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幻想
蛙、愛づる姫と…覇王、様?(スーダン・田中眼蛇夢)
※お相手は田中くんです。ハイパーギャグい気が致します…ごめんなさい(めり込み土下座)
でもギャグいのに、甘い…かな?なんかもう申し訳ないです…。

※主人公ちゃんがだいぶ不思議ちゃん(?)な上、田中くんもなんだか…残念、というか…腹黒い、かも…ですよ…。

※かえるさん、という単語がたくさん出てきます。かえるの種類もたくさん出てきます。
ですがリアルなかえるさんの描写はほとんどございませんので、そこだけはご安心くださいませ…。

※井澤の趣味まっしぐらで本当に申し訳ございません(土下座×土下座)
かえるさん、の単語だけでももうムリだ…という方は、是非ぷりーずばっくでお願い申し上げます。(陳謝)

※主人公ちゃん設定はかえる好き、以上です(それは解ってる)
それでも大丈夫、というご寛大な方々が、いらっしゃいましたら…お付き合い頂けますと嬉しい限りです…。


*****



こんにちは、私の名前はみょうじおなまえ。

そしてこっちは、相棒の、アメフクラガエルの福豆。

普段は私のフードの中でゴロゴロしています。


この相棒と一緒に、いつの間にか修学旅行まで来ちゃいました。



…そう、お察しの通り、福豆はいつも私と一緒に居て。
たまにフードから出てきてよじよじと、肩に乗ってきたりもして。



『…田中くん…あなたは…完全に、私と!


キャラが被っています…!!』


初めて会った時、ビシっ!(キリッ)と言い放ったのは忘れません。


「なッ!?…何を、言っているのだ貴様は!
むしろ被っているのは…完全に貴様の方だろうッッ!?」

いや、そもそも、キャラ等という一語で俺様を括るな!!

と、覇王様全開で言ってきた田中くんと、
やんやと言い合いをしたのも記憶に新しいものです。


『えー、でも…言葉使いとか、設定とか…田中くんの方が、よっぽどキャラなんじゃないかな…。』

ね、福豆?

と同意を求めれば、ゲコ、と返してくれる福豆。
…うん、いい子っ!


「…むッ!?貴様…斯様な魔女が手先とも成り得る魔蛙を使役しているのか…。」

…こっちも、むっ!です!!
なんと福豆が悪口を言われています!
田中くんの睨むような顔にも、福豆が怖がってるじゃありませんか!

『福豆は魔女の手先なんかじゃないよ!』

これは、早速抗議です!

…でも。

「…アメフクラガエルか、なかなか稀有だな…。」

私の抗議自体は少しも気に掛けず、
福豆をじーっと見て言う田中くん…。



って、え…?

ま、まさか…!!


『…アメフクラガエル、知ってるの…?

すごいっ!見ただけで名前まで解るなんて!
そもそも知ってる人に会ったの、初めてだよ!!』

そう一気にはしゃいでしまって。

「ハッ!…貴様、俺様を誰と心得ているのだ?
我が名は制圧せし氷の覇王にして、超高校級の飼育員としても恐れ戦かれる田中眼蛇夢だぞ!?

貴様如きが使役出来得る魔蛙の名を言当てる事等…造作も無いわ…。」

それはそれは不遜な覇王様にも、なんだか感心してしまって、

『…超高校級の飼育員、田中眼蛇夢…恐るべしッ…!!』

彼のノリに合わせて答えれば、

「フハッ!まぁ解れば良いわッ…!!」

フハハハハ!と、とっても上機嫌になられまして。

だから私も一緒に、ふははー!と笑ってみたりしてしまいます。



そして一頻り笑い終えたと思ったら、
ちょっと引き締まった顔をする田中くん


「…時に、みょうじ。

何だ…その…。」

と、思ったら、目線が行ったり来たり。
どうしたんですか!?覇王様!!

『…??』

私も若干おろっとなりながら、彼を見返していれば、

「…だからだな、その…。

福豆、と言ったか…?

…その、魔蛙をだな…。」



…触らせて、ください。


小声で、ぼそりと、そんなお願いが聞こえました。


っなんだ、そんな事ですか!!


