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幻想
ただ、貴方に祈る。(BLEACH・ノイトラ)
※お相手はノイトラ様です。

※こちらのサイトに来て下さった方々へのお試し夢、のような感じですので、お名前変換はございません。









*****


この世に神なんて、いねえ。


人間っつーもんは、そんな在りもしねえもんに縋る。
祈るってのは、ほとほと馬鹿な行為だ。
見上げたそこには何も居ねえ、何も無え。
虚しい行為にてめえを捧げる、それだけだ。


居もしねえ何かを、阿呆程に思い願うって事は、
考え、創作し、てめえが思う「それ」を信じ、勝手に支えにしているだけの話だ。

それ自体が、ただの愚行で、愚考な事に変わりはねえ。
てめえで考え産み出した「それ」なんて、どうせてめえの範疇で、そんなもんを神だと思うなんて。



どうかしてやがる。




この世に平等なんてねえ。
産まれ堕ちたその瞬間から、てめえ以外、何も無えんだ。
敵だらけの世界に一人、放り出されるだけだ。
そこに、救いなんて、あるはずがねえ。



そんな不平等と不寛容に溢れた世界を創造したのが「神様」ってヤツなんだとしたら、随分と良い性格じゃねえか。

そんなもんが救ってくれる?赦しをくれる?
ハッ!笑える話だ。

むしろ、そんな可笑しなもんの存在を受け入れちまってる時点で、笑えねえ話、だ…。



___



…俺達の神サマってヤツを語る、藍染サマの命で、仕方なく雑魚(虚)共を片付ける。


文字通り、一掃してやる。

俺に出遭っちまった瞬間から、こいつらの運命なんて決まったようなもんだ。

そこに情けも容赦も与えてやる必要は無え。
逃げ惑う時間も、祈る時間も、そんな隙も与えてやらねえ。


そんなもんは、何にもならねえからだ。
むしろそんな下らねえ事を思う間もなく、一思いに殺してやる事こそが俺の最大の慈悲だ。

一撃で殺してやる。
その強さが俺には在るからこそ、だ。




―ほんの数分。

大方片付いたのを眺めて、鎌を下ろす。
今回も俺が出向くまでも無え程あっさり片付いた。



視界からすっかり血飛沫が消え、辺りに独特の臭いが充満する。

もう、俺と戦える相手は居ねえ…。




帰るか、と踵を返し掛けたその時に、

肉片と血溜まりの中心で、何かが動いたような気がした。


振り向き様、条件反射で鎌を構える。


(なんだ?もう虚はここには居ねえはずだ…。
それとも、俺が気付けねえまでに霊力を隠せるヤツか?)


それなら俺はツイてる。
つまらねえ討伐命令なんかより、ずっと戦いを楽しめる。




少しニヤつく顔に、思わず鎌を握る右手にも力が入る…








…が、俺の期待はいとも容易く打ち破られた。


血溜まりの中心に居たのは、なんてことはねえ、霊力なんて欠片も無え、小せえ人型破面だった。


膝を折って座り込み、薄群青の長い髪が、血の池に沈んで、紅黒く変色していく事も気付いていねえらしい。
顔は上げてるが、視線はただ彷徨って、表情もねえ。
状況が解ってねえのか、微動だにもしねえ。




…ここに破面が出るなんて聞いちゃいねえが、とにかくイラつくヤツだ。
こんな小物、ましてやメスだ。
小さ過ぎて気付きもしねえ訳だ。


(チッ!こいつも殺して、さっさと帰るか…。)


近寄らず、虚閃で消し飛ばしてやる事も出来た。
だがそれじゃ気が収まらねえ。

この手で、殺す感触を味わいたかった。
あの焦点の合ってねえ顔が、絶望に、恐怖に染まるのを見てやりたかった。





わざと霊圧を上げながら、逃げられねえように。
鎖を引きずりながら、ジャラ、と大きく大きく音を立てながら、恐怖心を煽るように。
ゆっくりと、足音も隠さず、近付いてやる。


『…ッ……ハッ……ッフ…ッ。』


すでに息をするだけで精一杯で、目に涙を浮かべ始めたそいつの表情を見下ろしてやる。

そいつの顔がよく見える位置まで数メートルの距離だったが、霊圧の上昇を敏感に感じながらも、ただ耐えるしかねえそいつを眺めるのは、思いの外楽しめた。


「……よォ。」


正面に立ち、霊圧を一気に下げてやる。
月を背後にして、灯りを奪い、視界を塞いでやる。
怯えるその目が、俺だけを映せるようにする為だ。


『…っぅ…か……はッ・…』


途端に楽になった呼吸に咽るそいつは、腹立たしい程に弱かった。

酸素を取り込もうと必死な音が途切れたところで、こちらを向かせる為に声を掛けてやる。


「…どうだ?楽になったかよ?」

『…ッ……。』

まだ呼吸は整っちゃいねえが、そいつは確かに俺を見た。


『…っ…!』


目をこれ以上ねえって位に見開いて、俺を見ている様子が、今知ったと言わんばかりの表情が、なんとも言えねえ。


(もっとこれから、楽にしてやるよ…!!)









