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幻想
P攻防戦!〜彼女の××を死守すべし〜(スーダン・田中眼蛇夢)
※お相手は田中くんです。ごめんなさい突発型井澤話です…本当にごめんなさい……凹。

※田中くんがだいぶOBAKAです、そして高校生をしている(と井澤が思っているだけかもしれませんが…滝汗。)
あとちょこっと日向くんの友情出演がございます。。
といってもほんの少しですが、、彼は多分常識人で留まっているはず…うん、そう思い、たい…!!(願望止めろ)

※ですが最大級のアテンション!がございます。

実は井澤の中で田中くんは……パンツ、履いてます(真顔)

つまり多少パンツなお話だったり致しますので、田中くんがパンツ履いてるなんて、絶対に嫌だ!!というNO MORE PANTUな素敵な皆々様や、この手のお話が苦手でいらっしゃいます純粋可憐な皆々様に、深くお詫び申し上げます。
井澤の底辺民度を是非罵ってください…。。

※主人公ちゃん設定ほぼ皆無、ギャグ寄り…かなー?な内容ではございますが、、、諸々、ご承知頂けます懐が大海原レベルの皆々様がいらっしゃいましたら、この度もお付き合い頂けましたら幸いの限りです(深々謝)


*****


…晩餐後、連日と沈黙のみが滞留するその刻に。
今日日は異状とも云い得る事態が俺様の身へと逼っている。


俺様が元へと迷う事無く歩み進むは、彼女。


毎宵と、歓語を交えるような間柄では無い。



その為、懇意かどうか…それを問われたところで、
俺様はその回答を持ち得ておらず。

彼女が俺様をどの様に想っているのか、等…俺様が幾らと勘考したところで量り知れん。





…ただ、俺様がこの彼女が来訪を、どこか快く想っているは…解り切った事だがな。





そして俺様が眼前へと立てば、

『あ、あのねっ、田中くん…今、ちょっといい?』

耳…貸してくれる?と。
何やら周囲を気に掛けるように、声を包み下げ落とす。

「…む?何だ?みょうじ。」

問いながらそれに応え、少しばかり身を浮かせては、屈み立つ彼女の口元へと耳寄せてやる。

『…あのね、どうしても2人で話したい事があるから…夜時間に…そうだな、11時位にレストランに来てほしいの。』

ぽそ、と波打つ聴き慣れん鼻掛かった声に、僅かに掛かる吐息に……どうにも、意識を持っていかれるような気配が忍んでいく…


…が、それを毅然と堪え、

「……フン、敢えて理由は問わん事として遣ろう。
…十一の刻だな?」

ああ、解った。
と、大に頷き観せてやれば、

『うん、ありがとう。
あ……絶対に、田中くんだけで来てね?』

慎ましやかに念を印じた声を返す彼女。

その彼女が様に、了と再度と肯けば、

『…それじゃ、また後でっ。』

訣別の言葉を残し、みょうじがレストランを後にして往く。





その背を自然と瞳が追ってしまうのを己で戒めつつ…先の彼女との遣り取りを、今一度と顧る。



(……どうやら…幻夢の類では、無いようだな…。)



俺様が問わなかったからなのだろうが、最後が刻までみょうじはその事訳を口にはしなかった。

それ程までに……この場では、云い難い事なのか。


しかし、何故俺様に?
ましてや、俺様一人で来い、と重ねての念押し。


……果たしてこれ等から推量される事象を、俺様は冀求しても良いのだろうか。


…夜時間に、二人きり……を、向こうから指定されている訳だからな…。


それは、何だ…まぁ、俺様も……想察される事が、無くも無い…。


いや…。
ここで心積もるは尚早、か。
もしや、の憶見等……淡かろうとも惟うは止めておこう…。



―――



彼女との約事に沿い、十一の刻にレストランが門口を潜る。

先に着いていたらしい彼女の姿を観付け、対面へと座すべく向かい寄れば、


『…ねぇ田中くん!!
どうしたら、日向くんに…ぱん……し、下着っ、あげなくても済むと思う!?』



…俺様が、彼女が前へ座したが先か、
彼女がそう身を乗り出し、号び張らしたが先か。



(……何も、何も、所期等持ってはおらんかったが……
情感も何も、本当に…寸分と無いのだな…。)


…しかも、だ。
何故、日向が事の相談を受ける運びとなっているのか。

いや待て、そもそも……それは何の話なのだ?
襯衣(下着)、だと…?
それが日向とどう結付いたのだ?


