誰かに聞いた怖い話
・・・待ちぼうけ2
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受話器を握り締める彼の右手の指には、一枚の小さな紙切れが挟み込まれていました
彼は受話器から流れる呼び出し音を左耳で聞きながら、右手に持ってる紙に印刷された若い女性の姿を見つめていたのです
そして何度目かの呼び出し音の後、受話器の向こう側から男性の声が聞えて来たのでした
『遅いなぁ…さっきの電話だと、直ぐに女の子を向かわせるって…そう言ってたんだけどな』
彼は冷蔵庫から持ち出したビールを片手に、ビデオを何とは無しに見ながら時計を気にしておりました
ホテルの窓からは余り見渡しの良くない景色と、通り過ぎるサイレンの音だけが微かに聞えて来たのを彼が気付いていたのかどうか…それを知るのは、彼の他には居なかったのです
そして彼がシャワーを浴びて、濡れる髪をタオルで拭き取っている頃になっても、彼の待ち侘びる人は現れませんでした
そして彼は再び受話器を取ったのです
けれども、そこから聞こえて来るモノは、話し中を示す電子音ばかりでした
『話し中かよ…一体何をしてるんだよ』
彼は通じぬ電話の向こう側に毒づくと、受話器を電話に戻して立ち上がり掛けたのです
冷蔵庫に向かう為に…
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