誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて5
.
『開かないねぇ…此所も鍵が掛かってるよ』

鍵で閉ざされたドアノブを音を立てながら回していた彼女は、左隣りの部屋のドアノブを同じ様に鳴らしていた彼に向かって、そう声を掛けたのでした

その声は囁くと言う程小さくも無く、かと言って怒鳴ると言う程大きくも無い、至極普通の呼び掛けだったのですが…



その時でした



『あっ!開いたぞ!』

そのフロアーの真直ぐな廊下に響き渡った声は、左の友人の方へ向き直っていた彼女の背後から…彼女の立つ部屋の右隣りから聞こえて来たのです



『えっ?』

そしてその声を追い掛ける様に、彼女の発した短い声が廊下を伝わり、両脇の壁に反響して戻って来たのでした





私達はファミレスで簡単な段取りを決めると、女の子達は飲み物と軽いお菓子を買いに走り、男の子達は用心の為に野球のバットと手袋か軍手を用意する為に、一度家へと帰ったのでした

その理由と言うのが…この様な廃屋や廃墟には、無断で住み着く者達や野良犬が居たり、私達みたいな物見遊山で訪れる者を恐喝する人すら居ると言われていたからです
もっとも此所は、友人の兄達が逃げ帰ったのが噂になり、不気味な程に静まり返っていました

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あきゅろす。
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