誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉15
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『そうかも知れないね…』
『まぁ…どちらにしても、怖い話だよね』
病院長の息子は呟きました
『もし…その時既に棺桶の中の人が死んで居たのなら…それは死人がたてた物音だろうし…その時まだ生きて居たのなら…それは又、それで怖い話だし…』
そして私も、彼につられる様に呟いていたのです
『でもね…今はもっと怖いんだよ』
病院長の息子は続けました
『今の火葬場の最新鋭の設備にも、それが付けられているのか…僕は良く知らないけど…昔の設備には中の燃焼状況を確認する為に、小さな覗き窓が造られていたんだって…あぁ勿論全国の全ての設備に、その覗き窓が造られていたのかも分からないけど…』
彼はそこで言葉を区切ると、マグカップの中味を口の中に一口流し込み、それ迄の話を続けました
『或る火葬場の職員は、決してその覗き窓を開けて中を見ないんだと…それが職場の規則であっても、決して従わないと言うんだ』
『それは…そこの火葬場に以前勤めていた職員が、或る場面を目撃してしまったからなんだ』
『或る場面って?』
『棺桶がな…』
『棺桶が?』
『火の回り掛けた棺桶が、がたがたと動くのを…』
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