誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉10
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そこにはまだ朽ちると迄は行かぬものの、木の香漂う真新しい棺桶とは見較べ様も無い、土と泥と先日来降ったり止んだりの雨水が染み込んだ染みだらけの棺桶の一部が姿を顕し、男達はスコップで崩さぬ様にと気を付けながら周りを掘り進めたのです



そして警察官と例の子供と数人の檀家の世話人とを含む見学者と、墓を掘り返す男達の目の前に、徐々に全体の姿を顕し切りました



『それじゃあ、気を付けて上に上げてくれ…まだ腐っちゃいないだろうが…念の為にゆっくりとだぞ!そう…ゆっくりと…』

立ち会いの住職の指示の下、男達は棺桶の下に二本のロープを回し、ゆっくりと…ゆっくりと…棺桶を穴の外に引き揚げたのでした



『開けてくれ』

そしてその場に居る者達の目の前で、棺桶に打ち付けられた釘に釘抜きが充てられ、ギィギィと軋む小さな音が山裾の斜面に広がってゆきました



『あっ!坊主、もう良いから、お寺で待ってなさい』

その言葉は棺桶を目の当たりにして青褪める例の子供に対して、立ち会いの警察官が掛けた言葉でしたが、驚いた様に振り向き直ぐに言葉の意味を悟り、青くなり赤くなりした顔の住職と、何も気付かぬ表情の警察官がそこに居りました

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