捜し浚う。



―先に口火を切ったのは、終里だっただろうか。

『……みょうじ……どう、して…どうしてなんだよ…オレは、オレは…!おめーの事、信じてたんだ、ぞ!?』

『…ごめんね、朱音ちゃん…。』

『なぁ、答えろよ…!なんで、弐大を…なんで、だよ…!!?』


一度、瞳を強く閉じるおなまえの表情が、物寂しげに、曇っていく。
その顔を見れば、俺様の世界は、更に酩酊を重ねるように波紋する。


『…一人、ぼっちが…似てた、からかな…。』


囁くような。
独りごちるような…。


『…ううん、弐大くんなら、解ってくれるような…気が、したから…。』

ごめんね、私が…弐大くんの優しさに、漬け込んだの。
ごめんね。…ごめんね。



反響していくおなまえの声を、塗り潰すように落ちて行く、誰々の声々。


それなのに、どうして…どうして俺様は、

おなまえを守る、言葉をまだ見付けられないのだ…。





喧騒の中をただ揺らぎ。
何もかもを振り捨てて、想いを響かせる頃には、もう、全てが遅過ぎた。


「…違う、貴様らは…間違えておるのだ、みょうじは…、おなまえ…はッ!クロ等では、ないッ…!!」

「…全て、そう、全て!俺様が一人で仕組んだ事ッ!その禍々しい凶器も、キーホルダーもッ!!捜査中に、捏造する事も、十分に可能だったはずだッッ!!!」



『…田中くん…。』



…驚きを隠さない、その顔は、
何故そんなにも、安らかなのか。



『…一緒に、ずっと…捜査してたのに。もう…忘れちゃった、の?』


泥濘に、音も無く、沈んでいく。
記憶が、明滅しては、爆ぜていく。


『それだと…自分が犯人だって、言ってるのに…私の、偽装工作を許してた事に…なっちゃうよ?』

矛盾、だね。
と…笑うおなまえが、酷く、幻のように、佳麗だ。



「…いや、でも…田中の言う通り、その2つの偽造位なら…どうにか、できたかもしれない、よな…?」

議論に、その真実の受け入れ難さに、結論を付けあぐねるように、日向が声を上げ、

「…確かに、まだみょうじさんの狂言、っていう可能性もあるかもしれないね。」

狛枝が同意をし、続行を促す。

その一言が、こんなにも俺様を救うのか。


…彼女を、生かす、その道が、喩え茨に蝕されていようとも、一歩でも長く、繋げる事ができるならば…俺様は、何物にも縋るだろう。

彼女を守れるならば、もう何でも、構わない。

道理も、人道も、修羅も、何も無い。

彼女以外が断絶された世界で、この音々が続く事だけを、ただ望む。



自分を庇護するような言霊の数々を身に受けて、
それでもおなまえは、困ったように笑っている。

『…証拠、少なかった、かな。
そっか、私馬鹿だから…頭、あんまり回んなくて…、足りな、かったんだね。』

困ったな、と、また笑う。


意識を攫われる程、彼女が未だ、笑顔な事までが辛い。

―もし、この処刑場ごと破壊して。

ここから彼女を連れ去れたら、彼女を、救えるのだろうか。

俺様の世界に、ずって居て、くれるだろうか―。





『…じゃあ…私を、助けて…欲しいな。』



え…?

という、
自棄に間の抜けた、呆けた声が漏れたのは、己か、それとも、別なのか。


『…こんな事…して、助けて…なんて、本当に、わがままだと、思う。』


でもね…

両手の震えが…もう、止まらないの。


私、きっと…、もう、絵本も、描けないから。


描く資格も、ないから。


生きていく資格も…自信も、強さも、ないから。



『…だから、お願い。』

そう、笑顔で。


ほら、震えてる、でしょ…?



…肩まで、震わせて。
…瞳の水面も、震わせながら。



…どうしようもなく、抱き留めたい衝動に駆られる。
その震えは、何への震えなのか。
それを問うまでもなく、強く。
彼女の震えが止まるまで…決して離さずに…。


想いに反し、虚しく空を切っていく、この手の…なんという、無力さ。
それを一心に、憎む事しかできない…その悲痛を、俺様は何に、向ければ良い…?



