誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜22
.
もっとも、そいつは俺が一度前を向き、もう一度首を巡らした時には、既にそこには居なかったのです



…俺は、まだ幻覚を見ているのか…



俺はそれすら、幻覚にしようとしたのです





『此所にある棒を、持って帰れば良いのかな?』

俺はそう言いつつ、一部を真っ赤に塗りつぶされた棒に、右手を伸ばしました



此所に来る迄に、何度脅された事でしょうか

俺達生徒は此所に到る迄の道すがら、先生の扮する幽霊に翻弄され続けていました



それは一目で偽者だと分かってはいましたが、こんな寂しい場所がそうさせるのか…先程先生の話した話が、頭の中にまだこびり付いているからなのか…それは俺にも分かりませんでしたが、何故か背筋を寒くさせていたのです



『…』

俺の問い掛けにも、彼女は黙ったままでした

彼女は此所に来る途中から、何故か更に口数も減り…俺のTシャツを後ろからしっかりと握り締めているだけでした



その時彼女は、もしかすると目を瞑っていたのかも知れません



ですが…彼女をそうさせたのが何なのか、勿論その時の俺は知りませんでした



俺がその棒に伸ばした手を、何者かの手に握られる迄は…

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