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幻想
約束は大事なものなんです。(スーダン・田中眼蛇夢)
※題名からバレバレですが、名前は大事なものなんです、の続きです。同じ主人公ちゃんです。

※大事な物が名前→約束へとシフトチェンジ。

※これまたちょっと長いです。あとちょっと下品??かなぁ…解らない方には解らない、かもで申し訳ないです凹。





*****



レストランへの道すがら、眼蛇夢くんと色々なお話ができた。
短い間だったけど、楽しい時間で。

レストラン前の階段で、気付けば繋がれたままだった手が、すっと離される。

「その…なんだ、失念していただけだ、…他意は、ない。」

また顔を赤くして、こちらを見ないで眼蛇夢くんは言う。

他意、が何を指すのかはよく解らなかったけど、私も勢いでそのままにしていたのを思い出して、少し気持ちは解る気がした。
…そして、今更ちょっと恥ずかしい。

『あ、大丈夫だよ!なんかこう…自然っていうか…私も忘れちゃってたし!』

眼蛇夢くんの言葉を待たず、だから早くご飯行こう!と階段に足を進める。
そして転ぶなよ、と言って眼蛇夢くんも階段を上り始め、いつも通りに戻っていく。




『今日は多分エビフライだよ!』

だって輝々が約束してくれたから!
と言えば、

「む…それは夕食ではないのか…?」

『んー確かに徹夜明けに近いお昼には、ちょっと重いかも。』


そんな雑談をしながら、二人並んでレストランに入ると、なんだか妙に騒がしい。






…レストランに入る前に手は離していたものの、実はその姿を見ていたらしい唯吹ちゃんが、一足先にレストランで騒いでいたのだ。


『た、大変っすー!!!大変過ぎるっす!!!!おなまえちゃんが!眼蛇夢ちゃんが!!
お手々繋いで一緒のコテージからこんにちはなんすよーっ!!!』


まだ人はまばらなレストランだったけれども、最も聞かれたらめんどくさい人物は居る訳で。


「えっ!?それは興味深いなぁ!!
やっぱりあの後、みょうじさんは田中くんに手取り足取り躾けてもらったんだね!!!!」

よく解んない事を言ってる輝々は、よく解んないけどやっぱりめんどくさい。

「そりゃそうだよねっ!だって窓も全部施錠してあってカーテンも閉まってたし!!!
それはもうアレしかないよね!!!」

その言葉に、花村貴様ァァ!!!何を確認しに来ているっ!!!!と、輝々の元にズンズン進み、全開で怒り始める眼蛇夢くん。

「あ、田中くん!やや?みょうじさんも本当に一緒なんだね!!良いなぁ、良いなぁ!!
ねぇ、何があったんだい?ナニかな?やっぱりナニなのかな!?
あ、どうせ教えてくれるなら、ぼくに手取り足取り教えてくれても良いんだよ!?」

急に迫る輝々に、寄るなっ!この下種がっ!!!と強気に言い放ちながらも、若干たじろぐ眼蛇夢くん。


その様子に見兼ねて、つい口を挟んでしまった。

「ねぇ、輝々が何を言ってるのかよく解んないけど…多分違うと思うよ?手取り足取りっていうか…筆取り、だよね?」



「「なっ!!??」」



また空気がピシっ!という。
眼蛇夢くんまで固まっている。

昨日とは違って、今日は私の発言が原因みたいだけど…なんか今日はよく解んない日だなぁ、とぼんやり思う。



そして、はっ!と我に返ったらしい眼蛇夢くんが、それはもう、覇王気たっぷりに怒鳴ってきた。

「…おなまえ!貴様っ余計な事を!!
いや、紛らわしい事を言うな!!貴様はもう何も言うな、黙れ!!!」

ひ、と怯んで絶句する私と対照的に、更にざわつくレストラン…。
そして少し、しまった、という顔をする眼蛇夢くん。



「…やっぱりそうだったんだね!!みょうじさんがそう言うって事が…その否定が、まさに真実を物語ってるよね!!!」

鼻血を出して盛り上がる輝々に

「…そんな、マジかよ…今田中、みょうじの事名前で呼んだよなぁ?
みょうじまでなんかそれっぽい事言ってるしよぉ…ちきしょぉ。」

何故か涙ぐむ和一くん。

『んー…やっぱり一晩一緒だったって事っすかねー?
お手々繋いで歩くくらいっすからねー。唯吹も怪しいって思ってたんすよ!!』

なんとなく誇らしげに言う唯吹ちゃんに

『えっ!?ちょっと…おなまえちゃん、それ本当なの?大丈夫!?と、とりあえず早く田中から離れて、こっちおいで!!!』

なんだか慌てる真昼ちゃんに

『えー…まさかとは思ってたけどぉー…本当にやるとか田中おにぃってマジで人間のクズだったんだねー。
あ、人間じゃないんだっけ?じゃーただのクズだねー大勢に踏まれても仕方ないゴミ屑だよねー!!』