この世が終焉を観たとでも云い出し兼ねん、思い詰まった彼女の様相も含め、
どうやらみょうじが相当に困惑している、という事だけは解るが……どうにも、付いていけん…。


ダンッ、と勢いで屹立したままの彼女へ、

「……落着け、みょうじ。
流石の俺様と云えど、それでは筋道も観えん…順を追って話せ。
刻を要しても良い…。」

…日向が、何だ?
と…最も俺様を引きに掛かる事は問わず、とりあえず現状を領解する為の叙説を促す。

『あっ、そ、そうだね。ごめん、ちょっといきなりだったかも…。』

すとん、と腰掛けては、また妙に重々しい雰囲気を纏い、みょうじが事の経緯を言振り出す。


『…実は最近、日向くんが女子とも“希望のカケラ”をコンプリートし始めてて…。』

左右田くんから、日向くんと“希望のカケラ”をコンプリートした時に、ぱ……下着、を交換した、って話は前に聞いてたんだけど…。


それ、女子も……同じ、みたい…で。


わ、私…あと1個、なの。
だから、明日ちょうどお休みだし…コンプリートしちゃいそうで……どうしようかと、思って…。

もう交換してる子も居るし…女子のみんなには、なんだか相談しづらくて…。
でも、やっぱり、どうしても、その…恥ずかしい…から……どうにかならないかと思って…。

それで、男の子に、こんな話…、って思ったんだけど……
田中くんなら…誰にも言わないでいてくれそうだし、一緒に考えてくれるかなって…。


『…だから、お願い!田中くん!!協力してください!!』


両の手をぴたりと組合わせ、懇願する彼女。



……の叙説に、俺様が受けた衝撃は、どこに吐き流せば良いものか。



………おい、みょうじ。
何だ?貴様は…日向に、襯衣(下着)を奪われそうになっている、というのか?
それは貴様が想い描くより…多量の問題に満ちているが、解っておらんな?


更にあと一個数でコンプリート…、だと?
俺様よりも日向の方が、みょうじと懇意にある…という事か?



…。

……。

奴の図れん行動そのもの等どうでも良い…。
この際、そのような事体が罷り通っているという事も、まぁ措いてやろう。



だが……あやつに…日向に、みょうじの襯衣(下着)が渡るような事だけは…我慢ならん、な……。


精確に云えば、赦し難い……。


いや、赦せるはずも無いに決まっておるだろうがッッ…!?

現に、みょうじもこうして面映いと云っているのだからな…!!
俺様が、俺様がこの全魔力を懸けてでも、阻止してくれるわッッ!!!




…しかし、こうして…みょうじから頼られている、というのは…なかなか悪く、無いな…。
俺様ならば己の助けと為る、と想われているだけでも、他の人間共とは差異を多く開けているという事だろう。


後は……どう、断截るか、か。

綿密に画策を練るも一つだが…あまり、何だ、その…
口語し辛い…内容と云えば、そうだからな…。



…彼女が為にも、方途は示してやりたいところだが…仔細子細を詰めるまでは難いだろう。



羞恥を認めた目配せが、彼女から頻りに送られてもいるし、な。

ふむ、…ならば致し方も無い。
俺様が一つ、道化を演じてやるとするか…。



「…フン、為るほどな…。
それで貴様は俺様が智慧を借りたいというのか…。」

『うっうん!そうなの!』

どうかお願いします!と、再度哀願してくる彼女を一瞥し、敢えて雄と笑声を上げる。

「フハッ!しかし…実に滑稽なものだな、人間というものは!!
俺様ならば、そのような杞憂自体が無縁…。
何故なら…俺様が襯衣(下着)はアストラルレベルが低い貴様等人間共には、その存在すら観捉える事は不可能なのだからなッ!!」

フハハハハッ!!!

