ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
記憶ノ欠片タチ【複数ジャンル】
01. 告白(カカイル)
黒髪も銀髪も、その頬に桜色を映して。
「来年もその先も、一緒に桜を見ませんか?」
一瞬目を見開いた銀髪の顔が花のようにほころんだ。
その顔は桜より綺麗。
02. 嘘(銀乱)
「好きや!」
差し出した花束ごしの顔が笑いをこらえていたから。
「……今日は四月一日?」
「……あたりー」
それが嘘だという、嘘をついた。
胸の奥がツキンとなる。
03. 卒業(ヤコ&叶絵)
仰げば尊しをBGMに、隣で親友が涙している。
「永遠の別れじゃあるまいし何泣いてるのよ」
「うう…さらば学食…」
「まてやコルァッ?!」
ご飯≧親友?!
04. 旅(ロイエド)
片田舎の駅の人ごみに、見慣れたコートを見つけて歩み寄る。
思わず顔がほころぶ。
「鋼の――」
しそびれた見送りをするためだけの、小旅行。
キスくらいしたいから。
05. 学ぶ(ロイエド)
バードキスから次第に深く。
舌が絡み、互いの息が弾んでやっと、唇は離れた。
「覚えが早いな、鋼の」
「誰かさんのしつこい教育の賜物だよ」
子供の成長は早い。
06. 電車(雲雀)
世界中を旅して様々な景色を見たけれど、やはりここが一番だと彼は微笑する。
「何ヶ月ぶりだっけ、並守」
車窓からの町並みは、変わらない。
変わらずにいてほしいものがある。
07. ペット(ハボロイ)
いい匂いに意識が少しずつ浮上していく。
大佐、朝メシっすよ、と呼ぶ声に、寝ぼけながら微笑んだ。
「……うむ、いい犬だ……」
「はぁ?」
忠犬万歳。
08. 癖(カカイル&ナル→イル)
時計を気にしながらそわそわ。
「イルカの帰り、今日なのか?」
アスマの問いに上の空で頷く。
「受付でナルトがおんなじことしてたぜ」
師弟は似るものです。
09. おとな(笹ヤコ)
大人はずるいと彼女は思う。
「……そんな子供みたいな顔されたら断れないよ」
「それが大人の作戦だから」
重ねられた唇は煙草の匂いがした。
男はいつまでたっても子供だから。
10. 食事(ディノヒバ)
いつもと同じ食事風景のはずなのに。
脂で汚れた唇が、違う行為をディーノに想像させる。
「なんかエロいな」
「……噛み殺すよ」
フライドチキン食べてるだけ。
11. 本(エド&アル)
本の山から金髪の尻尾をのぞかせる兄を発見。
「兄さん……いくら好きでも布団にしちゃだめだよ?」
アルフォンスは嘆息し、片づけを始めた。
押しつぶされたことに早く気づいて。
12. 夢(日番谷&乱菊)
「うあ、今いい夢見た!」
昼寝から突如跳ね起きた副官に、日番谷はうろんげな視線を向ける。
「隊長の身長が伸び……」
「松本ぉぉっ!!」
希望、願望、それとも予感?
13. 女と女(乱菊&雛森)
服のサイズを店員に指示する乱菊を見て、雛森はこっそり嘆息した。
自分の胸元に視線を落とし、つぶやく。
「……ま、まだ成長過程だもんっ」
やっぱり、負けたくない。
14. 手紙(ディノヒバ)
イタリアからの手紙は、ろくに読みもしていなかったが。
「言い訳しないでさっさと会いにくればいいのに」
廊下を慌しい足音が、近づく。
今日くらいは優しくしてあげる。
15. 信仰(ネウヤコ)
「神も仏もないのかなあ」
救えなかった人を思って空を仰ぐと。
「ならば貴様は我輩だけを信じていればいい」
確かに存在する魔人が、言った。
人外でも、信じられるならそれでいい。
16. 遊び(藍染→日番谷)
強く拘束されながらも、彼の翡翠色の瞳は力を失わない。
「君が堕ちるのが先か、私が飽きるのが先か。これはゲームだよ」
狂った神が、笑う。
戯れという名の真剣勝負。
17. 初体験(ロイ→エド)
「動く玩具で気をそらされながら、一気に突き立てられてさあ……」
「鋼の……なんの話だ」
「初注射」
鼻血を出す大人に、子供は首を傾げた。
考えすぎだから。
18. 仕事(日番谷&乱菊)
枕にされた書類を回収し、白紙の始末書を置く。
「……これも隊長の仕事なのか?」
眠りこける副官を起こす作業を思い、ぼやく少年が一人。
面倒見のいい天才児。
19. 化粧(乱菊)
長く伸ばした睫、薄くほどこした頬紅。
唇は下界で手に入れたグロスで艶めかせ。
「ん、完璧っ」
今日も戦装束をまとって、いざ出陣。
女はいつだって全身で戦うものです。
20. 怒り(八番隊&十番隊)
「おい、京楽が見たことねぇ土下座してたぞ」
「酔って七緒の下着被ったらしいです」
そりゃ伊勢も怒り狂うわ、と十番隊隊長は茶をすすった。
酒は飲んでも呑まれるな。
21. 神秘(ディノヒバ未満)
いったいどうやって手なずけた、と口には出さないが皆思っている。
(跳ね馬恐るべし……)
あの孤高の鬼、雲雀恭弥の頭をなでているなんて。
これでもボスですから。
22. 噂(イルカカ)
車輪眼、元暗部、不審人物。
「間違っちゃいないですけどね」
イルカは微笑んで、眠る銀髪をなでた。
「オレにとってはただの可愛い人ですよ」
人の評価なんてくそくらえ。
23. 彼と彼女(ロイアイ)
「雨の日は無能なんですから書類くらい片付けてください」
彼女の言葉の冷たさは、優しさの裏返しだから。
思わず微笑んで、またにらまれた。
ツンデレのツンが強すぎませんか??
