誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜19
.
『?』
『さっき砂浜に…いや、何でもない…急ごうぜ』
俺は彼女に掛けた言葉を途中で切り上げ、暗い夜道を歩き続けたのです
既に蒼褪めた顔をしている彼女の恐怖心を、更に煽る事など俺には出来ませんでした
俺はさっき見たのです
一度は友達と見誤った生徒の姿を…
そして確認しようとした俺の視線から、そいつはいつの間にか消え失せていたのです
『…』
俺は彼女が側から離れない様に注意をしながら、辺りの気配に神経を尖らせていました
そしてそんな俺達の様子をそっと窺いつつ、何者かがずっと付いて来ている…俺はそんな気配を、さっきから肌身に感じていたのです
その嫌な気配は、俺達が砂浜を出発してからと言うもの、俺達の周りをずっと離れませんでした
それがあの不思議な生徒のモノなのか…別の何かなのかは、此の時の俺は少しも知りませんでした
此の時俺は、ただ昨夜の事だけを考えていたのです
昨日の事は俺の見た夢で、本当に起こった出来事では無いんだと、俺は自分自身に言い聞かせ様としていたのです
そんな無口な俺達の前に…
俺達の持つ懐中電灯の明かりの前に、二本の太い柱が姿を現わしたのでした
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