誰かに聞いた怖い話
・・・保健室6
.
『?』



…おかしいな…私が此の部屋に入って来た時には、ベットの仕切りのカーテンは開いていた筈なんだけど…



それは未だ…私が過去の詳しい事情を知る前から、密かに始まっていたのです





あれは私が、此の小学校に赴任した当日の事でした

教職員室での挨拶を済ませた私が、保健室へと向おうとしていた時です



『先生、一寸良いですかな?』

私に向けられたらしいその声に、後ろを振り向いた私の目の前には、歳のわりにはめっきりと数を減らした髪を、左から右へと流して地肌を目立たぬ様に必死に苦労しているらしい、教頭先生の淋しい頭が映っていたのでした

もっともそれは、私が女性には珍しく身長が高いせいでもありましたが、此の先生が特に小柄だった為に、それは無理からぬ事だったのです

そんな私の視線を感じたのでしょうか、教頭先生は無意識の内に自分の頭に手をやり髪型を直す仕草をしましたが、それを見ていた私の視線に気付くと、慌てて私の前を足早に歩き出したのです

ですから、私は最初保健室に行くのかと思っていました

けれども、教頭先生は僅かな歩数を歩いただけで、教職員室の隣りの校長室の前で足を止めたのです

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