『…んー…そこまで言われては、仕方がありませんね!
じゃあ私も、四天王ちゃん達触らせてくださいっ!』

そう福豆を手の平に乗せて差し出しながら、
交換条件提示です。

「む、そう、だな…嘆願するならば、許可してやろう。」

先に頼んできたのは田中くんなのに…
まさか上からお許し頂く事になろうとは…!!


…なんて衝撃的に思っても。
ついさっきまでの一触即発な雰囲気もどこへやら、で。


渡された四天王ちゃん達を撫でていれば、
それはそれはもう、ほっこり心が和んで。

…福豆を優しく見詰めて撫でている田中くんを見れば、それも和んでいくような光景で。


すっかり動物達を通じて仲良くなれたのが、この修学旅行最初の思い出です。


―――


あれから田中くんとは採集で一緒になっても楽しいし、四天王ちゃん達は可愛いし、ちょっと懐いてくれたりして幸せだし。

福豆が調子悪そうな時は診てもらったり、おやつやご飯について議論してみたり。


そんなこんなで、

一番、相容れないのでは…!!

と危惧していた田中くんとも、結構仲良しになれたような気がして。

修学旅行は順調な滑り出し。
毎日楽しく、常夏を満喫中です。



そして今日は…太陽サンサンお休みです!

いくら超高校級でも、世の高校生達同様に、お休みは嬉しいものなのですよ!


待ちに待ったとも言えるこの日、

…なのに、特に予定もありません。
なんという、事でしょうか…。


だから、まずは福豆とお散歩でもしよう!、とコテージを飛び出してみたところです。

とりあえず、誰かに会ったら、声でも掛けてみようかな。





…そう思いながら、何気なーくのお散歩で。

いつの間にか、牧場の近くまでやってきました。



(はっ…!この気配、は…!!)

なんて、何かを感じ取ったフリをしてみれば、
やっぱり田中くんの姿が見えるではありませんか!


うんっ牧場の中まで入らなくても、しっかり誰だか解るな、田中くんは!

流石に田中くんを、というか…男子を誘うのはどうかとも思うけど…
せっかくだし、挨拶位はしておこうかな?

私に見えてる、って事は、田中くんにも見えてるかもしれないし。
気付かないならまだしも、無視はよろしくないですよね!
らーぶらーぶ、だもんね!ウサミ先生!


ちょっとだけ、足取り軽めに歩み寄って。
手を軽く挙げながら、挨拶をすれば

『田中くん、おはよっ。』

どうやらご飯もあげ終えて、お戯れタイム中らしい田中くんが振り返ってくれます。

「…む?みょうじか…。
フン、この俺様の結界内にこうも苦も無く侵入するとは…なかなかのものだな、褒めてやろう。
…お早うございます。」

結界、張られてました…気付きませんでした…。
じゃなくて、

『ほんと?じゃあ私は結構魔力強い方なんだね。
えへー、なんだかちょっと嬉しいな!』

田中くんのこういうお話は、最初から嫌いじゃないというか、面白いというか…
たくさん話してくれるのは普通に嬉しかったりもして。

そういえば、結界に侵入しても怒られないんだなー。
とも思ったりもしながら、素直に褒められる事に喜んだり。

「ハッ!あくまでも人間共の範疇での事だがな…。
俺様に比べれば貴様の魔力値等、魔虫以下にも満たんのだからなッ!」

でも、フハッ!と、尊大に、一蹴されてしまいました。


それにしても…
褒められたと思ったら、魔虫以下まで下げられてしまうとは…!

魔虫がどんなのかは解らないけど…絶対に、絶対に、可愛くないと思う…。

虫みたい、と言われた訳じゃないけれど…どうせ並ぶなら、もうちょっと可愛い動物にして頂きたいです、田中くん。

『そっかー虫以下かー…。
でも、虫は可愛くなさそうだから、やっぱり両生類に進化したいなぁ。』

かえるさん、と手で作ってみせて、口の部分をパクパクと動かして。

『…どうか、かえるさんに、してください、です。』

と、腹話術もどき。

「む…ま、まぁ…あれは遣い魔程度にしか成り得んからな…貴様がそこまで懇願するならば、昇格してやらん、事も、無い…。」

と、少しストール越しの声で聞き取りにくかったけど…昇格されました!