眼蛇夢くんを罵る日寄子ちゃん。



状況に付いていけない私は、ただ眼蛇夢くんが肩を震わせて怒っている様子をおろおろと見ているだけで。


「…貴様達ァァア!!!俺様を本気で怒らせた事を、もはやこの世に生を受けた事さえも!!後悔させてくれるわッッ!!!!」


数秒後に爆発した眼蛇夢くん。
バッと開かれた両手から、四方に放たれる四天王。

そして四天王を中心とした乱闘も、私はただ見守る事しかできなかった…。



(…私、何言っちゃったんだろう…。)



数分後、傷だらけになった皆(主に輝々と和一くん、女の子は髪型が乱れてる位かな…)は大人しくなり、レストランがすっかり静かになる。

遣り切った表情で帰還する四天王を迎え入れる眼蛇夢くんが、事実を掻い摘んで説明していた。

結構…掻い摘まれてた、けど。


それでも誤解が解けるまでには時間が掛かり…。


なんだか可笑しなテンションの輝々には可笑しな事をたくさん言われ、その度に眼蛇夢くんが成敗。

心配してくれているらしい真昼ちゃん達に質問攻めにされ、何度も『本当に、漢字の書き取りさせられてただけだよ!』そう説明する。


…なんとなく、名前を書かされた、とは言えなくて、私も眼蛇夢くんに倣って説明しているのだけれども…。


ただなんとなく、皆が思ってる事とは違うという事は解ってくれたらしく、なんとかその日の内で事態は収まりがついた。
眼蛇夢くんはなんだか凄く、疲れていたみたいだったけれど…。



でもその日以降、どうにも皆の態度が変わったのは事実なのです。



私は努力しなくても、皆が勝手に眼蛇夢くんと同じ採集場所にしてくれるし、隣の席を空けてくれたり、隣同士で用意してくれたりするので、隣に行かなきゃ!という事がほとんど無くなって…。

隣になるのは素直に嬉しいし、その厚意も嬉しかったので、特に何も考えないでお礼を言う。
…その時に、皆が変に笑顔なのが、ちょっと気にはなるんだけど…。






そして数日も経てば、誰もその日の事を言及する事はなくなって、すっかりほとぼりも冷めた頃合。


実は気になっていた事を、思い切って眼蛇夢くんに聞いてみました。

『ねぇ、眼蛇夢くん…例の試練の日の翌日の話なんだけど…私が輝々に筆取り、って言った時、なんであんなに怒ったの?』

あれより怒らせてしまった事はないのだけど、原因が解らないから、また怒らせてしまうかもしれない。

そう思って聞いてみたけれど、眼蛇夢くんは頑として答えてくれなかった。


しつこく聞けば、いい加減にしろ!と顔を真っ赤にして怒られてしまうから、
別の誰かに聞こう!と思ったものの、立ち上がる事までも眼蛇夢くんに阻止される徹底ぶり。


「…とりあえず今後も絶対に言うな、他の人間共に問うのも止めろ、良いな!?」

そう強く、念を押されてしまう…。

仕方なく、解った、と頷いて、この話はタブーなんだなーと、そっと胸に仕舞うのです。



原因解明に失敗して、解りやすく落胆する私に、溜息が落とされる。


「…フン、いずれ…嫌でも教えてやる。が、今はその時ではないのだ…今はまだ…支障があるのだ、色々と、色々とな。」


眼蛇夢くんの話は、いずれとか、先の話が多いなぁ、と思ったけれど、なんだかんだで教えてくれる眼蛇夢くんは優しいな!と単純に喜んでしまう。


『うん、解った、約束だよ!』

と小指を差し出せば、急に不敵な笑みを見せる眼蛇夢くん。

「…良いのか?約束等して…後悔する事になるのは貴様の方かもしれんぞ?」

『え?』

何で?、と言う暇もなく、勢い良く絡められた彼の小指に、身体毎引っ張られてしまう。


ぐら、と視界が回って。
眼蛇夢くんの胸へ飛び込んでいくのが、なんだか酷くスローモーションのように見える。

ぶつかるギリギリで、肩をしっかり掴まれたと解る頃には、すっかり彼の腕の中に収まっていた。


(…あったかいな…。)


事態を把握できていない私の頭は、そんな事を思う。
情報処理もスローモーションになっていた私の脳が、現状認識するまで約3秒。


(……あれ?)

