誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜20
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二本の柱の真ん中を通り抜け、俺達は暗い口を開ける洞窟へと歩み寄ったのでした

此の時私は先程先生から聞いたばかりの、此の洞窟の由来を思い出していたのです



此の洞窟にも、他にもありがちな悲しい話が伝わっていたのでした



それは今迄刀を腰に差し大手を振って表を闊歩していた侍達が、漸く新しい生活習慣にも慣れ、その散切り頭もすっかり板に付いた頃の事です

とは言え、先の時代とは何ら変わらず貧富の差は激しく…庄屋の跡取り息子と小作の娘の結婚など、中々認められる事ではありませんでした



此の地域の村にも、そんな話があったそうです



好いて好かれた生さぬ仲の二人でも、親の反対にあっては一緒になる事など出来るものではなく…そんな二人が選ぶ道は、自ずと決まっていたのです



二人は家を捨て、家族を捨て故郷迄をも捨て、一緒になろうとしたのでした

けれども…子供の頃から何の不自由も無い暮らしを続けて来た男にとって、苦しく貧しい生活をいつ迄も続けて行く事など到底出来ない事だったのです

やがて男は娘を捨てて、村に逃げ帰りました



そして一人残された娘が鎌で自分の首をかき切ったのが、此の洞窟だったのです

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