と…己こそが最も滑稽な程に…実に大仰に演じ挙げてみせた訳だが、

『…え?

えーと…田中くん、それは……もしかして、もしかしてだけど…
…そ、そういう、事…なの…?』

そう、どうにも彼女が視線を見事に泳がせ…軽く紅潮するを観るに、
俺様が意企が届いておらん事が十二分に解り…早くも悵恨するばかり、だ。



…むしろ甚だしい取違えが起こっているな。
これは火急に訂しておいた方が良いだろう…。

「…む、何だ…だから、だな?
そもそも日向に観得なければ……問題無い、だろう。
事実、存在していようがしていまいが奴には不可視……その真偽を観定める為術は無いのだからな…。」

……これ以上、具体表顕を避けての明徴は苦しいものがあるぞ、みょうじ。


その俺様が底意をも込め、摯実から僅かに寄る眉間のままに彼女を観遣れば、
顔に大きく描かれていた羞恥と憂心が徐々と崩れ、覗いた表情が動き出していく。

『……あっ!そうか、設定!設定なんだね、田中くん!!
わ、私…ちょっと勘違いしちゃってた、かも…ごめんね…。』

おず、とこちらを伺い、小さく、ごめんね、とまた詫びてくるを、
目線のみで容赦してやれば、ありがと、とにこっとはにかむみょうじ。



む…どうやら、理解したようだな…。



しかし、何だ……どうにも可愛いらしいな、貴様は……。

…やはり、何としてでも護り抜かねばならんな…。



『…うん、そっか、そうだよね、なら…私も普段からぱ……下着は履いてない、って設定にしちゃえばいいんだ…。
それで何か代わりになりそうな物をたくさん用意しておけば……。』

やや暫くぶつぶつと、作戦を巧じているらしい彼女を観護れば、
ふと顔が上がり、かちりと瞳が合う。


…と同時に、何やら慌てふためいては、

『あ、違うよ!?わ、私…本当は、ちゃんと履いてる、からね!?』

等と赤らんだ顔を伴い弁明してくるのだから…堪ったものでは、無い…。

「…ッッ!!……わ、解って、いる…。」

彼女に劣らず染まっていくをストールにてひたと隠しつつ、

『本当に、履いてるからっ!あくまでも設定、だからね!!』

彼女が切実な叫びのみを耳膜より聞入れる…。




……何故こうも、彼女は抜け落ちているのか。


そもそも、履いているものがあるからこそ、貴様は憂苦していたのではないか?
その前提が異なるならば、貴様の相談事自体変わってくるだろう…ッ!!


そう頭では想い至るも、未だに湯気昇る彼女とその言葉に、
頷き返してやる以外に…どうすれば良かったと、いうのだ……。



しかし…履いておらん、と宣言されるも…思惟してしまうものがある、が…

履いている、と宣言されるも…
何だ…また、その…来るところが、あるものだな……。


いや、前者は……様々な危慮の方が勝る、か…。






…。


……何でも無い、忘れろ。

即刻、忘れ去るが良いッ!!




…しばし俺様が新たに披き掛けた異次元が狭間を閉じ封じている間に、
みょうじは大分平静を取戻したらしい。

『…うん、だけどさっすが田中くん!やっぱり田中くんに相談してよかったよ!

あ、なにかお礼しなきゃだよね……。
えーっと、そうだ!お礼って程でもないけど…。』

残りの“希望のカケラ”、全部渡しておくね!

