誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜9
.
パチンと言う薪のはぜる音が、私達の間を擦り抜けて…後ろに広がる暗闇へと消えて行きました

上空を吹き荒れる強風にも吹き消されぬ程、益々厚みを増した黒雲に覆われた夜空には、ひと欠片の星屑の明かりすら見付ける事は出来ませんでした

そして辺りに甲高い風切り音が響く中、その場に居並ぶ私達は誰もが語らず、ただ時だけが過ぎていったのです





『…と言う事はだよ…君の友達は臨海学校には行かなかった…そう言う事かい?』

不思議そうな顔をしてぽつりと呟いたのは、旅行好きな彼でした



『…』

そして残る私達は、言葉も無く待ちました

私達には、そうする事しか出来なかったのです



『そうだよ、彼奴は海には来なかったんだ…いや、来られなかったんだよ』



『じゃあ、やっぱりそいつは…』

旅行好きな彼は、更に呟いたのです

けれども、サーファーの彼には聞こえなかったのか、それとも…聞こえないふりをしたのか…彼は目を瞑ったままでした



『あの時彼奴は、臨海学校には参加していなかった…だから…だからあの日、俺が海で出合ったのは…』



『…』

そして彼は、再び沈黙を続けたのです

そして私達も待ちました

[前頁へ][次頁へ]

21/95ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!