24. 悲しみ(捲天)
こんな時だけ鉄面皮だもんな、と捲簾は眉を顰める。
「泣き方を忘れました」
無表情に言う上官が悲しくて、思わずきつく抱きしめた。
そんなに強くなくていいんだ。
25. 生(悟浄&八戒)
「眼鏡、割れてしまいました」
満身創痍。それでも悟浄は笑う。
「でも、生きてる」
ええ、と呟いた八戒の満足げな声は、満天の星空に溶けた。
生きてればどうにかなる。
26. 死(四カカ前提イルカカ)
情けないけれど、と銀髪は言う。
「今日だけは」
泣かせてくれと言い出す口をふさぐように口付けると、涙が零れ落ちた。
あの人が消えた日。
もういない人間に嫉妬しそうだけど。
27. 芝居(サイアイ)
「いつも“サイ”を演じているオレは誰なんだろうね」
「……演技だとしても、あなたが“サイ”なのは事実です」
彼は、泣きそうに笑った。
自分なんてものはいつもあやふやだ。
28. 体(ディノヒバ)
成長期だった肉体が想像以上に育ったのがうれしくて。
「肉弾戦より破壊力増したな、その色気」
とほめたら、本気で頭割られそうになった。
本当のことなのに!
29. 感謝(錬金術師)
その両手はまるで願いをこめるように。
祈りを捧げるように合わせられた。
命の尊さを誰より知る者たちの、神への感謝にも似ている。
全てのものにありがとうを。
30. イベント(ディノヒバ)
「酔いそう」
チョコレートの香りのローションを塗りたくられ、呆れ顔の雲雀。
ディーノは笑って、チョコレートを口移すようにキスを重ねた。
アナタに酔わせて。
31. やわらかさ(カカイル)
「女性みたいにやわらかい身体ではありませんよ」
あなたは苦笑するけれど。
「あなたが、いいんです」
オレはそう告げ、あなたを抱きしめる。
あなただから、いい。
32. 痛み(ネウヤコ)
ぎりぎりと胸元を抉られていく痛みに、奴隷が涙を零す。
「その豆腐頭に苦痛を刻みこむがいい、ヤコ」
愛より深く、我輩を思い出す因子だと。
ひねくれた愛情表現。
33. 好き(天捲)
珍しい本、下界のおもちゃ、うまい酒、etc,etc…
指折り数えて、彼は笑う。
「でもやっぱり貴方が一番好きですよ」
その笑顔は反則だ。
そのためなら命かけられそう。
34. 今昔(いまむかし)(ネウヤコ)
「少しは成長したでしょ?」
久しぶりに会う奴隷は確かに変化を遂げていた。
「相変わらずえぐれた胸以外はな」
「一応育ったわぁ!!」
丘くらいはある。
35. 渇き(恋修)
足りない、と恋次は熱っぽく言う。
「あんたが足りねえ」
名前を呼ぶ声が体に滲み渡る。
自分も飢え渇いていたことに気づき、深く唇を重ねた。
早く貪らせて。
36. 浪漫(天蓬&捲簾)
散りゆく花は美しい、と上機嫌な捲簾。
桜の下には死体があると嘯く天蓬。
自由と退廃をその華に見ながら、二人は今日も酒を酌み交わすのだ。
桜の持つ魅力は、魔力だ。
37. 季節(日番谷&乱菊)
コタツ。みかん。半纏。
少しずつ増えていく冬の風物詩は、オレも好きだ……が。
「だからってそれを執務室に用意してんじゃねぇ、松本ぉ!」
愛ゆえ、愛ゆえ。
38. 別れ(カカイル)
「早く帰ってきてくださいね。先生に何かあったら、オレ……っ」
「アカデミー低学年の遠足に行くだけですよ」
涙ぐむカカシに、笑った。
心配性にもほどがある。
39. 欲(日乱)
(身長、力、年齢)
(背、低くならないかな……)
「「こいつ/この人 に吊り合う自分でいたい」」
隣に並ぶ人を思い、二人は同時に嘆息した。
いつだって思うのはアナタのことだけ。
40. 贈り物(天蓬&捲簾)
満面の笑みの天蓬に対し、捲簾は複雑な顔だ。
フリルのメイド服を彼がどうするつもりなのか。
まだそれを推測できていないからだった。
着るのか?着せるのか?
2010.2.10up
蛇足:とにかくお題をこなすぞ、とがんばった作品です。65文字は少ない! どうにも納得いかないものも何本か……修行不足です、スミマセン(泣)
ちまちまと思い出しては書き、書いては放置し、を繰り返していたので、これだけのボリュームにもかかわらず、書き上げるのに半年もかかっていました。ありえない。
お題配布先:文章修行家さんに40の短文描写お題
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