『やったゲコー。』

そしてまたパクパク。

「…フン、貴様の身の丈には有り余る事だ…光栄に思うが良い…。」

有難き幸せーっと、更にパクパクしていれば、
田中くんがキッとこちらを見てくるではありませんか。


「…それと…みょうじ、その組み方だが…誤っている。
魔蛙ならば、こうだ。」

と、田中くんが大きな手でかえるさんを作ってくれる。

『わぁ!すごい!!田中くんが作ると、ウシガエルさんそのものみたいだね!』

それはそれは立派なかえるさんだったので、すっかり嬉しくなってしまって、
これはいいかえるさんですな!
と、かえるさん品評会の開催です。

うんうん、私では作れない、本当に凛々しいかえるさん…素晴らしい出来ですな。


うむうむ、と満足気な私を見て、

「む、そう…か。

…魔蛙に限らず…他の魔獣共も、出来るが…。
…造って、やろうか…?」

かえるさん手のまま、田中くんが、ぽそ、と言う。

『…ほんと!?うん、観たい!!観たいです!!』

と身を乗り出して答えれば、

「…フン、そこまで言うなら仕方が無いな…。
俺様が手魔術、とくと観るが良いわッ!!」


そう一気に嬉々とした様子になられまして。
田中くんの手魔獣劇場が始まりました。



かにさんやわんこ等定番のものから…
果たしてどうなっているのかさっぱりな高度な動物まで…

なんて完成度、なの…!?




流れるように組まれていく数々の動物達…。

こ、これは…もう、幼稚園とか、回るといいよ!田中くん!!


『すごいっ!すごいしか、言えない位、すごい!!』

それはそれは興奮しました!
私的には、アリクイさんが一番、かな!(どうやって作ってるのかは、全然解らなかったよ!)

「フハッ!まぁ貴様ではこの俺様の次元に追い付かんのも無理も無い話だ…。
この数々の技を得る為に、それ相応の刻を要してもいるしな…。」

すごく、練習したんだね…やっぱり!
でも尊敬するよ、田中くん!!

私の大興奮につられて、肩へと出てきた福豆と一緒に

『うんっ!本当にすごかった!!また見せてね!!』

そうにっこり笑顔で言ってみれば、

「……あ、あぁ、気が…向けば、な…。」

なんでか目線を逸らされて、芳しくないお返事…。
む、私の熱意が…足りないのかもしれません…!!


――


だからしばらくは、手魔獣劇場の感想を熱く語っていたのだけど…
私は重大な事に気付いてしまいました。


『あ、そうだ、田中先生っ!
私まだ、かえるさんが、うまく作れません!』

教えてくださいっ!!

と、再度かえるさん手でズイっとお願いしてみます。


「む…そうだったな。まぁ、そこまで乞うならば教授してやろう。
…魔蛙は…まずは、ここを組むのだ。」

そしてまた大きな手で、一緒にかえるさんを造りながら教えてくれる田中くん。

『えっと…こう、ですかね?』

彼の手を見ながら、一生懸命組んでみます。

「…ああ、そこはそれで良い。

次だが…。」


ふむふむ、とよく見ながら、更にかえるさんを組んでいきます。

福豆にも見守られながら、最後まで組んで…



…あれ?