わ、わわわ、と手をばたつかせたところで位置は少しも変わらない。

『あのっ眼蛇夢くんっ…!?』

どうしたの!?と見上げれば、すぐ近くにある彼の顔。

『わ、わわ…。』

とっさに下を向いてしまう。
近い!!!と心の中で絶叫すれば、鼓動が早くなるばかりで。


「…フン、どうした?そんな程度では逃れられんぞ?」

まぁ逃す気もないがな、そう言う声も耳元近くで困るばかりで…。
不敵に笑い続ける彼の表情はもう見られない。



鼓動の煩さにも状況にもパニックになる私は、ただ借りてきた猫のように大人しく、ただ俯いて眼蛇夢くんに身体を預けるしかなくなってしまう。


思わず目を瞑って、なんとか眼蛇夢くんの顔は見まいとする。

(今見たら…なんか、死ぬ。死んじゃう!!)

そんな馬鹿な事を思ったので、まだできる最後の抵抗を必死にしているのだ。



どれ位の時間が経ったのかは解らないけれど、逃げようと無駄な抵抗をしなくなった私に、眼蛇夢くんが少し腕の力を強める。


なんで抵抗してないのに、もっと強くするんだろう?


的外れな事を考えてる私の頭は、この状況を逃れる方法も、逃げる事自体も、もう考える余裕がないのだ。
なにかで気を紛らわせていないと、どうにかなってしまいそうだから、極力無関係な事を考えるようにフル回転していく。


…それでも眼蛇夢くんの事ばかり考えてしまって、どうにもならなくなってしまって、ますます困る。



「…おなまえ。」



ふいに耳元でする、彼の声。
名前を、呼ばれている。

なんだかんだで眼蛇夢くんの事で頭が一杯になってしまっている私は、びくっと大きく反応してしまう。



「…約束が、途中だったな。続きをするぞ。」


その言葉に、そうだった、と少しだけ目を開けると、もう月が出ているだけなのに、やけに眩しい。

う、と思いながらも目を開けようと苦戦すれば、顎を掴まれる感覚。

『ひゃっ!?』

間抜けな声と共に、驚いて目も開いてしまって…。


一斉に入る光に目が慣れ、同時に飛び込んでくるのは目一杯に眼蛇夢くんの顔。

なんだか真剣な顔で、一瞬見入ってしまう。


でも、さっきの比じゃなく、、、近い。
息遣いまでが聞こえる距離…。


それに気付いて、私がまた目を閉じるよりも早く、


「…いずれ、その時が来た時には、貴様に教えてやろう。誓って、な。」

いつもより少し低い声で、約束が交わされる。

振動で揺れる鼓膜が、言葉を反芻するのが解る。


(誓う……眼蛇夢くんにしては、珍しい言い回しだな…。)

再度目を固く閉じるタイミングを見失った私は、また自分を落ち着かせる為に、ズレた事を考えるのだ。



そう考えた瞬間に、視界から彼の顔が消える。

正確には、見えなくなっただけで。



全てに置いてかれている私が、

冷えた唇に、じんわりと熱が広がる事を感じるのは、

その熱が彼の唇である事を知るのは、

ちゅ、と軽く音を立てて、その熱が去り、

「…確かに約束した。違えるなよ、おなまえ。」

少し濡れた唇を舌で浚い、彼がそう言い残した後だった。









(……い、今のって…、今のって……もしかしてキ、、、キ…うわああああああああああああああ///)



その後しばらくの記憶が、一切ありません。


「…おい、おなまえ?…大丈夫か?
…この程度で意識を飛ばしていては…約束等、いつになるか分からんぞ?」


だから、しばらく固まったままの私に、眼蛇夢くんがそっと溜息を吐いていた事なんて、私には知る由もなく…。

正直、もう約束どころではない私が、現実に戻って暴れるまでは、まだ時間が要るのでした。










*****




田中くんです、2作目。続き。
もう、幸せにやれよ!って感じです。

なんかこー…甘いっすね、気持ち悪いですね(どうした)
ノイトラ様を差し置いて、のB(だっけ?)ですよ…田中くん恐ろしい子!(またか)

とりあえずこの二人は完結かなーな空気で終ってますね。
続き読みたい方が万が一いらっしゃったら考えます!!


個人的に田中君の俺様一人称大好きなので、これだけはずっと通して頂きました。
慌てても、何しても、そこだけは譲らないでほしい(やめろ)

拘りはそこ、あと攻める時は攻める、余裕、照れない、俺様の基本ですね(どこの理屈だ)


前作に続きこちらまで読んでくださった方々、こちらだけ読んでくださった方々、本当に長々とお付き合い有難うございました!
良ければ感想とか罵詈雑言とか、お待ちしています!笑顔。

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