誰かに聞いた怖い話
・・・屋上から5
.
『…!?』

確かに私は聞いたのです

キャンプ場に吹き荒ぶ風の音の中に、引きつる様な笑い声と共に囁く誰かの声を…

一緒に行こうと囁く声を…



『僕はその出来事を体験した日からさほど日時の経たない内に、父親の仕事の都合で一家揃って引っ越しをしたんだよ…僕の遭遇した幽霊は、多分その地に縛られた自縛霊だったと思う…だから、その地を去った僕には…別段何にも起きなかったと思うんだ』

『でも、あの地に再び足を踏み入れたら…あの子の霊は再び僕の前に姿を顕すのかな?』

『僕の事を…あの世に引き摺り込む為に…』

『…なぁーんてね』

彼は不意に呟くと、乾いた笑い声を立てたのです

そして彼の笑い声に重なる様に、先程の誰かの笑い声が辺りに拡がっていった…そう感じたのは、私の思い違いだったのでしょうか?



私達それぞれの思惑や悩みを余所に、相変わらず湖上を吹き荒ぶ風が、まるで子供の泣き声の様にキャンプ場を走り抜ける中…私は次に何の話をしたら良いのか、その事にばかり意識を集中していて…周りの友人達の表情の僅かな変化に迄、気を使う事はありませんでした



『まぁ、僕が小学校の時に体験した話は、こんな所だよ…』

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あきゅろす。
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