『…田中先生、なんだか先生のと…違います…。』

なぜでしょう?と手を差し出して見せてみれば、

「…手順は合っていただろう、何故そうなるのだ?」

…カッと開かれる両目から推測するにも…
大層、お怒りです…。

『えっと…ごめんなさい…。』

しゅんと、項垂れれば、福豆もゲコっと項垂れて。


おかしいな、とまた組んでみようとするけれど、
それすらも覚束無い私を見兼ねたように、溜息が一つ。

「…フン、本当に貴様は仕様の無い奴だな…。
…みょうじ、もう一度、だ。」

…よく、観ているが良い。

と、また大きな手が差し出されて、かえるさんが造られていく。

私も慌てて、一緒に組んでいって…


よし、これで、最後。






…うん、やっぱり…違う、な…。



「…。」

『…。』



ごめんなさい、ゲコ。



ちょっと未完成なかえるさん手で、腹話術で謝って。
場の空気を和ませ…



「…。」



…られませんでしたっ!涙。


私の未完成かえるさんを、未だに睨むような田中くん…。

う…流石に、怖いっ。

『え、えっと、ごめん…ね?
せっかく教えてくれてるのに…本当に、私、ダメだね。』

ごめんね、と、かえるさん手を解くのも忘れて、繰り返してみるけれど、

「…。」

どうしてか、反応は無くて。
視線は私の手に、落ちるばかりで。



これは…、本当に…嫌われ、ましたか、ね…?



…そう、思ってしまって。
急に、怖く…なる。


『た、田中くん!
…あの、ね…?私、本当に、ふざけてる訳じゃなくて、ね…なんか、不器用…なのかな…?
ほんとに…ごめん、なさい…。』

ごめんなさい、と更にまた続ければ、なんだか視界が滲んでいくから、
彼をどんどん見れなくなって、もう表情も…解らない。

それでも、沈黙と、刺さる視線が、どこか、辛い。





…ああ、許してもらえないんだな。

そう涙が円を描き始めた、その時に。


フッと、また、溜息のような音が落ちてきて。

ぽん、と頭に…手が置かれる。

…手?


「…解っている。
…貴様は、本当に…仕様が無いな。」

驚いて顔を上げれてみれば、
田中くんは…なんで、かな…微笑って、て。


…どうして?

そう、言えたかどうかも解らない内に、
彼に両手を取られてしまう。


「…全く、貴様は…どこまで世話が焼けるのだ。
…よく、憶えておけ。」

そう声を発する間も、私の手を組んでいく田中くん…。



(あ…れ?

なんで、私…手……。

…その前に、田中くんって…触っちゃダメ、なんじゃ…なかった、っけ…?)


あ、れれ…?

と思考がフリーズしている間に、
みるみるとかえるさんが出来上がっていくのを、ただ眺めて。



「…出来た、ぞ。」

その声が届けば、離されていく両手。


…離れた瞬間に、
今まで掴まれていた事を、実感してしまったり…。


…その実感はなんとか置いておいて…。

自分の手をまじまじと見てみれば、

『…わ、かえるさん、だ…。』

他人事みたいに…呟いてしまう。


うーん、全部やってもらったから、なんだかしっくり、来ないのかな…?



…でも、うん、可愛い。

『えへへ、かえるさんだ、ありがとう、田中くん。』

福豆が上に乗れば、親子みたいなかえる手になって、
そのまま更に、ありがとうゲコ、と笑いかける。

「…礼は、良い…。
先までの貴様の魔蛙が、あまりにも無様で見るに耐えんかったからだ…。」

ストールをまた掴み上げながら、完全に視線を外されちゃったけど…
怒ってないみたいだから、もうそれだけでいいかな。


『…えへへ、良かった。
私、田中くんが本当に怒ってるのかと思って…すごく、焦っちゃった。』

良かったゲコーと、またかえるさん腹話術。
すっかり緩んで喜べば、またもや溜息、です。

「…その程度の事で俺様が憤慨する訳が無いだろう。
貴様が要領を得ん事位、俺様には解り切った事だしな。」

そうフッと、笑われて。


とりあえず…怒ってないんだ!
そっか、安心しました!




…まずはそう、単純に思った訳なんですが、
さりげなく、ダメな奴って…言われて、ませんか?


『…ん?あれ?
私…やっぱり、出来ない子だと…思われて、る?』

んん?とハテナマークを飛ばしてみれば、

「まぁ…否定は、出来ん…ところだな。」

なんだか、頭勝に、また笑われて。


…やっぱり、そうなんですね…!!



っもう!怒りますよ!!