『…私に、投票して?
そうじゃないと皆が…死んじゃうから。
そうしたら…私、死ぬより、もっと、辛い…から。
そして…私を、解放して…助けて、欲しいな。』


ごめんね。



彼女が助けを…求めている。



『…ごめんね、皆…大好き、大好きだよ。』


大好き、そう…笑顔を添えて。

最後に…最期に、俺様に、声を、心を、贈る。


真っ直ぐに告げられた、その言葉は、俺様の鼓膜に焼付いて離れない。
きっと、俺様が、心のどこか片隅で、ずっと、望んでいた言葉だからこそ…纏わり付き、廻り続けるのだ。


廻る度に、その言葉が、無情にも胸を裂く。
流るる鮮血は、彼女の瞳には映らない。
それでも確かに、俺様は今、生を手放したのだ。


彼女の最期に、生が、止まっていく。




お互いを想うが為に、
お互いを想ってしまったが故に、


いや…俺様だ、


俺様が、先だったのだ。

俺様が…先に、彼女以外を、切り捨ててしまった。



緩やかに、蛇行し、這い寄り、射程を捉える、それ。
日を追うごとに、色を失くしていく、彼女の生。


それに堪えられなかった俺様が、彼女以外を排除する決意を、してしまった…その為に。


俺様は、もうとっくに壊れてしまっていたのだ。
俺様は…もう、狂って、歪んで。

おなまえに狂ったが故の、必然。



それすらも気付けない、痴鈍な己が…
終焉に…迎え入れられていく。





「…行くな、おなまえ…。行かないで、くれ…。」


おなまえを救えば、俺様は救えない。
俺様を救えば、おなまえは救えない。



あの刻、あの刻に、やはり…心中すれば、良かった。
冷え渡るその瞬間まで、共にすれば良かったのだ。



だが…俺様は、俺様は、それでも、おなまえを、救いたかった…。

ただ…それだけだったのだ…。







『…ありがとう。』








―――――



 超高校級の絵本作家
みょうじおなまえのスペシャルなおしおき!


“お星様になぁーれ!”




―――――









…流星のそれに、おなまえの存在が消されていく。


まるで、星と成って…空に上がってしまったように。
彼女の一部さえも、ここには戻らない…。





―――




…もう、何もかも、全てが…どうでも良い心地だ。

おなまえが居ないのならば…俺様もすぐに、後を追えば良いだけの事。



ああ、そうだ、そんな至極明快な事に…どうして俺様は気付かなかったのか。

今ならばまだ、同じ冥府が門の前に、立てるだろう。


…そうと解れば、急ぐとしよう。




徐らに立ち上がる俺様の元に、何かの声がする。

果たして誰なのか、そもそも人の形をしているのか、そんな事すら、もうどうでも良い。




だが、それでも、おなまえの名だけは…俺様を捕らえてしまうのか。


「…田中、これ……みょうじの、遺品…。
…多分、お前宛だと…思う。」




それは…紛れも無く、おなまえだった。


小さく、温かく、だがどこか寂しげな。
ずっと、傍らに居て、やりたくなるような…


1冊の、絵本。




――


『大切なお星様』


小さな小さな、名前もまだないお星様。

とてもとても小さくて、光のよわいお星様は、だれにもみつけてもらえません。

だから小さい小さいお星様は、いつもひとりぼっちです。


だれかをさがしにいきたくても、とてもとても小さくて、流れていくちからもないお星様は、ここからうごくこともできません。


「…おや?こんなところに星がいたなんて!
もっとつよく光ってくれないと、わからないじゃないか。」

『ごめんなさい』

「おっと、あぶない!ぶつかるところだった、きみはずいぶんと小さいけれど、本当に星なのかい?」

『ごめんなさい』


旅する流れ星たちは、小さなお星様にきづけずに、いつもびっくりしてしまいます。

ぶつかってしまいそうになることもしばしばで、小さなお星様は、あやまることしかできません。


小さなお星様に流れ星たちがきづいても、かれらはすぐにだびじにもどってしまいます。

だからいつも、小さなお星様はひとりぼっちなのです。




ある日、たくさんの、たくさんの流れ星が、小さなお星様のちかくをとおりました。


そのなかで、1つの流れ星が、小さなお星様にこえをかけてくれたのです。

「む?こんなところにいては、あぶないぞ。」

『ごめんなさい』

「…そんなに小さくてはたいへんだろう。よし、ぼくがとなりにいてあげよう。そうすれば、きみのこともよく見えるようになるだろう。」


大きなお星様は、小さなお星様が、うごけないことをすぐにわかってくれました。

そしてとなりにいてくれるというのです。


『…ありがとう』

小さなお星様はうれしくて、はじめておれいをいいました。

とてもとてもうれしくて、
うれしい、ということがうれしくて、
おれいをいうのもうれしいと、はじめてしったのです。


それから大きなお星様は、ずっといっしょにいてくれました。
小さなお星様は、すっかり流れ星たちにおどろかれることもなくなりました。

小さなお星様は、とても幸せでした。
まいにち、まいにち、大きなお星様といられるのが、とてもうれしかったのです。
まいにち、まいにち、大きなお星様がいてくれるのが、とてもあたたかかったのです。



