誰かに聞いた怖い話
・・・角膜移植3
.
不慮の事故の為、角膜に傷がつき…その視力の殆どを失った彼女にとって、今回の移植の話は正に願っても無い事だったのです



血液型の違いとか、年齢の差とか…色々な条件や制限があるらしく、たまたまそのいずれの条件をも通過したのが彼女だったのでした



彼女は朝から、そわそわしていたのです



そして手術は始まったのでした





『はい、それじゃあ…ゆっくりと眼を開いて下さい』

その日彼女は、長らく不自由した眼に、光を取り戻したのを感じていました

白いブラインドとカーテンを引かれ薄暗く調節された部屋の中で、彼女は自分の眼がぼんやりとした光を吸収し、やがてぼやけた映像を結んでいた彼女の視力が、徐々にしっかりとした輪郭を結び始めると、彼女の顔にもみるみる内に喜びの表情が広がるのを、彼女は自分でも感じていました



けれども、その場に立ち会った医師と看護師の内の一人が、幾分奇妙な表情をその顔に浮かべていた事には、彼女も彼女の家族も全然気付いてはいなかったのです



その二人は知っていたのです



いいえ、此の場に居る者の内…その二人だけが知っていたのです



彼女にその角膜を与えたドナーの事を…

[前頁へ][次頁へ]

38/95ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!