と流石に両手がまだかえるさん手のままな事も忘れて、
全力でプンスカしようと思ったのですが、

なかなかどうしてでしょう。
両手が、かえるさんのまま、離れません。



『…あ、れ…?』

ぐ、と頑張ってみるけれど、まだまだガッチリ離れません。
そういえば、組み方が解らないので、外し方も、よく解りません。

力を入れ過ぎちゃうと痛くもなるし…
これは困ったさんですなぁ…。



でも、このまま、という訳にも行きませんですからね。

という事で、
私がぐぬーっと、かえるさん手と格闘しているものだから、

「…どうした?」

田中くんから声が掛けられました。

『…田中先生、両手が…離れません。』

ほら、ね?と、必死で先生に訴えてみれば、

「…ハッ!みょうじよ…今頃気付いたのか…。」

クツと、さも可笑しそうな覇王様…。

『…え?えっ?』

さっぱりな私がまだまだかえるさん手で狼狽えていれば、
たっぷり含んで、田中くんが続けます。


「…フン、先の接触を介して、貴様の身体には俺様の毒が廻っているのだ…。
それこそその代償に他ならん…呪い、と言っても良いかもしれんな…。」


早くも置いてかれ気味な私をバッと見て、
なんだか悦に入り気味な覇王様のお言葉は、まだまだ続いていきます…。


「…拠って貴様は現今、一生を魔蛙として送る呪いを受けておるのだッ!!
刻下はまだその両腕のみで済んでいるだろうが…やがて毒は全身を廻り、貴様の存在そのものを魔蛙と為すかもしれんな…。

…フハッ!俺様の手を煩わせたのだ、その報いをとくとその身に受けるが良いッ!!」

フハハハハッ!!
と盛大に笑っていらっしゃる覇王様。



…うん、とりあえず、状況は、解りました。

私は今…彼の中では、全身がかえるさんになる呪いを受けている設定ですッ…!!


『な、全身が…かえる…さん、だなんて…。』



なんて…なんて…



…可愛いの!!!


やっぱりヤドクかな?
ヤドクの赤×青が良いかな??

どうせだから、アカメアマガエルとかにしちゃう?
わ、人気者だね、私!!

でもせっかくだから…福豆と一緒に、アメフクラガエルになろうかな!?


「…おい…。

…おい、みょうじ…!」


あ。

すっかりかえるさんになった時の姿の妄想に没頭して、
田中くんを現実に置いていってしまいました…。

『あ、えっと、ごめんね、かえるさんならなってもいいかなーって思って…姿を考えてしまいました。』

えへへ、としていれば、
いつの間に彼の肩へと移ったのか、

「…福豆、貴様の主は…どうして、ああなのだ…?」

ゲコゲコ、と福豆と田中くんが、なんだか内緒話をしているではないですか…。


む、私の福豆ですよ!
ていうか、福豆ったらいつから田中くんの味方に!?



…地味にショックを受けていれば、
なぜでしょうか、田中くんと福豆が、こっちをキリッと見てきます。


「…みょうじ、貴様は可愛い等と言っているが…

このまま、本当に…魔蛙が姿で、良いのか…?」

ニヤリ、という擬音まで聞こえてきそうな彼の笑み。


…なんだか、そんな風に脅されると…

呪いも何も無いはずなのに、どこか現実味が出るというか…不安になる、というか…。
確かに今も…両手は全然離れないし、ちょっと…困る、ような…気も、してきます…。

『ん、んー…福豆と、遊べたら…楽しそうだけど、いきなり、かえるさんライフは…不安、かも…。』

かえるさん手を見ながら、うーん、と悩んでみれば、
覇王様から、怒涛の口撃。


「…帰島しての晩餐も、食せなくなるな…。」

は、花村くんの…ご飯っ!

「…その手では、我が破壊神暗黒四天王にも…触れられんな?」

し…四天王ちゃん、達っ…!!

「…ましてや、福豆にすら触れられんのだぞ?」

ふっ!福豆っ…!!!

「…もちろん、俺様にも、な。」

たっ…たな…



…え?田中くん?



