誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて3
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『まぁ…数億と言うのは私も眉唾だとは思うけど、三十階建てのビルだからね…もっとも各階の客室は一列のみの造りで、入り口の所に一本長い廊下が客室と平行に延びているだけの、そうだね…丁度ワンルームマンションみたいな造りなんだけどね』



『ふぅーん、それじゃあ高さの割に細長い、此みたいな感じなのかな?』

病院長の息子は胸元のポケットから煙草の箱を摘み出すと、私に向かって山なりに放り投げたのです

そして私は放物線を描いて落ちる小さな箱を、焚き火の明かりに照らされた顔の前で両手を使って受け止めたのでした



『そうそう、此のメンソールのロングタイプの様に、縦長で横幅がそこそこあるのに奥行きが無い、筍の様に空に向かってニョキニョキと伸びている建物なんだ』

私は病院長の息子に向かって首を小さく横に振りながら、中の煙草を取り出そうとはせずに、右手の親指と人差し指で摘んだその箱を、彼に向かって放り投げ返したのです



『大体その建物の形は分かったけどさ、一体そこで何が起きたんだ』

さも焦れったい様子で話の先を急かしたのは、左手にマグを持ち右手の人差し指と中指に火のついた煙草を挟み込んだ、サーファーの彼でした

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