えいっ、と彼女が電子手帳を打つ音が、俺様達二人には聊か空闊なレストラン内に響き亘り、
俺様のそれが、確と受取ったが事を聴入れ映し観る。

「…む、何だ…ならば……俺様の分も遣ろう。
この俗世は何事も…等価交換だからな、忌憚無く受取るが良い。」

『え、いいの?嬉しい、ありがとう!これで私たち、コンプリートだね!』

…素直に貰受ける彼女と、コンプリートされたが電子手帳が報せに音に、ややと浸るは無論だろう。

そして…日向、あやつよりも先にコンプリートを果たせたは遠大だな…。


同じく電子手帳を眺め、それを確認したらしいみょうじが、また笑顔になるも心嬉しいものだ。





―その後、せっかくだから、という彼女が献言に乗り、そのまま暫く共に刻を過ごした。



『今日は遅くまでごめんね、田中くん。それじゃまた明日!』

「ああ、また…な。」

日を跨ぐ前にみょうじをコテージまで送り届け、また、と他愛の無い口約を結ぶ。



こうも明くる日が待遠しいと想えた事は無いな…。

しかし明日以降が正念場…だからな。
兎に角、明朝からは彼女が傍を離れんようにするとしよう。



―――



『田中くん、おはよう。』

昨日はありがとう、ちゃんと眠れた?

…他の人間共より先に彼女が隣を得るが為…常時より早くレストランを訪れていた訳だが、
まるで自然な事かのように、彼女が俺様の隣へと座して来る。


……昨宵まではこのような事等、類推も及ばなかったというのに、な。


「…む、みょうじ……お早うございます。
貴様こそ…大丈夫、なのか?」

明らかに、睡い、と書かれた顔を、軽くぱんぱんと叩いては、

『大丈夫!
でも…あの後代わりにあげられそうなもの準備してたから、すっかり寝不足だよー。』

ほら見て、この荷物!と紙袋を両手で抱え観せてくる。

…如何にも過重に荷詰まっているそれを、どこか誇らし気に。
そんな彼女も、その笑顔も…それはまた可愛らしく。



……可愛らしい…のだが…。



(…そうか。
貴様が昨宵、最後に想ったは…日向が事だったのか…。)



…彼女が隣に在るというに、その蟠る何か、を推量る己に厭気差すものだ。



しかし今この刻は…紛れも無く、彼女が択んだ結果なのだからな。
やはりその刻を興じる事に、一心するとしよう…。



―――



『田中くん、時間があったらでいいんだけど…この後、一緒にお散歩行かない?』

…というか…やっぱり日向くんと会っちゃった時、不安だし…
一緒に居てほしいんだけど…ダメ?


もう間も無くと、朝餐をまさに終えようという時分…彼女がそう願い出てくる。

喩い、その心許無気な表情が向く事が無かったとしても……俺様に断る由も無い。
むしろ、俺様から声掛けるはずだったのだからな。


そして彼女が言葉を宜うて通りに。
朝餐を終えたが後も彼女の傍に在れる事に、多少なり優越を憶える現下、だが…



―彼女が予期通り、この刻は奴の来襲にて大きく乱される事となる。


「みょうじ、田中、おはよう。
…あ、そういえば田中が1人じゃないなんて…珍しいな?」

『あっひ、日向くん、おはよう!』

…早速、引き攣り上がる笑顔を返す彼女。


これでは何を云い、仕出かすか…解ったものでは無いな…。
やはり俺様が傍に居てやるが必至だったと、真に想う。

彼女が様子は黙視するに留め、改めて怨敵の姿を瞳にて捉える。

「フン…俺様が誰と共に在ろうが、貴様には何の関係も無いだろう…!!」

ハッ!遂に現れたな、日向よ!
貴様が魂胆が何にしろ…俺様が邪眼が貴様を捕る限りは、貴様がみょうじの襯衣(下着)を手にする事等無いと思うが良いッ!!!