「…拠って、俺様はそれでは困る訳だが…

貴様、本当に…人間へと還るつもりはないのか?」


…なんだかさらっと、あっさり、色々…言われているような気がするのですが…
私を見る覇王様の顔が、思いの外に真剣なので、どうにも突っ込めません…。


『…えーっと…はい…。
戻れるなら、戻りたい、かな…と、思います…。』

かえるさん手で、なんだか締まらないな…。
なんて、すでに頭の中ではよく解らない事ばかりを考えているのだけれど…。


「…そうか、ならば…呪いを解かねばならんな。

魔蛙の呪いならば…みょうじ、貴様の方が、通じるところがあるのではないか?」

『…えっ?』

突然彼に、
呪いを解く方法を探せ、
と振られてしまう。


…なんでそこで、私に…?

だって、これ…田中くんの、毒の呪い…だよね?
私が…解る、訳……



あ…、魔蛙…かえるさんの、呪い…

…人間に、戻る…。



『…かえるの、王子…様?』

ぽつ、と声に出せば、

「…何だ?」

聞こえなかったみたいで、少し、距離が詰まる。


『かえるの、王子様…だよね?』

かえるにされちゃった王子様が、お姫様に、人間に戻してもらう為に頑張る、そのお話。

ね、と自信を持って、笑い掛ければ、

「…ああ、その童話ならば…俺様も、耳に憶えがあるな…。」

田中くんも、ニっと、笑って。

『…ほんと?だったら、呪いを解く方法は…んむっ…!』


意気揚々と、解答得たりで言葉を紡ぐ私に構わず、

後頭部に手を添えられて、

それを感じる間も無く、引き寄せられて。


続くはずだった私の解法は、

ちょっと柔らかくて、

すごく熱い、

彼の唇で封じ込められて、

出口を失ってしまう。


『…んぁっ……は、あ…ぅ…。』


気付いた頃には何もかもが遅くて。

もっと柔らかくて、

もっともっと熱い彼の舌が、

私の口内を行き交って、

放つはずだったその言葉を、

舐め尽くしてしまうまでも、


かえるさんの呪いは、全く解けてくれなくて。


『…ぁ…んんっ…。』

両手も塞がったままで、為されるがまま。



ひどく長く感じたその口付けが、
ちゅっ、という水音に撥ねて消えれば、

水から出たばかりのかえるさんみたいに、
てら、と少し濡れた唇で、


「…解法は、貴様を愛する者の接吻、だろう…?」


彼が、そう…放胆なまでに、言ってきます…。





って…

せ、…接吻!?


『…っ…!!!』

その言葉にハッと引き戻されれば、
どんどん赤くなるしかなくて…


バッ!と顔を覆いたかったけれど…

まだ、かえるさん…手…の、ままじゃないですか!!


更に加速してパニックな私に、またも構わず、

「…手を、貸してみろ。」

差し出す前に、再度両手を取られては、
やっと呪いが解除されていく訳、なんですが…


も、もう…手を、触られてる…だけ、でも…


どうしたら、いいのか…困、る…。


「…どうした?先刻から…随分と、大人しいな…?」

ニヤっと、余裕有り気な彼の顔。


…解ってる、くせにっ!!

そう、言ってやりたい気持ちとは裏腹に、
なんだか、声が出なくて…

黙ったまま、私の手を解いていく田中くんは見ないで、
黙ったまま、私も手だけ、預けて…。



…そうして。
とりあえず、手が自由になったところで、

『っさ、っさっきの、解法はっ、ま、間違ってますっ…!!』

直接的な表現は避けながら…

私の肩へ戻ってきた福豆と一緒に、
断固、抗議、です!!


「…ああ、知っているが?」

それが、どうした?

