誰かに聞いた怖い話
・・・角膜移植4
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彼女がその夢を見始めたのは、病院から無事退院して自分の家に戻って直ぐの頃だった



そいつが…真っ黒なシルエット姿の小柄な男が、彼女の夢枕に初めて立った時…そしてそいつの振り上げた左手に、何か鈍く光るモノが握られている事に気付いた時…彼女の口からは断末魔を思わせる悲鳴が迸り、彼女は自分自身の立てたその悲鳴によって、ハッと夢から醒めたのでした



ベットに横たわる彼女は、自分の胸を激しく上下させる鼓動を鎮める事も忘れ、自分の周りを…自分の部屋の中の様子を、身動ぎ一つせずに必死に窺っていたのです



けれども、そこにはベットに横たわる自分の姿しか、彼女一人の姿しか存在しなかったのでした



彼女を追い詰め、彼女に迫り、彼女に向けて振り翳した左手を振り下ろした小柄な黒いシルエットは、彼女の部屋の中の何処にも見付ける事は出来ませんでした



彼女は夢を見ていたのです



それは自分が、何者かに襲われる夢でした



その夢の中で彼女は、次第次第に追い詰められ…何処の誰とも知れぬ小柄な黒いシルエットの左手に握られたモノが、彼女の白い肌に深々と突き立てられ様とした時に、彼女は自分自身の悲鳴で目覚めたのです

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あきゅろす。
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