誰かに聞いた怖い話
・・・身近な恐怖(弐)2

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『湯船に入ったばかりの時は、自分の立てた波紋と云うのか…お湯の表面が荒れていて、そいつには少しも気付かなかった』

『子供の俺には、少し熱めのお湯だったから、なるべく波を立てない様に静かにお湯につかっていたんだ…だから……だから、お湯の表面はまるで鏡の様に天井を映し出していたんだ』



『そこに…居たんだ』

『…お湯の表面を見ると、そいつが天井から俺の事をジーッと見ていた…』

『驚いた俺が、天井をパッと見上げると、そこには…何も無い…只の板の天井だった…』

『だから見間違いかと思ったんだ』



『でも…違った、又、お湯の表面が静まり鏡の様になると、やっぱりそいつは…その女はそこに居た…』

『俺は…今度はゆっくりと見上げて見た…そこにはやっぱり何も居なかった』

『恐怖に駆られた俺は湯船から飛び出して、まだ話し合いをしていた母親の所に行って、自分の見た事をありのままに言ったんだ』



『…両親は信じてくれなかった』

『でも大叔父の一人が、俺と一緒に風呂場迄付いて来てくれたんだ』

『何も映ら無かった…』

『大叔父は子供の俺を叱らずに慰めてくれたが、それから俺は風呂にゆっくり入れないんだ…』

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