誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝8
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その男が、どの様な手だてを使って大陸を脱し…どの様な手蔓で海を渡ったのかは、残念ながらはっきりとはわからない

ただ、はっきりとわかっている事は、空襲であたり一面焼け野原となっていた、その町の一画に小さな店を開いた事だった

その男がその土地を、どの様にして手に入れたのかは、誰にもわからなかった

けれども、無差別に行われた空襲で、役場の台帳も燃え落ち、持ち主の消息すらわからない土地等が、沢山あった事は事実である

だから多分、男も何かしらの方法で手に入れたのだろう

けれども、男が後ろ指を指される事は無かった

男は、飢えた人達の為に、美味しく滋養に富んだ料理を、安価で食べさせていたからだった

その店は、男が養父からみっちりと仕込まれた、中華料理を出す店だったのだが、その当時は日本の国中が食糧難で飢えており、その店で出せる料理も限られていた

男は、自由に話せる言葉を武器に、何処からか沢山の食材を手に入れて来た

それは一種の魔法の様でもあった…国中食糧難であえいでいる中にあっては…





『親爺さん、これ…美味いね、何か生きる力が湧いて来る様だよ』

これで今日何回目だろうか、そう言われたのは…

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あきゅろす。
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