…かの口上は胸中にて轟かせておき、それとなく彼女と奴が間へと踏み入る。

「まぁそう言わず、俺も混ぜてくれないか?」

正直、俺様が居らん間にみょうじに接触されるが最も敬遠すべき事体だからな…。

「……フン、そこまで云うならば仕方無いな。
…みょうじ、俺様は構わんが?」

…もちろん、立会ってやる。
彼女にのみ聴こえるように、後声は僅かに落し、俺様が後方へと流して遣れば、

『……!うん、いいよ!』

ね、田中くん!と俺様へ投げられた彼女の声に、彼女が少し解れた事を気配取る。



――


ジャバウォック公園にて―。


やや暫くは問題も無く、只閑談するが刻を過ごしていたのだが…

「…ああ、もうこんな時間か。
昼食もあるし、そろそろ解散だな。」

そう云うや否や、奴が電子手帳を取り出し、“希望のカケラ”の授受を奏し始め、
彼女が辿々しいながらも、電子手帳を取り出し応えている。

「…よし、これでみょうじとはコンプリートだな。
じゃあ記念に『あ、そ、その事なんだけどね!!』

ガサ、と紙袋を抱え、彼女がそれだけは、と一等な声を張上げる。

『ごめん日向くん!わ、私その、ぱ……下着、履いて、なくて……っ。
…だから、別のものでも…いいかな!?』

ぶわっと、紅くなるみょうじとその告白が、虚言だと解りつつも…、



やはり、どうにも……来る…な。




……日向に向け、発せられているという事が、酷く忌々しくもあるが。

「え!?あ、ああ…そう、なのか…。それなら、仕方ない…よな?」

「…何故俺様に問うのだ…。が、……まぁ、そうだろう、な。」

至極当然、と云えば当然だが…狼狽しているらしい日向に、そう同意が言を渡して遣る。
…ここは彼女が為にも、そう促すしか無いしな。


しかしそう云えば、みょうじは代わりとして何を持参しているのか、問うておらんかったな…。


…そもそも、だ。
それが何であろうと…日向が、みょうじの私物を得るに変わりは無い。
その事を、俺様は黙って観護るしか無い、というのか…?



……いや、そんな事を想ったところで、どうも仕様の無い話、か。
それが此処俗世での理の一つであるかのように、どうやら彼女がそれを認許している。


そうと解りながらも、日向が彼女と肩を並ばせるも憎憎しく、

「そう、だよな…。
なら別のものでもいいか…なぁ、何があるんだ?みょうじ。」

『えっと、ね…普段使ってるものならシュシュとか…。
ど、どうしてもぱ…下着っぽい方がいいなら…キャミソールとか、水着、とかも、一応あるけど…。』

…耳過る、彼女が提した選択肢が可笑しいのだから、
貴様もそれは制止掛けるだろう!?


みょうじと日向が間へ完全と割入って、彼女へだけと声を下げ落とす。

「…おい、待て、みょうじ。
水を制する薄衣(水着)ならば良い、というのは…どういう了見なのだ?」

…正直、
襯衣(下着)と何も変わらんだろうがッ!!!
と、哮けてしまいたいが…そこは何とか、耐え抑する。

『えっ?…ん、えーと、なんだろう?生地とかも違うし…もともと、見せてもいいもの、だから…?』

「……俺様が問うているのは、そういう問題では無い。」

…少なくとも、俺様にとっては、問題はそこでは無い。



やはり…やはり、貴様は何も解っておらんのだな…。



ふぅ、と歎息を深く長く落としては、
くると彼女を背にし、奴へと向き直る。

「……日向、みょうじに等価品の持ち合わせは無い。
代わりに俺様の襯衣(下着)をくれてやる。
…だからそのまま立ち去るが良い。」

『田中くん…?』

背に降るみょうじの疑問を、左手を軽く挙げ制し、
右手は差し出してやるかのような手振りを付け、
ギリと奴を追い払うべく、視線は磨ぐ。

「え、等価品がないって…何で田中が知ってるんだ?
それに、田中のって言われても……何もないぞ?」

「フン…先に俺様はみょうじの紙袋が中身を訊いたからな。

それに、だ…俺様のは確とここに在るぞ?
フッ…アストラルレベルが低い貴様には視得んだけなのだからなッ!!」

俄然と瞳に力を込め云い放ってやるが、
得心が行かん、とばかりに表情を締める日向もなかなかに引かん。

「いやそうだとしても…そこは俺とみょうじが判断する事じゃないのか?
大体、アストラルレベル…だっけ?それは良いとしてもさ…田中のは、田中の時にくれよ。」

…ああ、最もだな。
俺様もそうなるのだろうと思っていた。


……まぁそれも、つい先程までの話、だ。

「フハッ…!!今この刻を以て!貴様と俺様の“希望のカケラ”がコンプリートする先等、永久に潰えたのだ…。
拠って、貴様が俺様の襯衣(下着)を手にするなら刻下のみ!!
有難く受け取っておくが良いッ!!」


全ては貴様が招いた事だ…。
そう、全ては貴様がみょうじに訳の解らん記念とやらを強い様としたが為ッ!!

