誰かに聞いた怖い話
67話…廃墟にて
.
一度はその勢いを鎮めつつあった焚き火の炎が、折から強まり吹き付ける風によって渦を巻き燃え盛り、私の方へと無数の火花を舞い上げたのでした

それはまるで私の流した涙の理由を、周りの友人達から隠すかの様に、目に染みる煙りと共に吹き寄せたのです



そして一仕切り目から溢れた涙と、焚き火から顔を背け苦しい咳き込みが収まった後、私は頬を伝う涙の跡を手の甲で拭いながら話し始めたのでした



『それじゃあ、次は私の番だね』

私はやり切れなく重く沈む気持ちを友人達には見せまいと、殊更明るく振る舞っていたのです



『此から話す此の話は、あんまり人には話したく無いんだ』



『どうしてだ?』

私と同じく赤く腫れぼったい瞼をしたサーファーの彼が、私の躊躇する気持ちに疑問を抱いたのか、短く尋ねて来たのです

そして彼と同じく六つの潤んだ瞳も、私目掛けてその不審気な目差しを向けたのでした



『実を言うと…中学時代に学校の友達と一緒に、あちこちの廃墟や廃屋巡りをした事があるんだ…えっ…?うん、そう!えっと…そうだね男女合わせて八人位だったんじゃないのかな?』

私は友人達の質問に答えながら、話し続けたのでした

[前頁へ][次頁へ]

26/96ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!