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ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
花弁が落ちて【ディノヒバ】
 ディーノが並盛を訪れたのは、3月も終わろうとする頃だった。弟分も珍しく平日昼間なのに家にいて、入学式を控えた学校がばたついていることとか色々教えてくれた。生徒が浮き足立って風紀を乱さないようにと、愛しい教え子がいつも以上にはりきっていることも。

(それはりきってるっていうか、憂さ晴らしができるからじゃ)

 たぶんディーノの予感は当たっている。



「ここにいたのか、恭弥」

 珍しく応接室でも屋上でもなく、校庭の片隅にいた恭弥を見つけた。

 おおきく咲き誇る桜の樹の下。太い幹に上半身を預け、目を閉じて座る恭弥はやけに綺麗で、ディーノは思わず息を呑んだ。そこだけ空気が違うように見えるのは、どうしてなんだろう。

「……何」

 立ち尽くしているディーノをいぶかしんだのか、恭弥が眠そうな瞼をうっすらと開け、視線だけをよこした。

「見回りは終わったのか?」

「またあとで行くよ。さっきはりきりすぎたから、小休止」

風紀委員に後片付けをさせているんだ、なんて口角を上げるのはいいが、舌なめずりでもしそうなその表情を見れば、何をどうはりきって何を片付けさせているのか、容易に想像がつく。ツナのみならず皆から恐れられるのは当然のことで、そういう性分はきっとマフィアとしては大歓迎なんだろう。この年齢で末恐ろしい、と思わなくもないが。

 そして、そんな獰猛な瞳を隠そうともしない恭弥にぞくぞくと反応してしまう自分も、いい加減末期なのだ。

ほどほどにな、なんて心にもないたしなめを軽く口にして、ディーノは恭弥の横に腰を下ろした。それを嫌がろうとしないあたり、恭弥の機嫌も悪くはないらしい。



 やわらかな風が頬をくすぐる。ときどき吹く少し強い風は、二人に桃色の花びらの雨を降らせて去っていく。穏やかな陽の下、こんな風にのんびりと二人でいることがうれしくて、少しだけおかしくて、彼は口元に笑みを浮かべた。

「綺麗だよなー」

「・・・・・・まあ、嫌いじゃないけれどね」

 いつぞや恭弥を苦しめたサクラクラ病での嫌な記憶もすっかりなりを潜めたようだ。うっすらと微笑むのは無意識なのだろうけれど、見惚れてしまう。

 綺麗、だ。桜より、恭弥が。



「・・・・・・恭弥、ちょっと動くなよ」

「何」

「花びらがついてる」



 どこに、と眉をひそめた恭弥の桜色の唇に、触れるだけのキスを落とした。

















2010.3.30up



蛇足:初々しいかんじになってしまいましたが(笑)桜と恭弥はものすごく絵になる取り合わせだと思うわけです。




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