これでどうにかと貴様を撃攘出来るならば、俺様と貴様の友愛等、廉き犠牲に過ぎんのだッ…!!!


「な、なぁ…さっきからなんなんだ?
もうコンプリートはしないとか、手に入れるなら今、とか…。
そもそもなんでお前がみょうじとの話に入って来るんだよ……。

ん?待てよ…。
…ああ!田中お前…もしかして…。」


む……?
日向の奴…何、を…?


「…何の、話だ…ッ!?」

「ああ、なるほどな…そうか、そうだったんだな。」

先までとは打ち変わり、突如として笑んでいく日向。
奴の様子の不可解さにそれを問うが…、

「…?何が云いたい…?」

「いや、なんか俺…田中の事、誤解してたのかもしれないな。
でも今日でよく解った気がするよ。そうだよな、田中も俺たちと同じ、普通の男子高生なんだよな…。」

ぐぉぉ、何だ!?何なのだ!?その生温い視線はッ!!!

「…なッ!だから、何の話なのだ!?何度も云っているだろう!?
俺様は貴様等人間如きとは異なるッ……ッ!?」

奴の言葉を裂きに掛かれば、ピピ、と不意の電子音に鼓膜を叩かれ、
何事かと観れば、コンプリート、の表示が厭に瞳を衝く明滅を繰返している。

「むッ…!?何故貴様の“希望のカケラ”が全て集まっているのだッ!?貴様の等…要らんッ!!」

「はは、まぁそう言うなって。
じゃあとりあえず、田中のだけもらっておく事にするよ。
みょうじ、またな!」

……と、頑張れよ、田中。



「……ッッ!!!」

去り際に奴が残したは、将に呪詛に等しい言葉と笑み…。


ま、さか…俺様の心内が、読まれたというのか…!?
クッ…俺様とした事がッ…!!




(……ッ痛も余計な世話だッ!!)


まだ可視下にある奴の背に、そう苛立ってしまうが、

『……なんか、よく解んないけど…行っちゃったね、日向くん。』

はぁーよかったぁ!
本当は不安だった、というか…やっぱり、あげるのはちょっと、って思うものもあったから…
田中くん、本当にありがとう。


…その彼女の笑顔と謝辞に、護れたが事を想えるだけ、まだ良い…か。

「む、…いや、気に、するな。」

『でも私、結局何もあげてないし、お礼もしたいから…田中くんに何かもらってほしいな。

…何がいい?』

再度変わらず過重を誇る紙袋を俺様へ向け、彼女が唐突に、徒に、無邪気暢気を窮めて問う。


「…ッ!な、に、が…良い、だと…ッ!?」


ッそ、んな事を俺様に、振るな!!
思わず…答え掛けたではないかッ…!!

…む、その何か、は…絶対に、云わんがな!!?


『?どれでもいいって事?だったら……。
あ、そうだ!…はい、田中くん、これどーぞ。』

はい、と笑顔の彼女から差し出されたそれを受取れば、…どうやら、腕輪のようだった。

『このバングルね、すごくデザインが気に入ったから色違いで2つ持ってるの。
だからお揃い!』

2人で危機を乗り越えた…友情の証だよ!

