ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
人違い【ディノヒバ】
ディーノさんが日本にきてるらしいですよ、なんて草食動物に言われるまで、彼が来日しているなんて知らなかった。毎回真っ先に連絡があるわけではないだろうけど、草食動物から情報がもたらされたことは、なんとなく面白くなかった。
正体不明の苛立ちを抱えたまま繁華街に向かう。噂の誰かによく似た金の髪を見つけたので、近づいてみたら振り向いたそいつはまったく違う誰かだった。人工的なその色を持った顔は明らかに日本人で、なんだか無性に腹が立ったので、道端に引きずり込んで咬み殺した。よく見たらその髪の色はぜんぜん似てなくて、そんなものに惑わされた自分に苛立って。挙句、並盛の生徒だということが判明したので、八つ当たりも兼ねてさらに念入りに制裁を加えた。まったくもって、面白くない日だ。
「……」
草壁に片付けをするように連絡して携帯を切った途端、聞きなれた校歌の着メロが流れた。この携帯にかけてくる人物なんてわずかだ。画面を見ると、案の定それは遠い異国からくるおせっかいな誰かの名前。でも国際電話ではなかったから、本当に日本に来ているのだろう。
無視しようかと思ったところで、着信はなかなか途絶えない。イライラして、電話をとった。
「……煩い。咬み殺すよ」
『第一声がソレってひどくねぇ?!』
たぶん台詞ほどひどいとは思っていない能天気な声が返ってきた。
『なあなあ、今日お前どこにいるんだよ? 学校行ったけど、いなかったろ』
応接室も屋上も回ったんだぜ、とぶつくさ言っている。いつも思うが、この人は本当にマフィアのボスかと疑うほどに暇だし、不必要に走り回ってる気がする。
『おい聞いてるか恭弥? どこにいるんだよー?』
じれたようなディーノ。ここにいるといえば駆けつけてくるのだろうか。
「繁華街」
『繁華街? また見回りでもしてたのか。迎えにいってやるから、もう帰ろうぜ』
ほらやっぱり。
でも、僕のイライラの責任はちゃんととってもらわないといけない。
「あなたにね。よく似た人がいたから」
『……?』
「咬み殺してたんだよ」
『は?!』
慌てた拍子に足でもひっかけたのか、跳ね馬の背後から何かががらがら落ちる音だとか、巻き込まれた部下の野太い悲鳴だとかが聞こえてきた。
「ね、早く迎えにこないと咬み殺すよ?」
なんだかおかしくなって、くつくつと笑った。
2010.4.21up
蛇足:愛情表現なんですよ、きっと。ディーノはこういうひねくれたところも含めて雲雀が可愛くて仕方ないんだろうなと妄想、妄想。
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