誰かに聞いた怖い話
・・・目覚め2
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川幅は数メートル程でしょうか
サラサラと流れるその川は、流れも激しくは無く深さもさほど有りそうも無い、小さな小さな流れでした
その場に立って、光の当たる暖かそうな場所を見つめていた私は、一度は引っ込めた足を再び伸ばして、その小さな流れを渡ろうとしたのです
けれども、出来ませんでした
此所からたった十数歩足を進めるだけで、私は今迄手探りで歩いて来た…此の暗い寂しい場所から、あの穏やかな光に充ち満ちた場所へと行けると言うのに、私は足を踏み出す事が出来ませんでした
私は迷っていたのです
此の小川を渡ってしまったら、もう二度と元には戻れない
そんな気がして、私は中々最初の一歩を踏み出す決心がつきませんでした
そんな時です
私が漸くその小川を渡ろうと、自分の意思で決めた時…私は後ろから羽交締めにされ、一歩も動く事が出来ませんでした
でも、私を包み込む様なその感触は、嫌なモノでは無かったのです
むしろ、何故だかホッとする様な安心出来る感覚に、私は全身の力を抜き…身体を委ねたのでした
そして、そんな私の横を通り過ぎ小川を渡る人達の中に、私は彼等の姿を見付けるのです
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