ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
雑踏に紛れ【ディノヒバ・ツナ獄ツナ】
あれ、とツナが急に足を止めたので、両手にジェラートを持って彼の元に戻ってきた獄寺は首をかしげた。
「どうかなさいましたか、10代目?」
「あ、ううん。たぶん気のせいだからいいよ……」
でもまさかな、いやでもな、となにやら呟くツナの顔はやけに困惑している。
「……ねぇ、獄寺くん」
口にしようかどうしようか迷っているような。ツナは時々そんな風に口ごもることがあるので、獄寺は根気よく次の言葉を待った。
「……いま、雲雀さんを見たような気がするんだけど」
獄寺は耳を疑った。いや、敬愛するツナの言葉を疑うわけではないが。
「……は? あの雲雀が? ……ここ、遊園地ですよ……?」
「だよねぇ、くるはずないよねぇ……」
人の群れが嫌いな雲雀が、遊園地などという人だらけのところに来るはずがない。それは二人の共通認識だ。が、ツナは見た気がするのだ。
仏頂面の、雲雀を。
「人違いかな?」
そうだと思いたかった。だが次の瞬間。
「「……あ」」
二人の声が重なった。二人の視界の端で、またもや見知った人を見つけたからだ。先日来日した、ツナにとっての兄弟子である、金髪の青年
を。
良くも悪くも、彼は目立つから、人違いではないようだ。大きな組織のトップのはずなのに、お供もつけずに何をやっているのだろう。そう
不信がる二人の視線の先で、何もないところで器用にすっころびながら、彼は大型犬のように走っていく。
ふいにその動きが止まった。
全身全霊で笑う彼がかけよったのは、さっき幻かと思った黒髪の少年。ツナの隣で獄寺が「ゲ」と小さく呟いたから、間違いないだろう。苛
立つような顔をしていた彼は、尻尾をふっているかのような青年を尻目にさっさと歩き出す。青年には見えないだろうが、その顔にふっと気が
緩んだような薄い笑みを浮かべながら。
今度こそ、ツナと獄寺は見合わせた顔を驚愕の色に染めた。
「……獄寺くん、あの二人って……もしかして……」
超直感など使わなくとも、答は歴然で。
「えっと……あー……そういうこと、っすかね……」
「……」
「……」
二人して思わず黙りこんでしまい、次いで同時に吹き出した。
「……うっかり鉢合わせしないようにしないとね」
「ですね」
並盛の鬼といわれるあの人が、あんなやわらかい表情をするのなら。
誰が相手だろうと、そっとしておいてあげようとツナは思ったのだ。
2010.5.31up
蛇足:ツナ獄ツナ? 一応ディノヒバ作品なんです、と言い張ってみます(笑)ツナ獄ツナのおててつないで的青い恋愛も嫌いじゃないです。
ほのぼのしますよね。
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