ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
小さな幸せ【ディノヒバ】
ふっと意識が浮上し、静かに目を開いた。
まどろみの中感じる、腕の中の愛しい存在。シャンプーだけではない、甘い香りがやわらかな黒髪から立ち上ってくる。
それだけでなんというか、クる。
まだ眠りの中にいる彼は、静かな寝息を立てている。
その強さからは想像もできない華奢な身体がくたりと預けられていることがうれしくて、思わず頬が緩むのが止められない。
人に触られることが大嫌いな獣がこんなに無防備な姿をさらしてくれるのだ、優越感も庇護欲も、どんどん膨らむ。
……そんなことを本人に言ったら間違いなく怒り狂うだろうが。
寝ている間にずり下がってしまった毛布を裸の肩口まで引き上げながら、戯れに頭を撫でた。起きるかと思ったが、
昨夜散々可愛がったせいか、ぐずる様子もなく昏々と眠り続けている。やりすぎたかなと少し反省するけれど、
体力を根こそぎ奪うような抱き方をしても怒らなくなったのは、安心して眠ることができると思ってくれているからだと思う。
そういう場所になれたことが、純粋にうれしい。
幼い寝顔をまじまじと見、つい顔がほころぶ自分がいる。
変態だ犯罪だと、からかい混じりの部下たちにだけでなく、恭弥本人にまで言われる毎日だが、こればかりは仕方がない。
性別も年齢の差も乗り越えるほど好きになってしまったのだから。性別はともかく、
年齢は犯罪にならない程度まで待てなかったディーノに責任があるだろうが、若げの至りとでも思うしかないだろう。
子供特有の少し高い体温が、触れている肌から伝わる。
それだけでやけに幸せで、抱き込んでいる幼子を起こさないように気をつけながらさらに腕に力をこめて抱きしめる。
愛しい。愛しい。
自分でも驚くほど感情があふれてきて、胸がつまるほどだ。時々涙さえ出そうになる。心に体がついていかないとはよくいうが、
だってこの気持ちをどう表現すればすべて伝えられるかなんてわからない。
きっとこの心のままに抱きしめたら、彼を壊してしまうだろう。それほどまでに、深く、狂おしい想い。
ふいに腕の中で恋人が身じろいだ。起こしてしまったかと様子を伺うが、どうやらまだ眠りの中にいるらしい。
安堵し、自分も再びまどろみに戻ろうかと思ったとき。
「……る、さい……ディ……ノ……」
思わず目を見開いた。
寝息は変わらずで、ということはただの寝言なのだけれど。
(夢にまで見てくれてるなんて……)
しかも名前まで呼ばれた。
これを幸せと言わずして、いったい何といえばいいのだろう。
2010.6.28up
蛇足:もうなんていうか恭弥にメロメロリンなディーノさんが大好きなんです。
言葉にできなくてもどかしくてとりあえず抱きしめとけ!みたいな(笑)
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