ですが、ある日、小さなお星様はきづいてしまいまいた。
大きなお星様は、小さなじぶんをてらすために、
どんどん、どんどん、光っていたのです。

光って、光って、光りつづければ、
どんどん、どんどん、小さくなって、
きえてしまうことをしりながら、
ずっと、ずっと、光っているのです。



だから、小さなお星様は、大きなお星様のそばを、はなれることにきめました。


小さなお星様は、大きなお星様が大好きだったのです。

大好きで、大好きで、大好きだったから、

かれがじぶんのせいできえてしまうのが、いやで、かなしくて、たまらなかったのです。





大きなお星様がねしずまるのをまって、
小さなお星様は、旅にでます。

がんばってがんばって、光って、光って。

すこしずつ、すこしずつ、大きなお星様のそばをはなれていくのです。



それでも、がんばってがんばって光っても、
おもうとおりにすすめません。
光っても光っても、やっぱり小さなお星様はだれにもきづいてもらえません。


そして、ほんのすこしだけはなれたところで、
すぐに流れ星とぶつかってしまいました。

「わぁ!おどろいた!きゅうにとびだしては、あぶないよ、すこしぶつかってしまったけど、だいじょうぶかい?」

『ごめん、なさい』


大きな流れ星にぶつかられては、小さなお星様はひとたまりもありません。

どんどんからだに、ひびがはいっていくのがわかります。



からだがとってもいたいけれど、でもふしぎと小さなお星様はうれしいきがしました。

大きなお星様はまだねむっているようです。
だから、きづかれないうちに、そばをはなれることができて、とてもうれしいのです。


そして小さな小さなお星様は、
小さく小さく光りながら、
大きな…大好きなお星様をおこさないように、
しずかにしずかに、えがおできえていきました。




――






…俺様に、向けられた、無垢すぎるまでの信頼に、愛情。

おなまえが持つ、その全て。



まるで、己を封じ込めたような…おなまえそのままの、物語。

そこに語られる事は、誰よりもおなまえの事で、何よりも、俺様の、事だった。



酷く、どこまでも、遺書、だった。

酷い、容赦のない、偽りのない、彼女の心だった。

俺様に、この地に残れと、生に、しがみ付けと、
貴様は…その身が消えてまでも、強いるのか。





…ならば、


ならば、俺様も、おなまえに生きる事を強いてやろう。
俺様の隣には、いつでも、貴様だけ…。








あぁ、そうだな、そこに…居る、のだな?

…良い。

言わずとも…解っている、俺様の為に、戻ったのだろう?

…それで、良い。

それで、良い。



掻き抱いた空虚が、酷く、温かく、身を包む。
手も、腕も、心さえも、甘く痺れる鈍痛は、紛れも無く、彼女そのもの。




愛している、永久に愛しているぞ…おなまえ。










*****




バッドエンド、主人公クロ、第4章学級裁判、こちらでリクエストを頂いておりました。
裁判の結末等にはご希望がございませんでしたので、私の判断にて恐縮ですが、主人公おしおき、の形を取らせて頂きました。

井澤の中で最上のバッドエンドは、田中くんが最も苦しむラストでしたので、主人公を少しでも救えたか自問自答をし、結局何も救えなかった事を思い、全て自分が招いたのだろう事を悔やみ、その中でも生き残ってしまった自分、生かせて貰った命そのものを持て余してしまう自分にただ苦しむ田中くんが少しでも描ければ、と。
その思いで喪失感と、痛絶と、無力さと、悲愴の海に堕とさせて頂きました。

ある種絶望堕ちしてる感じのラストですが、バッドエンドに成り得ているか、少々不安でもあるところです。
結局は主人公一筋に、生きる彼に希望を見出すか、
幻想に溺れた彼を絶望と示唆するか、
それは皆様で、お好きなラストとして受け取って頂ければと存じます。
諸々力足りずで申し訳ない限りでもございますが…。

個人的には自暴自棄になっても可笑しくないかな、と思える程には苦々しく書かせて頂いたつもりです。
狂う、という事を。
井澤の持つ俺様考察での絶望とも一部リンク致しますが…自分を責める事で彼は絶望に片足を入れ、自分を責め続ける為に絶望を尽くしていく姿が垣間見えましたので、このようなラストを選択させて頂きました。

青葵様が主人公生き残り結末を望んでいらっしゃいましたら大変申し訳ない限りですが、、、少しでもリクエストにお応えできておりましたら幸いです。

長々と後書き失礼致しました。
皆々様、最後までお読み頂きまして有難うございました。

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