そう云い、左手首に着けたそれを、俺様へと掲げ観せる。


『私も着けるから…ちゃんと着けてね?』

ね、と微笑む彼女に倣うは、俺様とて折好い事だ。



だがそれは……恐らく、貴様の云う、友愛、を越えた証として…他の人間共は相思すると想う、が。


まぁ……彼女が歓んでいるのだからな、俺様がそれを説くのも色消なのかもしれん…。



…ああ、きっと、そうだろう。



むしろそうだと仮想された方が、俺様には恰も好いしな…。


ならば俺様からも少し……その仲合へと、敢闘するとするか。


彼女に手渡されたそれを右手首へと装着し、

「…解った。
だがみょうじ、俺様と友愛を契りたいのだろう?
ならば、左手を出せ。」

『左手?…はいっ。』

過荷の詰まった紙袋を、左手から右手へと持ち移し、素直に俺様へと左手を差し出す彼女。

彼女が手に俺様が右手を重ねたところで、
ぐっと平が全体で握り締め、勢い付けては、俺様へと引き寄せる。

『っわ、ぇ、…えっ!?』

重荷もあってか、大きくバランスを崩した彼女は、
俺様とほんの数cmまでと、その距離を詰める。

「……これで貴様は俺様の毒手に触れた訳だが…どうやら異状は無いようだな?
慶べ、友愛が契りは成功した。詰り貴様はその身に俺様が毒を保有し得る、特異点になったという事だ…。」

一度、彼女が手を更に強く握り引き、

「ああ、それと…俺様が左手を出せ、と云ったら…貴様は今後、直ぐにその手を空けろ、良いな?」


…手を引く、合図だからな。
憶えておけ、おなまえ。





そう落せば、驚嘆に充ちた表情で俺様を観仰ぐまま、かちりと固まる彼女。

その無防備な表情も、これまでに無い距離で観る彼女も、一層に可愛らしい。




しかし呼吸さえもしているか怪しい彼女が様子に、

…このまま、圧切ってしまえば、意外と有効なのではないか?と過り…

あくまでもそれらしく、と言葉を選る。

「…フッ、どうした?
朋友ならば…手位、繋ぐものだろう?」

どうだ?と問えば、

ぎぎ、と。
彼女がブリキの躯体になったかのようにぎこち無く顔を逸らし、

『…っ…!…そ、うかも、しれない…けど、それは、…。』

女の子同士、とか、の…場合、で……。


ごにょ、と頬に紅を添えながら、どうやら異議を唱えたいらしく…間誤付く彼女もまた可愛らしい。



弱々とした異議から背き、彼女の手を放さず握り取るままとすれば、
添うた紅が見事に彼女の肌に馴染み、朱に染まり上がるが一段と愛らしい。


その顔をもっと永く観ていたいものだと、心に想う。

「…何だ?よく…聴こえん、な…。


それよりも、だ。貸せ、重いだろう?」

拠って左手で、彼女の右手に優しく触れ包めば、

『…ひぁっっ!!?』

また一際と顔に朱が差さり、大きく瞳が開かれると同時に、
パッと彼女の右手が開き、俺様が左手へと重荷が引渡される。

「まずは貴様のコテージに、この荷を置きに行く。
…良いな?おなまえ。」


依然俺様に左手を囚われて、その手と俺様を交互に観、左右を伺っては、俺様へとまた視線が還る。


逃げ場も助けも無いぞ、と。
瞳を細め見詰めては、

『…ぅ、うん…。』

こくり、と小さく首を上下させる彼女に、
行くぞ、とまた手は離さぬ事を圧切って。



彼女がコテージまでの道程を、
あの明朗な彼女が、一語と発する事も無く。
目線を流せば、彼女が焦点を失い惑うも、明白で。



…これだけ、俺様を意識してくれているならば、と。

此先も、友愛から情愛へと圧切るに、敢闘する事を心に決めるのだ。








*****


…かなりしょうもないお話にも関わらず、長々と書き連ねてしまって大変申し訳ございません。。
もう土下座しかできない身体に改造されたい……凹。
あ、左右田くんに土下座ロボへの転生希望を出しておこう(真顔)

この度も最後までお付き合いくださいました皆々様、本当に有難うございます、そして何よりもごめんなさい(やっぱり土下座)

あー…あれです、俺様とか関係なしに、井澤は田中くんにパンツ履いてて欲しかったので…譲らずで大変失礼致しました。。。
多分こちら、履いてるかどうかって…重要なところですよね……ぐぉぉぉ(吐血)
今回は俺様云々よりそこら辺の懺悔大会が別項にて開催される事になりますかと思われます…。


そんな井澤の現実逃避は置きまして、、もうクレームどしどし送って頂けましたら幸いです(死んだ目)

改めまして…最後までのお読み頂きまして、本当に有難うございました!!(謝謝!)


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