と言わんばかりの、しれっと感です…。


絶句。

まさに、絶句のその中で、

「…もちろん、故意に、だが?
貴様の手も…自らでは解けんように、わざと組んだのだ。」

それはまた不遜に言われて、
絶句を通り越して、眩暈に似たものを覚え始めれば、

「…フン、貴様が…容易く俺様に触れる事を許すから、悪いのだ。」

そう…急に、柔らかく、笑って。



ああ、もう…全然、解り、ません…。



だって、そんな、突然、手を取られるなんて…思わないし…。

そもそも、さっきの…だって…


と思い出せば、忽ち顔が熱くなってしまうから、
それを掻き消すように、と精一杯の、抗議を試みれば、

『だ、大体っ!
呪いを解く…前提として、あ、あの方法だと…二人が好き合ってないと、ですね…。』

話す程に混乱してきて…
なんだかすごい事、言ってしまったかも、しれません…!!汗。


「…む?
何だ…貴様は…これだけ永い刻を俺様と共にしながら、まだ俺様に心を奪われていない、というのか…?」

ざわ、っと彼の雰囲気が変わって…
どうやら逆鱗に触れてしまった、という事だけは悟って…
さっきまでの笑顔が、なんだか恋しいです…。


『だ、だって…わ、私の彼氏は…ふ、福豆だもんっ!』

もうやけくそ気味で、そう叫べば、

「…ほぅ…福豆、か…。
…まぁ、目下は…それで良しとしてやろう。


どう貴様が足掻いたところで…遅かれ早かれ、貴様は俺様のものとなるのだからな。」


その刻が、楽しみだな…?
…おなまえ。


と、唇を寄せて、声を落として言われれば、
もう口先まで出ていた言葉が、忽然と、消えていって。


完全に固まった私を一瞥して、フッと笑って、

「…では、行くぞ…おなまえ。」

またわざと名前を呼んで、先に、歩き出して…。





彼との距離が数メートルと離れて、

一人取り残されて。

舞台に置き去られるような錯覚に陥って。


まだ動こうとしない私を、心配しているような福豆に、

彼には聞こえないように…そっと、呟く。


『…どう、しよう…福豆…。


…持ってかれちゃった、かも…しれ、ない…。』



ゲコー、という福豆のお返事が耳に入らないのは、

まるでその呟きを聞いていたようなタイミングで、彼が振り返って、また私を呼ぶからで。


…すでに唇まで奪われていて、

本当に、足掻くまでも…無かったり、するのかも、しれなかったり…?



そんな自分も未来もなんだか不安なのに、
とっても大事な一つを奪われても、
実はその事には、怒っていない…

…その重大事実に、私が気付くまで。
福豆には…ずっと彼氏で居てもらわなきゃ、ね。









*****


全国の蛙大嫌い女子の皆様大丈夫でしたでしょうか本当にごめんなさい全ての非は井澤にございますどうか殴るなり蹴るなりご自由に!!(スライディング土下座)

…えー何をお前はクリスマスにカエルの話書いてんだ、と。
はい、おっしゃる通りでございますマジ消えろって話ですよね申し訳ございません(深々謝)
しかも長いですしね、どうしてこんなに長くなったのか、井澤も大層不思議です(うわぁ)
なんでしょう、井澤…疲れてるのかもしれない(遠い目)

詳しい後書(という名の懺悔)は考察に書かせて頂ければと存じますが、今回の個人的に書きたかった所は、主人公ちゃんも自分を好き(になる)と全力で信じてる田中くん、です。
自信たっぷり、俺様たっぷり、覇王様たっぷり。
…この勘違いっぷりが可愛いって、思ってくださる方がいらっしゃれば…もう…感涙。(いや居ないから)

本当は、こう…もっとギャグく終わるはずだったんですが、別ルート選択してしまったので、実際のかえるの王子様の呪いを解く方法、が書けないままでしたね。
原作では「壁に叩き付ける(一回死んじゃう?)」です。
…酷いお話ですよね…!号泣。
この結末を知っただけで心が折れた井澤は原作を読んでおりませんが(意訳のようなものだけさらっと読ませて頂きました)、やはりなかなかに毒気の含んでいるらしい噂がございますので…もし読まれるご予定の方がいらっしゃいましたら、お気を付けてくださいませ。

もはや後書ですらない追加知識で大変失礼致しました…。
このようなお話にも関わらず、最後までお読みくださいました皆様のお心遣い、深く感謝申し上げます。
本当に有難うございました!
遅ればせながら、メリークリスマス!!

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