……勢い良く、鎌を振り下ろしたはずだった。

終わっているはずだった。


だが俺の前に、まだそいつは変わらず人型を留めていやがった。

ずっと合っていたそいつの目には、恐怖も絶望も、一切感じられなかったから、だ。


(…なんだ、こいつ…?
恐怖も解らねえ程、死も解らねえ程、馬鹿なのか?)



チッ最後の最期までイラつくヤツだ…。

どうせ殺るなら、こいつなら反応を楽しめる、そう思ったのに、これだ。




思わず鎌を持つ力が緩まる、拍子抜けってヤツだ。


その一瞬で、逃げられねえ事もなかったはずだ。
だがそいつは俺を見上げ続けてやがる。

それが俺には不思議で堪らなかった。



真っ直ぐな視線が、何故か気になって仕方がねえ。

月光以外の灯りがねえこの砂漠じゃ、今のこいつに俺の表情は読めねえだろう。

それでもしっかり目が合うんだから、面白えもんだ。




…そうだ、最初からこいつは、迷わず俺の目を見ていやがった。


さっきまでは…俺が近付くまでは、確かに動揺していやがった。
それこそ焦点も合わねえ程に。
それがどうして、すぐに俺を見られるようになるんだ?


ふと、少し疑問になった。
こんな場面で出会えば、なんだって大体は怯えるもんだ。
やっぱりこいつは…感情まで可笑しくなってやがるのか?


そう思案しながら、改めて見下ろしてやる。
依然目は合ったまま、だ。



それは一瞬で、奇妙な時間だった。

たかが数秒だが、この虚圏で、武器も構えず無言で見つめ合うなんて、そうそう無え事だ。



…気でも触れてんのか?
そう疑問も頂点に達したところで、そいつがゆっくりと動いた。

力無く上げられる両手が、しっかりと胸の前で組まれていく。




それは、まるで、祈りだった。



いや、こいつは祈っていやがる。

ただ真っ直ぐに俺を見て、こいつは純粋に祈っていやがる。

命乞いでもねえ、狂気の沙汰でもねえ。
ただ俺に、祈ってやがるんだ。





「ハッ!…ハハ、面白ぇ…!!!」


声を上げて笑う、いやもう笑うしかねえ。
自分を殺そうとしていた相手に、祈りを捧げるなんて。

そんな空虚な行為だとも知らねえで、神サマが居るなんて信じて、その相手が本当は悪魔だったとも知らねえで。

馬鹿もここまできたら最高だ。



急に笑い出した俺に、そいつは少し驚いていやがったが、そんなのも関係ねえ。

問答無用で組んだままの手を引いてやる。

まだ合ったままの視線を更に絡ませるように、顎に手をやって、声を落とす。



「…いいぜ、俺がてめえの神様になってやる。」



バランスを崩しながらも立ち上がったそいつは、俺の言葉を聞いて、また少し驚いた顔をした。





だが一瞬で顔を咲かせて、

『…はい。』

それだけ言って、微笑んだ。







呆れる位に素直に信じて、ただ俺についてくる。
さっきまで死に掛けてた癖に、だ。
そんな事も気付いてねえんだろうな…と思い出して、
また可笑しくなってくる。


俺しか縋るもんが無え存在、ってのは悪くねえもんだ。
それなら神様ってヤツになるのも、案外悪くはねえだろう。




(俺は神サマなんて信じてねえ。
だから俺は、てめえの神様になってやる。
こんな下らねえ世界を創った「ソレ」じゃねえ、てめえの世界を創る神様に、な。)



******


気付けば辺りは血の海だった。
呼吸をするだけで、肺に溜まる生暖かい空気が気持ち悪い。


地獄が存在するのなら、きっとこんな世界なのだろう。


噎せ返る臭い、込み上げる吐き気に見舞われながら、前が見えなくなる。
皮肉にも視界が奪われるだけ、凄惨な光景も見えなくなるようで、どこか安堵する心地もあった。



突然襲う強い霊圧と、薄れていく意識の中で、次第に落ちる影が濃くなっていく。
完全に影に身を包まれた時、掛かる霊圧が弱まって…それは、まるで救われたようだった。


さながら地獄から救ってくださったあの方は…私には、神様のように思えた。


見た事のない巨躯に、月光が注ぎ、まるで後光が差すかのようなその姿は、私が知る神様のそれと、とてもよく似ていて。


こんな状況なのに、不思議と恐怖は無く、
気付けば自然と、祈りを、捧げていた。


大きな手に引かれた時に、確信した。
彼が私の世界の神様に違いないと。

そして彼がそう、言い、赦して下さったように。


(だからこれからも、私は神様に祈る。
たった一人、私の神様に。)












――――



初ノイトラ様過ぎてあんまり俺様じゃないかなぁ、、、とか思ったり致します。。。
読んでくださった方々、有難うございます。
そして心よりお詫び申し上げます…(陳謝)


ちょっとだけ補足ではないのですが…
主人公ちゃんは馬鹿ではありません、はい。
混乱していたので霊圧を上げて・緩めて遊んでるのがノイトラ様だとまでは思考がいっておりません。
むしろノイトラ様が助けてくれた位に思う盲目感。

故に信者る訳ですね(どんな理屈だ)
そもそもノイトラ様を神と崇めてるとかまるで井澤ですね痛いごめんなさい。。。

えー改めまして本当に読んでくださいまして有難うございました!

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あきゅろす。
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